爪がついた特殊な靴をはき、ロープを使って高さ約20メートルの木を巧みに登っていく。
高い所での作業を専門に、木を伐採する職人。空に近いところで作業をすることから、「空師」と呼ばれている。

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空師・佐々木武さん:
(木の)上での作業は、もう自分しかいないので、自分で何とかするっていうつもりでいつも仕事はしていますね

白山市鶴来地区にある「なかの林業」。
空師の仕事を任されている佐々木武さん(39)。

空師・佐々木武さん:
元々、現場で仕事することが好きだったので、そういう関係で外で仕事ができたらなというので、木を切るのが楽しそうやなというのが(林業を選んだ)一番ですかね

建物がある場所や狭い場所で活躍

この日の作業現場は白山市内の酒蔵。
クマなどの獣害を防ぐため、敷地内の高木を間引いてほしいとの依頼。

空師・佐々木武さん:
きょうは小堀酒造店の樹木伐採ということで、みなさん気をつけて作業してください

近くに建物がある場所や狭い場所では特殊な伐採が必要。

なかの林業・中野篤代表取締役:
杉の頭、5,6本抜けば中抜けると思うので、そしたら欅行ってから、あとは届く範囲のものやっていこうかな

広い山の中で木を伐採する場合、どの方向に倒しても問題はないため、高さのある木であってもそのまま切り倒す。

一方、周りに建物などがある狭い場所では、切り倒す前に木を上から順番に切り落とし、短くする必要がある。木に登って切り落とす作業をするのが、空師・佐々木さんの仕事。

空師・佐々木武さん:
構造物とかそういうのが(近くに)あるので、そういう面は気をつけますね。その限られた範囲の中で、いかに安全に作業ができるかという技術的な面が求められてくるので

佐々木さんが身に着けている装具の重さは、チェーンソーを含め約10kg。
切断した木が落下しないようクレーンで吊るして作業を行う。空師に国家資格などはないが、熟練した技術と集中力が求められる。

ーー上での作業中はどんなことを考えている?

空師・佐々木武さん:
基本あんまり考えないようにしてます。下ばっかり見ていると怖くなるので

佐々木さんが1年間にのぼる高木は500本以上。伐採した木は販売され、再利用に回される。

空師・佐々木武さん:
限られたスペースで安全に作業が出来たときは達成感があると思う。やった仕事がこう積み重なっていくので

価格高騰に人材不足…合わない需要と供給

こうしたなか、日本の林業に影響を及ぼす出来事が。

なかの林業・中野篤代表取締役:
これケヤキなんですけど、これは全部お客さんに切ってくれって言われて切った木。これを市場に持っていくんですけど

今、木材の価格が高騰している。
テレワークが普及したことでアメリカの住宅需要が高まり、輸入材の価格が高騰。流通する木の約6割を占める輸入材が高騰したことで、国産材の増産が叫ばれ始めた。

なかの林業・中野篤代表取締役:
県産材を使ういいチャンスやと思うんですけど、供給がちょっと追いついていないんで、需要があっても、人材確保は一番の課題ですね

県内の林業従事者はここ20年間で半減し、最近は480人前後で推移している。

なかの林業・中野篤代表取締役:
(業界に)少しづつ若い子が入ってきているとは聞いていますけど、やっぱ続かないですよね。肉体的にもひどいし。そこをもうひと踏ん張りしてもらえれば、一人前になれるんですけどね

佐々木さんが切り落とした木はクレーンで地面へと下ろされ、空師以外の作業員たちが枝などの処理を行う。

ーー上に上がってみたい?

後輩の作業員:
上がってみたいです、けど自分はまだ今年入って2年目なので、自分からしたらあこがれの人です

空師・佐々木武さん:
これからどんどん(他の人も)登っていってくれれば僕も負担が減るので、ぜひとも登って欲しいんですけど、命かかる仕事なもんで、あまり甘いことも言ってられないので、その甘さを断ち切れるような子が増えればな

林業界にとって欠かせない存在「空師」。
新たな担い手の育成がいまの課題。

(石川テレビ)

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