AIが不正の疑いのある音を検知

現在、多くの大学では新型コロナウイルスの感染予防のため、授業がオンラインで行われていることだろう。そして、試験もオンラインでの実施となっているところもあるのではないだろうか?

このオンラインでの試験では、人による監督ができず、カンニングなど不正の防止が課題となっていた。

カメラによる監視という方法もあるのだが、死角が多く、十分な監視ができないという問題があり、また、アメリカでは自宅が覗かれることなどからプライバシーも問題となっているという。

こうした中、神奈川工科大学・先進AI研究所の上田麻理准教授らは、“AIを用いた異音の検知”による、カンニングなどの不正を発見できる新たなシステムを開発した。

試験の際に発生する音をAIにディープラーニング(深層学習)によって学習させ、「不正の疑いのある音」を異音として検知するもの。

不正の疑いのある音を異音として検知するシステム(提供:神奈川工科大学・先進AI研究所 上田麻理准教授)
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このシステムは、神奈川工科大学のオンライン試験で試験的に運用されていて、音による監視によって“被監視感(=監視されているという感覚)”が強くなり、特に不正の抑制効果が大きいことが分かっているという。

AIに学習させるという「不正の疑いのある音」。具体的にはどのような音なのか? また、システムの試験的な運用によって、気付いた課題は?

神奈川工科大学・先進AI研究所の上田麻理准教授に話を聞いた。

AIに学習させる「不正の疑いのある音」

――開発のきっかけは?

新型コロナウイルスの感染の深刻化を受けて、課題となっていたのが「オンライン試験」でした。試験の監視についてはカメラを用いた画像分野が主であり、音響学分野の貢献の可能性が低いと諦めていました。

ところが、自動車の異音検知などを思い出し、AIを使えば、試験の監視にも応用できないかと考えました。


――どうやって音だけでカンニングを発見する?

専用のWebアプリがPCのマイクから音を拾い、会話、教科書やノートをめくる音、室内を歩く音などをAIで判別するというものです。


――ディープラーニングによって学習させる「不正の疑いのある音」とは、具体的にはどういうもの?

以下のような音を学習させています。

「Stand(=立ったり座ったりする動作)」
「Walk(=部屋の中を歩く動作)」
「Write-pen(=ボールペンでノートに書く動作)」
「Write-pencil(=鉛筆でノートに書く動作)」
「Book(=本の指定ページを開く動作)」
「Notebook(=ノートを1ページ目から順にめくる)」
「Document(=資料を1ページ目から順にめくる)」
「Typing(=テキストエリアに文章を入力)」
「PC(=検索エンジンで検索する動作)」
「Silent(=静穏な状態)」
「Click(=マウスのクリック音)」
「Dialog(=隣人を想定して話しかける状況)」

――学習させる 「不正の疑いのある音」はどうやって決めた?

共同研究者や同僚などとのブレインストーミングで決めました。

(画像はイメージ)

課題は「スマホのカンニング」対策

――試験運用について、学生からはどのような声があがっている?

「アプリを立ち上げているだけで緊張感が出る」「カンニングする気がなくなる」という声があがっています。


――不正の疑いのある音を検知した後、カンニングをしているかどうかの最終確認はどのように行う?

カンニング音を検知して、すぐに「あなたは不正です」とはなりません。IPアドレスや回答の傾向なども調査し、カンニングが濃厚であれば、面談を行うなどします。


――試験運用で気付いた課題は?

監視しているという事実が学生の緊張感につながり、心理的抑止効果があることに気が付きました。課題は、スマートフォンです。スマートフォンは音がほとんどしないため、現在、スマートフォンのカンニング防止システムを作成中です。


――試験運用中のシステム、実用化はいつ頃になりそう?

実用化には、もう少し時間を要する見込みです。

課題はスマホによるカンニング(画像はイメージ)

コロナ禍で課題とされている「オンライン試験のカンニング」。現状、課題とされている「スマホのカンニング防止システム」も実用化されることで、さらなる対策が進むことを期待したい。

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