前回の宣言解除からわずか3週間を空け、東京では緊急事態宣言が発令された。

酒類を提供する飲食店に対し再び休業を要請。度重なる変異ウイルスの流行に加え、ワクチンの供給をめぐり混乱が生じるなど、難しい政権運営が続く菅政権。新型コロナの先行きが見通せない中、今政治に求められることは何か。

BSフジLIVE「プライムニュース」では橋下徹氏と日本大学の先崎彰容教授をゲストに迎え、日本政府の危機管理の評価について、来る総選挙を視野に見据えながら徹底討論した。

「安心安全」を目標にするのは最悪の危機管理

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新美有加キャスター:
東京都に4度目の緊急事態宣言が発令されましたが、今の日本社会の空気感について。

橋下徹 元大阪府知事 元大阪市長:
何のための緊急事態宣言なのか、皆よくわからない状態では。危機下において重要なリーダーの役割が目標設定。そこから目標に向かう手段が規定されるが、目標も手段もわからない。この4度目の宣言は、重症者・死者に着目した宣言であるべき。社会的なリスクとしてどこまで死者数と重症者数を受け入れるのか。しかし、政府が目標を言っていない。

反町理キャスター:
目標とは、数字の設定という意味? 

橋下徹 元大阪府知事 元大阪市長:
数字でいい。ただイギリスやアメリカを見ても、ワクチンをどれだけ普及させても感染者も死者もゼロにはならない。感染症の専門家に任せれば「感染者ゼロまで頑張ろう」となる。だから、どこまでのリスクを許容するのか政治家が決めなきゃいけない。「安心安全」を目標にするのは最悪の危機管理。

橋下徹 元大阪府知事 元大阪市長(左)、先崎彰容 日本大学危機管理学部 教授(右)

先崎彰容 日本大学危機管理学部 教授:
安倍政権時の最初期、緊急事態宣言がまだ出せない中で小学校を休校にした。一般の家庭にとって具体的にわかるインパクトがあった。現在のお酒の規制は、同様の心理的効果になっていない。菅政権が政治による正しい権力行使を上手にできておらず、4度目の緊急事態宣言がこれだけしらけてしまっている。

反町理キャスター:
やはり政治が重症者数や死者数を目標として言うべき?

先崎彰容 日本大学危機管理学部 教授:
今、我々が毎日見させられているのは、何人感染したか。これは危ない。毎日数字が出て、この数字を下げろ下げろとマスコミが言う。精神的に参るような状況を社会が作っている「感染者数パワハラ」。自殺者も増える。そこで政治が「大事なポイントは死者数がそれほど増えないこと、あるいは病院の重症者数を少なくすることだ」と引っ張らなければ。だが、その力感がない。

橋下徹 元大阪府知事 元大阪市長:
戦後日本の復興過程では豊かになることが大目標だった。しかし、今の政治は我慢を強いることがメイン。これまで国民は何となくリスクを許容してきた。例えば、交通事故死者をゼロにするために自動車を全部禁止にしろなどとは、誰も言わない。だが、このコロナの問題では、政治が「ここまでのリスクは許容しましょう」と言わなければいけない。ゼロは無理。

狂信的にゼロリスクを求めては国がもたない。「1匹」でなく「99匹」を救うのが政治

橋下徹 元大阪府知事 元大阪市長(左)、先崎彰容 日本大学危機管理学部 教授(右)

反町理キャスター:
野党との向き合いがある。共産・立憲は「一人の命でも大事だ、大切にしないのか」と必ず言う。

橋下徹 元大阪府知事 元大阪市長:
負けてはいけない。それはそうだが、ゼロリスクを求めていく社会なんて、国としてもたない。それは無責任な野党に任せておき、責任ある政権与党としては、例えば「200名までの重症者数はリスクとして許容する」と目標を設定する。そこを超えそうになって初めて、目標のための手段として飲食店を止めにいくなどの話になる。

先崎彰容 日本大学危機管理学部 教授:
東京都議選のときも野党の人たちが「死者数ゼロ」を絶叫、それにつなげてオリンピック中止を絶叫していた。政治の前に日本社会の空間として、このように狂信的に何かを絶対的に美しく、きれいに、浄化しなきゃいけないというのが異常だと気づかなければいけない。

反町理キャスター:
なるほど。

先崎彰容 日本大学危機管理学部 教授

先崎彰容 日本大学危機管理学部 教授:
福田恆存という保守主義者が、昔「1匹と99匹」の話をしている。溺れている1匹の羊と99匹の羊、どちらかしか救えないときに99匹を救うのが政治であると。これは政治のイロハ。そして、1匹について書くのが文学だと。国政の場において1匹について騒ぐ情緒的な状態が、今の日本社会を非常に停滞させている。

橋下徹 元大阪府知事 元大阪市長:
政治の仕組みで言えば1匹を救うのは司法。三権分立のもと、あくまで少数の犠牲のもとに多数の利益を実現していくのが政治と我々は認識しなきゃいけない。少数の利益を守るべきなのはその通り。それをするのは政治じゃなくて司法。

先崎彰容 日本大学危機管理学部 教授:
1匹に、弱者に対して政治家がコミットすることも大事。

反町理キャスター:
でも、1匹にコミットする政党はずっと野党ですよね。

先崎彰容 日本大学危機管理学部 教授:
その通り。そこに野党の役割がある。

橋下徹 元大阪府知事 元大阪市長:
今回、最も問題だったのは、去年の緊急事態宣言から今に至るまで政府があまりにも法的根拠のない権力行使をやりすぎ、国民もそれを受け入れ過ぎたこと。自民党は今まで目標も設定せず、曖昧な空気感で国家運営をしてきた。勘に頼った国家運営。法律の根拠がないままの権力行使がなされると、1匹を救おうとしたときに司法で救われない。裁判所が救えるのは、法律に基づいた権力行使からの不利益を被ったときだけ。

正解のない問題を前に必要なのは「手続的正義」と政治による最後の決断

先崎彰容 日本大学危機管理学部 教授

先崎彰容 日本大学危機管理学部 教授:
正解のない問いにどう答えるか。橋下さんの横でなんだか点数稼ぎみたいで嫌なんですけど(笑)、橋下さんの最近出された『決断力』という本を読んで。

反町理キャスター:
大ベストセラーだ。

先崎彰容 日本大学危機管理学部 教授:
ここで「実体的正義」と「手続的正義」という言葉が使われていて、橋下さんは手続的正義のほうを強調されている。
前者の実体的正義は、絶対に自分が正しいと思ったことを金科玉条にして、反対する者は全部切っていくという形で、納得が得られず社会的な不公平感を生んでしまうようなやり方。何が正解かわからない問題に対しては、とりあえずやり方だけは正解だというものを一つずつ越えていく手続的正義をとり、最後のところで決断するのが政治家だと。

橋下徹 元大阪府知事 元大阪市長

橋下徹 元大阪府知事 元大阪市長:
一歩一歩プロセスを踏んで積み重ねていけば、皆おおかた納得してくれる。結論がどうであれ。

先崎彰容 日本大学危機管理学部 教授:
その納得感が、おそらく社会的不公平感を軽減していくひとつの方法。加えて本に書かれていなかった点だが、その手続的正義のプロセスの最後に来る決断をするときに、過去の歴史を学んでいく必要性がある。

橋下徹 元大阪府知事 元大阪市長:
決断の前の段階で目標設定をするときに、歴史の縦の軸の比較、世界各国との横の比較をしながら目標設定していく。そこを勘でやってはダメなのだが、菅首相が国家のトップとして決断するときにそこが見えない。いきなり決定してしまう。感染症の専門家、経済の専門家、オリンピック絶対中止派、様々な立場の人を入れた中でオープンな議論をしながら政治家が決めていくというプロセスがなかった。

来る総選挙 維新と国民民主の“生きる道”とは

新美有加キャスター:
菅政権下で行われた選挙の結果について。2021年4月の衆参補欠再選挙では、3選挙区ともに与党が当選せず。また、7月4日の東京都議会議員選挙も自民・公明合わせて過半数という目標を掲げていたが届かず。

橋下徹 元大阪府知事 元大阪市長:
自民の敗北だとメディアは言うが、国政選挙になったときに都民ファーストの会の票が自公に流れるか、共産・立憲に流れるのかの勝負。そして、アンチ自民の票は都議選の時点ですでに立憲の方に流れている。残りの都民ファーストの票の親和性が高いのは、今は自民党と見ます。しかし、ここにもう1つの野党が開拓すべき道がある。

反町理キャスター:
つまりその票は維新が取りたいと。

反町理キャスター(左)、橋下徹 元大阪府知事 元大阪市長(右)

橋下徹 元大阪府知事 元大阪市長:
維新と国民民主のグループがそこに生きる道を探さないと。繰り返しになるが、自民・公明は雰囲気で法律の根拠もなく権力行使をしてきた。立憲民主は、立憲主義の意味が違うと僕は思うが、権力の手足を縛るのが立憲主義だと言っている。そうではなく、適切な権力行使をやっていくところに維新・国民が目指すべき余地がある。

反町理キャスター:
秋までに行われる総選挙。権力の行使となると、特措法の改正を具体的に提示すべきかどうかという話になる。自民党では、必要性を認めながらも総選挙の前に出すことにためらう声が非常に強いですよ。

橋下徹 元大阪府知事 元大阪市長:
いろんな人の不利益になる場合もある権力行使は、適切であっても自民党には難しい。長年の歴史の中でいろんな業界団体とつながりがある。例えば、医療の中に手を突っ込むような法律は作れない。ここに維新・国民民主の道があると、一個人の意見としては思う。

(BSフジLIVE「プライムニュース」7月12日放送)