人事院が今年度の国家公務員総合職採用試験の合格者を発表。倍率は記録のある1960年度以降最低だった。さらに出身大学の内訳では、これまで多くの官僚を輩出してきた東京大学の割合が減少傾向にある。

近年、キャリア官僚の職場がブラックとして報道されるなど過酷な長時間労働が問題となっているが、今回の放送では東大生のキャリア官僚離れについて徹底議論した。

学生が減っている上「とりコン」が増加

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新美有加キャスター:
昨日結果が発表された、キャリア官僚といわれる国家公務員総合職試験。東大出身の合格者数が減少傾向にあり、全体に占める割合も右肩下がり。片山さんは東大から旧大蔵省に入省していますが。

片山さつき 自民党参院議員 元内閣府特命担当相(東大法学部卒):
東大法学部には昔は1学年あたり600人の学生がいたが、今は400人。人口減に伴い若者が減っているのだが、公務員の人数需要は減っていない。また公法コースのような国家や地方行政を考える明確なコースづけがないから、社会で仕事をするときにみんな、とりあえずコンサルになる。この「とりコン」じゃない人を霞が関に取り込むコースを作っていくしかない。

元厚労官僚 環境省働き方改革加速化有識者会議委員 千正康裕氏(慶応法学部卒):
僕が入った20年前は、優に半分以上が東大出身でした。僕は慶応ですが。同世代の東大法学部の人たちは官僚になる先輩も多く、当然自分の選択肢としても考える。あまり深く考えず官僚になる人も多い。逆に東大ではない人の方が強い思いを持っていたり。

働き方が「昔よりはるかにブラック」

元厚労官僚  千正康裕氏

反町理キャスター:
20年前より今のほうがはるかにブラック?

元厚労官僚 千正康裕氏:
はるかにブラック。職場にいる時間は昔も長かったが、間延びしていた。今の若い人たちは、職場にいる全時間を全速力で走っています。学生から見れば、若手官僚の先輩が仕事について何を言うかが大事だが、ブラックな状況の中本音で後輩にお勧めできるのか。

新美有加キャスター:
新人キャリア官僚を対象にした人事院の調査。優秀な人材獲得に必要なものとして、職場全体の超過勤務や深夜勤務の縮減を図るという回答が75%にも上っています。また去年の時間外勤務の調査では、月に80時間を超えるいわゆる過労死ラインに達しているのが、20代キャリア官僚のおよそ30%。30代ではおよそ15%。千正さん、官僚時代に経験した勤務実態は。

元厚労官僚 千正康裕氏:
今考えれば異常でした。暇なときで残業が80時間、法案をやっているときには200時間とか。でも僕らの時は楽しかった。すごい先輩たちと日々議論させてもらい、実際にそれが形になる仕事もいっぱいあった。もう一つ今の若い人たちとの違いは、20年前には民間の大企業もみんなブラックでした。自分たちが特別とは思っていなかった。

片山さつき 自民党参院議員 :
非常に忙しくつらいが、私のいた主税局には税務署から来ているノンキャリアの人などもいて、助けてもらった。そのシステムが壊れた。90年代に相次いだ不祥事でどんどん締めていき、その後に政権交代もあり、各役所の族議員もほとんどいなくなり、人も減らしている。でも業務量は減らないどころか増える。もつわけがない

東大のコースでしっかり養成するか

雇用ジャーナリスト 海老原嗣生氏

反町理キャスター:
今の官僚機構をどうすれば、もっと多くの人が集まる組織になる?

雇用ジャーナリスト 海老原嗣生氏:
僕はドライな関係になるしかないと思う。官僚は一生天下国家の一員で、一生面倒を見てもらえ、給料も後半にどんどん良くなっていく仕組みだった。そうではなく、官僚としていろいろ学んで、嫌なことがあれば録音を突きつけて辞めるぐらいの姿勢でプロになるしかないと思う。もちろんスペシャリストとして、やるべき仕事はちゃんとやって。

元厚労官僚 千正康裕氏:
官僚の仕事は、少なくとも従来は機能でいえば政治に近い。決められたことを執行する仕事をするのではなく、意思決定を司っている。法律は国会が議決して作るものだが、政府が提出する案は官僚が作る。作成段階でいろんな人の意見を調整してまとめていくのが、官僚の仕事の本質。内製化して、どっぷり浸かって作らなければいけない。

片山さつき 自民党参院議員:
その法律を作る能力がすごく落ちていて、この国会でも問題になった。東大の法学部のコースを伸ばして、一刻も早く養成校を作った方がいい。辞める際に教育費を返還してもらい、その額は勤続年を減るごとに減らしていく。

収入への不満、家庭と仕事の両立…

新美有加キャスター:
自己都合理由の20代のキャリア官僚退職者が、2013年度の21人に対し2019年度は86人、およそ4倍に。また数年以内に辞職する意向があると答えた方は、30歳未満が最多。

反町理キャスター:
自己成長できる魅力的な仕事に就きたいという理由。また収入の不満、仕事と家庭の両立。これについては。

元厚労官僚 千正康裕氏:
僕の感覚に合います。今の官僚機構は3分の1が女性。男性でも共働きがほとんど。24時間仕事をするような異常な働き方はもう無理です。また後に給料が上がっていくとしても待てない。30歳ぐらいの官僚の年収は、同い年で一流企業に勤める人より安い。

雇用ジャーナリスト 海老原嗣生氏:
これだけ優秀でこれだけ働いて、たぶん民間より2〜3割安い。4大商社なんて、20代ではみんな年収1000万円になる。ただ問題は他にもある。女性の採用が進んだことに関連し、2010年代には民間が相当ホワイトになった。霞が関だけが取り残されている

官邸主導が負担を増やしている?

反町理キャスター:
霞が関のブラックさの背景について。

元厚労官僚 千正康裕氏:
政治のスピードが上がり、官邸主導で早く結果を出せとなる。それはいいこと。しかし増員はされず、忙しくなると一人あたりの労働量が青天井で増えていく。

反町理キャスター:
与党の議員からは、野党がわけのわからない質問を夜遅くに出すし、実りもないヒアリングがあって官僚機構は可哀想だとよく聞く。しかし与党の政治のあり方も官僚機構の負担感を増していると。どっちがどうだとは僕は聞きませんよ。……どっちがどうなんですか?

元厚労官僚 千正康裕氏:
えっ? 官邸主導がやっぱりきついです。役所によるのかもしれないが、厚労省は政権の重要課題がすごく多い。早くやれとしか言われないが、実務的な体制は誰も考えない。

片山さつき 自民党参院議員 元内閣府特命担当相

片山さつき 自民党参院議員:
この1年半の厚労省を見ていると、政策立案能力そのものが問題。過去に例のないパンデミックが起きたら、役所は役に立たない。ノウハウの蓄積がこれほどないのかと。ならば政治が前に出て決めるしかない。悪いけど、それに着いてこられないことに文句を言うのはプロではないよ。

元厚労官僚 千正康裕氏:
政治主導が悪いから問題だと言っているのではない。それは正しく、むしろ官邸主導を強化すべき。どう優先順位をつけるか。ものを決めてこの通りやれというのは当然政治が決めるべきで、それについてこれるようなスタッフの差配まで政治の責任でやるべきというのが僕の考え。少なくとも人数については。

片山さつき 自民党参院議員:
このコロナで、厚労省だけではなく霞が関が戦時中と同じような状態。対応能力がないのにやっている。それをむち打つほど政治は馬鹿ではないから様子を見ているだけで、システムも体制も変えていかなきゃならない。

反町理キャスター:
官僚側の思いと政治側の思い。いつか官僚がクーデターを起こすのではないかというほどの緊張感がある。

雇用ジャーナリスト 海老原嗣生氏:
総定員法や中央省庁等改革基本法で、どんどん人を増やせない状態になっている。

片山さつき 自民党参院議員 :
間違った状態。そこは勇気をもって政治が言うべき。

元厚労官僚 千正康裕氏:
全体の定員を削減することはやめたほうがいい。一方、公務員全体を増やすことには慎重であるべき。日本全体の労働力人口は2040年にかけて2割ぐらい減る。どの業種も人手不足で、少ない人数で効率的にサービスを提供する工夫をしている。

霞が関にも無駄な仕事はいっぱいある。夜中に何時間もかけて大量の国会の答弁メモを何時間もかけてコピーして、それを自転車で届けるとか。

片山さつき 自民党参院議員:
国会答弁の準備制度をここまでやっている国は日本しかない。答弁者として自力で答えられる人しか大臣にしちゃダメですよ。

BSフジLIVE「プライムニュース」6月22日放送