コロナ禍で変化した働き方として、テレワーク(リモートワーク)を導入した企業も少なくないことだろう。

そんな中、従業員や顧客の体験の実態を把握し、改善アクションに繋げていくためのプラットフォームなどを提供している、クアルトリクス合同会社の調査で、在宅勤務下では「業務が集中しやすい人」と「業務が少なくなる人」の二極化が進んでいることが分かったという。

アフターコロナでも在宅勤務が一般化?

同社はアフターコロナ時代に向け、「コロナ禍における働き方の実態調査」と題して「新型コロナウイルスが、働き方や生活にどのような変化をもたらしたのか」などについて調査した。

この調査は、現在日本で働いている人3405人(うち在宅勤務者1000人)を対象としたアンケートモニターで、2021年4月22日〜26日に実施。

まず在宅勤務を行っている人の約9割が、コロナ収束後も在宅勤務を行うことを希望(増やしたい/やや増やしたい/現在と同じくらいにしたい)し、現在は在宅勤務を行っていない人でも32%が在宅勤務を希望(増やしたい/やや増やしたい)していることが判明した。

コロナ収束後の在宅勤務意向の調査
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この結果から、コロナ収束後も以前のような出勤が前提となる「全員が同じ時間に出勤し一緒に働く」といった勤務形態に戻る可能性は低く、各従業員が出勤または在宅勤務をある程度選択できるような“ハイブリッド型”が定着すると考えられると分析している。

ハイパフォーマー・ローパフォーマーの二極化進む

このように個人の状況に応じて、選択肢としての在宅勤務が一般化しそうな一方で、課題が既に顕在化しているという。まず「コロナ禍以前と比較した業務時間、業務量、業務効率性の変化」について尋ねたところ、業務分担や役割分担に偏りがあることが分かったのだ。

この調査では、職場で平均を超える業績を上げていると回答した従業員を「ハイパフォーマー」、平均を下回る業績にとどまっていると回答した従業員を「ローパフォーマー」と分類。両者を比べると「業務時間」「業務量」「業務効率性」において、ハイパフォーマーとローパフォーマーの回答傾向の違いが明確に表れている。ハイパフォーマーでは「増加した」、ローパフォーマーでは「減少した」とした回答の比率が、他方のグループを10〜15%も上回っている。

同様の結果は、「権限・裁量」や「役割、担当する業務範囲や役割の明確さ」に関しても確認することができる。特にローパフォーマーでは、権限・裁量や役割が「減少した」とした回答がハイパフォーマーを大きく上回っている。

忙しい人、そうでない人の二極化している

この結果は、管理職の目の届きにくい在宅勤務では、業務が集中しやすい“忙しい人”と業務が少なくなる“そうではない人”との二極化が進んでいることが浮き彫りになったことを示唆している。

また、「コロナ禍以前と比較したコミュニケーション、帰属意識」に関しては、全体的に在宅勤務ではインフォーマルなコミュニケーションの機会が減少する傾向にあることが分かった。

特にローパフォーマーがどの項目においても、​より多くコミュニケーションが「減少」していた。そして「勤務先や所属組織の一員であるという実感」の減少については、ローパフォーマーはハイパフォーマーの2倍以上となる51%が実感していると回答した。

ローパフォーマーの方が孤立し、会社に対する距離も広がっている

これから指摘できるのは、在宅勤務で組織の中で孤立している人が発生している可能性があることと、これに伴い、会社の人同士だけでなく、会社や組織そのものに対する距離感も広がっている人が存在する可能性もあるということだ。

今回の調査によって、ハイパフォーマーとローパフォーマーの間に仕事やコミュニケーションに偏りが生まれていることが分かった。ではなぜ、このような二極化となってしまったのだろうか?これを解消するには、どのよう方法があるのだろうか?

クアルトリクス合同会社のEXソリューションストラテジー・ディレクターである市川幹人さんに話を聞いた。

二極化の原因は、適切な業務分担ができていない影響

ーーハイパフォーマーとローパフォーマーの二極化(仕事の偏り)が進んだ理由として考えられることは?

リモートワークが定着する一方で、各従業員が目の届かないところでバラバラに仕事をする機会が増え、業務を適切に分担することが難しくなったことが影響していると考えられます。職場で一緒に働いていれば、余裕がありそうな従業員を見つけて「ちょっと、これお願い」といった依頼ができるのに対し、オンラインでは期待されるレベルのスキルと経験があり、詳細を説明しなくても間違いないアウトプットを出せる従業員に業務が集中しがちになります。

なお、この調査におけるハイパフォーマー、ローパフォーマーは、実際の業績評価や能力に基づく分類ではなく、単に現在の業績が職場平均を上回るか、下回るかでしかありません。ローパフォーマーといっても適切な指導や説明があれば、その仕事をこなせる可能性が十分あるにもかかわらず、リモート環境においては組織内で適切な業務分担が容易ではない中で、結果的に二極化が発生しているのが特徴となっています。


ーー二極化が進んでいるという結果をどう受け止めている?

組織の中での業務分担に偏りが生じている状態が中長期的に継続すれば、業務が集中している従業員が対応し切れなくなる可能性、一方で業務が減ってしまった従業員についてはモチベーションの低下、周囲とのコミュニケーションの機会や学習機会の喪失、組織に対する帰属意識の低下などにつながるリスクが高まります。

業務が集中している従業員が、自ら工夫しながら生産性をアップし、仕事をこなしているうちは大きな問題になりませんが、いずれ限界に達すれば業績に影響しますし、忙しくしていない従業員を批判するようなことになれば、チームワークにも支障が出てくるものと考えられます。よって、そのまま放置すべきではない状況といえます。

業務が偏ると対応できなくなり、いずれは限界に…(画像はイメージ)

ーーハイパフォーマー、ローパフォーマーとなる人のそれぞれの特徴はあるの?

元々あまりやる気がなく、日頃から仕事上のミスが多い従業員であれば、リモート環境の中で、任せられる業務がさらに限定的になることは、ある程度当然のことといえます。しかし、注意すべき点は、意欲や熱意が十分であったとしても、能力や経験が不足しているような従業員であれば、業務が減ってしまう可能性があることです。例えば、新入社員の戦力化に従来よりも時間を要し、その間実務に携わる機会が少ないことでもローパフォーマー化するような状況が発生するはずです。

一方、一定の経験や実績があり、上司からの信頼が厚いような従業員に対しては、詳細に業務内容の全てを説明する必要もなく、リモート環境においては、従来以上に「頼みやすい」相手になりやすいと思われます。その結果、こうした従業員に業務が集まることで、二極化が進むわけです。

在宅勤務だと新入社員に教えながらというのも難しい(画像はイメージ)

ローパフォーマーがコミュニケーションも減少する理由

ーーなぜローパフォーマーにコミュニケーション面での減少があった?

組織におけるコミュニケーションの多くは、何らかの形で業務に関連した話題から発生すると考えられます。リモート環境においてオンライン上のミーティングであっても、その場に人が集まっていることで、会議の冒頭や終了時にちょっとした雑談が生まれたり、アジェンダにないトピックに議論が発展することがあります。つまり、業務とコミュニケーションの発生は表裏一体であるはずです。今回の調査で「ローパフォーマー」と呼んでいる従業員は、「業務が集まらなくなっている従業員」ですので、直接的・間接的に他の従業員とコミュニケーションを取る機会が減ってしまうことは十分想定されます。

組織内のコミュニケーションや人間関係を維持する目的で、オンライン上で「雑談する会」のような場を提供している企業も少なくないものの、「さぁ、これから何か雑談しましょう」といっても、参加人数によっては一部の方々が話しているだけで、当初の目的に沿った効果が出ていないケースもよく耳にします。


ーーコミュニケーションや会社や組織に対する帰属意識も失われつつある結果は、どういった影響につながる?

会社・組織に対する帰属意識と従業員エンゲージメントとの間には密接な関係があることが、今回の調査結果からもデータ分析によって確認されています。組織の中に自分の存在価値を認めてもらえる居場所があり、自分がそこの一員であるという実感を持つことができる従業員ほど、エンゲージメントの水準が高めになる傾向が示されています。

さらに、帰属意識は、組織内に相談できる人がいるか、アドバイスやフィードバックをくれる人がいるか、学ぶ機会があるかといった項目との強い相関が確認されています。これらはいずれも周囲の人々とのコミュニケーションがベースにあってのものです。

よって、組織の中で孤立し、さまざまな接点が不足することは、帰属意識の低下を招き、エンゲージメントを引き下げることになると考えられます。これら以外にも、革新的なアイディアや取り組みは、インフォーマルな対話から生まれやすいことを思い返せば、自分の殻に閉じこもりがちな従業員が増えることによって、イノベーションを創出しにくい組織体質に染まっていくというリスクもあります。

帰属意識は周囲の人々とのコミュニケーションがベースにあってのもの(画像はイメージ)

進む在宅勤務の二極化への対応は?

ーーでは、どうすればその二極化を避けることができるの?

コロナ禍の収束とともに、「ハイブリッド型勤務体系」が定着することを前提に考えると、出勤の機会は在宅勤務とのバランスの中で再び増加してくるはずです。その際、対面による周囲の社員との連携によって、組織としての一体感の醸成や従業員間のコミュニケーションの活性化が進むことが期待されます。

加えて、検討すべき具体的な対応としては、第一に業務分担の明確化や権限・裁量委譲を見直すことで、業務を通して一人一人に活躍の場を与え、孤立化や業務分担の偏りを防ぐことです。

第二に、従業員の二極化(一部の従業員の孤立化)を避けるために企業が注目すべきテーマとして「ウェルビーイング」(身体的、精神的、社会的に良好で健康な状態)」が挙げられます。ウェルビーイングを高めることで、孤立化の抑制(良好な人間関係の構築)だけではなく、健康、モチベーション、革新的な取り組みが改善し、パフォーマンス向上も実現できるという研究結果もあります。

ウェルビーイングを高めるためには、従業員が仕事にやりがいを見出すとともに、周囲と良好な人間関係を築き、組織の中で自身の存在意義を感じることが必要です。いずれも、改善するためには、マネージャーの役割が重要であることは改めて指摘するまでもありません。加えて、個々の従業員が意識して自分の生活を大事にし、日々前向きな気持ちを持つように行動することも有効です。

第三に、教育・研修の充実が求められます。業務分担の二極化が進む背景にあるのは、従業員間のスキルや実績のギャップがあるためです。より多くの従業員がさまざまな業務を遂行できる状態を実現することにより、二極化の抑制が実現できると考えられます。また、こうした業務関連の知識やスキルに直接関係する研修に加えて、メンタルヘルスのケアやコミュニケーションスキルを磨く研修なども、従来以上に必要となります。

教育・研修充実させることでスキルや業務のギャップを埋め孤立化も防ぐ(画像はイメージ)

人との直接的な接触を減らし、人が1カ所に密集することを避けることができる在宅勤務。コロナ対策を始め、通勤時間がなくなったりとメリットもあるが、場合によっては業務分担やコミュニケーションなどでマイナスに働く可能性もあることが見えてくる。

7月12日からは東京で4回目の緊急事態宣言が発令された。在宅勤務の状況はまだ続きそうだが、改めて在宅勤務のメリット・デメリットを把握し、コロナ収束後の“ハイブリッド型”勤務体制に向け、今一度現在の勤務体制を見直しておく必要があるのかもしれない。

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