21日午前9時ごろ、鹿児島県薩摩川内市の西で台風12号が発生した。まるで奇襲のごとく、台風が現れた。このように台風が急襲するケースでは、心構えや情報不足から想定以上の被害となる場合がある。
気象庁スーパーコンピューターは九州上陸後、ノロノロになると予想。大雨などが長引くため、このあと暗くなる前の対策が重要だ。

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24時間以内に台風発生が予想される場合、気象庁は「発達する熱帯低気圧に関する情報」を発表する。実はこの情報が発表されるきっかけになったのが、今回と同様に台風発生後、半日で列島に上陸した2004年の台風11号だ。

これを教訓に時間的余裕を持った防災対応が取れるように「発達する熱帯低気圧に関する情報」が発表されるようになった。

しかし今回、最初にこの情報が発表されたのは21日午前4時30分だった。そして、約6時間後に台風12号発生が発表された。
それも、薩摩川内市沿岸のすぐ西ということで、日本の近くで発生して、急に襲い掛かって来るケースになってしまった。

なぜ、日本のすぐ近くで台風が発生したのか?

台風のエネルギー源は海からの水蒸気だ。海水が暖かければ、暖かいほど湯気が上がる。この湯気(水蒸気)が雨雲を作り、雨粒になる時に熱を出す。この熱が上昇気流を生み出し、さらに雨雲を作る。このループによって台風は発達する。

実は、九州付近の海面水温は、お盆の頃から急上昇している。お盆前は平年並みだった海面水温が、20日には平年より1.5度から2度近く上昇した。お盆前には海面水温30度以上がフィリピン付近だったが、1週間で九州付近まで北上した。台風にはならないと考えていた熱帯低気圧が、海面水温の急上昇によって予想が変わってしまったと筆者は考えている。

日本の陸地近くで台風が発生すると、過去の事例からも被害が大きくなる。九州南部では向こう24時間で250ミリの大雨が予想されていて、線状降水帯が発生した場合はこれを上回ることが見込まれる。
崖や急斜面、川の近くにお住まいの方、高齢者など避難に時間を要する方はこれからあたりが暗くなる前に避難を考えてほしい。

執筆:三井良浩(フジテレビ気象センター)

三井良浩
三井良浩

気象キャスター、プロデューサーを経て、2024年にフジテレビを定年退職。現在、フジテレビ気象センターでシニアエキスパート勤務。モットーは、災害から国民の生命と財産を守るための情報を届ける。気象予報士。