国連が掲げる「SDGs・持続可能な開発目標」の1つ「陸の豊かさを守ろう」。
1世紀以上の歴史を持つ岩手県の小岩井農場は、牛だけでなく森も育て、自然を守っている。資源を無駄にしない循環型の農場としての取り組みとは。

夜にはホタルも…小岩井農場の広大な森

広さ3,000haを誇る小岩井農場。

広さ3,000haの小岩井農場
広さ3,000haの小岩井農場
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私たちがイメージするのは草原の景色だが、このうち2,000ha、実に3分の2は森が占めている。

三宅絹紗アナウンサー:
この中に?

小岩井農場 ネイチャーガイド・佐藤康さん:
はい。緑のトンネルをくぐっていきます

入ってすぐ、沢があった。この時期ならではの場所らしいのだが…

小岩井農場 ネイチャーガイド・佐藤康さん:
みんなで夜にここに来るんです

三宅絹紗アナウンサー:
え!? 夜? あ、ホタル!

小岩井農場 ネイチャーガイド・佐藤康さん:
そうなんです。こういう森の中の沢には、ゲンジボタルが舞います

夜に舞うゲンジボタル(提供:小岩井農場)
夜に舞うゲンジボタル(提供:小岩井農場)

幻想的な夏の景色だ。

伐採まで100年…大切に手入れ

小岩井農場ではボランティアの力を借り、生育環境を守っているという。でも、なぜこれほどの森があるのか…、その答えはさらに奥にあった。

三宅絹紗アナウンサー:
すごい。映画とかに出てきそうですね

空を「V」の字に切り裂くように、スギの木が伸びている。「100年杉林道」と呼ばれる場所だ。

小岩井農場 ネイチャーガイド・佐藤康さん:
名前の通り、目の前の大きなスギの木は100歳

三宅絹紗アナウンサー:
100歳!?

小岩井農場 ネイチャーガイド・佐藤康さん:
創業間もないころに植えて、100年かけて育ててきた森でもあります

三宅絹紗アナウンサー:
100歳。大先輩ですね

小岩井農場の山林事業の歴史は古く、創業当時にさかのぼる。元々は、防風林を育てるために植林を始め、本格的な事業に発展した。

明治時代の植林の様子(提供:小岩井農場)
明治時代の植林の様子(提供:小岩井農場)

現在も、伐採まで100年かけて木を育て、建築用を中心に供給を続けている。大切に手入れされてきた森だ。

小岩井農場 ネイチャーガイド・佐藤康さん:
どうですか?周りを見渡してみて。とても明るいのがわかると思うんです。森の手入れ、間伐をして、森の中に日差しが入るように明るくなると、今度はいろんな広葉樹が出てくる。そして、広葉樹が花を咲かせて実をつけると、今度はいろいろな昆虫もやってくる

小岩井農場 ネイチャーガイド・佐藤康さん:
そして鳥もやってくる。小動物もやってくる。手入れ次第で豊かな森、明るくて気持ちのいい森になるんです

牛の餌の生産に発電施設 環境と生産活動も両立

環境と生産活動の両立に向けた取り組みは、ほかにもある。例えば、牛が食べるえさについても。

世界では、農地の8割が家畜の餌の生産に使われているとされ、その拡大のため森林が伐採されていることが、環境問題の1つになっている。

小岩井農場では、牛を育てるための牧草などの餌も農場内で生産している。

牛を育てるための餌も生産
牛を育てるための餌も生産

牧草は刈り取ったあと、サイロで発酵させ、雪が積もる冬の間も牛が食べる餌として蓄えられる。

そして、なんだか物々しい施設が…

三宅絹紗アナウンサー:
こちらの施設は?

小岩井農場・野沢裕美さん:
牛の排せつ物から電気を起こす施設です

バイオマスパワ-しずくいし
バイオマスパワ-しずくいし

牛のげっぷや排せつ物に含まれるメタンは、二酸化炭素の25倍もの温室効果があるとされ、地球温暖化の原因といわれている。

このバイオマス発電施設では、牛の排せつ物と地域から集めた野菜くずを燃料に、それらから出るメタンガスで電気を生み出している。その発電量は、1日あたり一般家庭400軒分となる。
さらに、電気を生み出したあとの残りもたい肥にして、牧草を育てるために再び使われている。
2004年に町などとともに設立され、循環型のモデルとして国の表彰も受けた。

小岩井農牧株式会社・辰巳俊之社長:
森を育て、荒れ地だった原野を開墾して、豊かな環境を作ってきました。この環境を保全して持続させ、循環させていく必要がある

小岩井農牧株式会社・辰巳俊之社長
小岩井農牧株式会社・辰巳俊之社長

130年をかけ、緑あふれる牧場をつくった小岩井農場。
その歴史は、これから先の未来に続いていく。

(岩手めんこいテレビ)

岩手めんこいテレビ
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