メジャーリーグで大活躍中の“リアル二刀流”大谷翔平。
27日(日本時間28日)に発表されたオールスターファン投票で、アメリカンリーグ・DH部門の1位となり、最終2次投票に進んでいる。
そんな大谷の投・打・走を支えるスパイクが日本で製造されているという。
大谷が契約するアシックスジャパンで、大谷のスパイクの開発を担当する河本勇真さんに大谷がこだわり抜いたスパイクの“秘密”を聞いた。
一足のスパイクでプレー可能に
この記事の画像(11枚)大谷のスパイクは一言で言うと「投手の時も野手の時も、一足のスパイクでプレーできる」と明かす河本さん。
あまり知られていないが、投手と野手ではスパイクに違いがある。
投手はピッチングの際、つま先が地面とこすれるため、スパイクが破けやすくなる。そのため補強用の革・通称「P革」をつけることが一般的で、両足同じ形の野手のスパイクとは異なるものだ。
大谷も日ハム時代、投手と野手で試合ごとにスパイクを履き替えていた。しかし、メジャーへと渡り、二刀流でのさらなる飛躍を目指し、スパイクにこだわりを見せた。
アシックスの担当者が大谷にヒアリングすると「どちらかというと野手で試合に出ていることが多いので、(投手用と)同じように履ける方がわかりやすくていい」という意見を出したという。
「P革は軽いものではなく、30グラム以上ありまして。左右のバランスとか、投手の時と野手の時とで感覚が変わるところがあるのかな」
河本さんは大谷の考えを踏まえ、“大谷専用”のスパイク開発に取り組んだ。
P革の部分はテニスのアイデアを応用
こうして完成したのが「二刀流専用スパイク」。P革を排除し、左右を同じ重さにすることで、投手と野手どちらで出ても同じバランスでプレーできる。
このスパイクを履いた大谷の感想は、「サイズ感もちょうど良かったですし、つま先が全然削れません」というものだった。
ピッチャーで出場する際にすり減る、つま先の部分も工夫されていた。
「ポリウレタン樹脂を使っていまして、これはテニスシューズでもよく使用されています。当社が契約しているジョコビッチ選手が履いているシューズに使われている素材です。摩耗には非常に強いです」(河本さん)
時には4時間を超える試合も行われるテニス。大きな負荷や摩耗にも耐えうる強い素材を野球のスパイクにも応用した。
このテニスからアイデアを得て作ったスパイクは、大谷が初めてだといい、河本さんは「P革があらかじめ、つけなくてもというモデルに関しては大谷選手が初めて。“二刀流スパイク”じゃないかなと思います」と明かした。
独自の感覚“立ち感”もフォロー
大谷の言葉がきっかけとなり完成した、世界初の“二刀流スパイク”。今シーズンのモデルにはさらなるこだわりが詰め込まれている。
「ご本人が一番にリクエストされている“立ち感”という評価の軸があります。
“立ち感”というのは大谷選手の口から初めて聞きましたし、独自の感覚なのかもしれないです。野手の時も投手の時も片足で立つ場面があるのですが、そういう場面でぐらつかない、地面に対してフラットに平行に立ちたい」
ピッチャーの際は右足、バッターでは左足と、投打で異なる軸足を用いる大谷。だからこそ“立ち感”、いわゆる片足で立った時の安定感を求めていた。
昨年までのスパイクは金具を支える台があったため、足裏に凹凸があり、安定感を欠いていたが、今年のスパイクはその台を中に埋め込むことで凹凸の少ない、フラットな靴底を作ることに成功した。
そのため、足裏全体で地面と接することができ、高い安定感を得ることができるようになった。
こだわり抜いたスパイクと共に迎えた今シーズン。バッターとしては、すでに自己最多のホームラン。ピッチャーとしても3勝をあげるなど、これ以上ない成績をあげている大谷。
唯一無二のスパイクで、ここからどこまで数字を伸ばすのか、ショータイムから目が離せない。