近所に長年人が住んでいない空き家があると、倒壊や防犯面などから不安に思う人も多いだろう。それがいずれ、トラブルに発展してしまうこともある。

空き家を放置することで、所有者だけでなく近隣住民にもマイナスの影響を与えてしまうかもしれない。そこで今回は、NPO法人空家・空地管理センターの理事・伊藤雅一さんに空き家が生むトラブルについて聞いた。

倒壊に火災、治安悪化、害虫発生…

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「空き家を放置したことで起こりうる危険性は、老朽化による倒壊や放火による火災、不審者の侵入などが挙げられます。それほど危険度が高くなかったとしても、庭の草木が生い茂ることで害虫が増えたり、伸びた枝が隣の家の敷地に入ったりするという被害も考えられます」

国土交通省住宅局の「令和元年(2019年)空き家所有者実態調査」では、空き家の半数以上に腐朽・破損があり、特に別荘や貸家・売却用等以外のその他の空き家ではそれが6割を超えることが分かっている。この調査は平成30年(2018年)住宅・土地統計調査の調査区から無作為に抽出した調査区内で「居住世帯のない住宅(空き家)を所有している」と回答した世帯を対象に行ったもの。

窓やドアが閉め切られた家は傷みやすく、それが景観の悪化につながり、近隣からクレームが入るケースもあるそう。

「家は人が住まずに閉め切られた状態になると、湿気が溜まり、壁や天井、床などが傷みやすくなります。そのまま放置すると、窓ガラスが割れたり屋根が落ちたりすることもあります。老朽化した空き家があると、その地域の価値を下げかねないのです。ひどい場合だと、庭や玄関先にポイ捨てをされて、ゴミ捨て場のようになってしまうこともあります」

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もし、近所に景観や治安の悪化につながりそうな空き家を見つけたら、どこに相談すればいいのだろうか。

「2015年に空家等対策の推進に関する特別措置法(通称:空家等対策特別措置法)が施行されたことで、各自治体で空き家の相談を受け付ける体制が整いました。ですので、住んでいる市区町村の役所に相談しましょう。自治体によって担当の部署は異なるので、まずは代表の窓口に『近所の空き家のことで相談があるんですが』と、連絡してみてください」

東京都のように、都が選定した事業者を空き家のワンストップ相談窓口として設置している場合もある。NPO法人空家・空地管理センターもその一つで、事前予約制だが電話やWEB、メールなどで無料で相談を受けている。空家・空地管理センターに寄せられた令和2年度(2020年度)の相談件数は、1587件(前年比128%増)だったそう。

倒壊による死亡事故の損害賠償額は5000万円以上

倒壊寸前だったり、景観を悪くするような空き家は、周辺の住民に大きな影響を与える。だからこそ、空き家の所有者も放置してはならない。

地震や豪雨、大雪など、大規模災害も近年増えているため、老朽化した空き家が災害によって倒壊してしまうケースもあるという。

空家・空地管理センターが行った「空き家の倒壊が死亡事故につながってしまった場合の損害賠償額の試算」を教えてもらった。

(この試算は空家等対策特別措置法が施行される前の2014年に、空家・空地管理センターが独自に出したもの)

空き家の倒壊が事故につながってしまうと、空き家の所有者に対して多額の損害賠償金が発生するが、伊藤さん曰く「今は近隣からの相談がきっかけで事前に対処される方もいるようで、損害賠償が予測されるようなケースは抑制されてきているように感じる」とのこと。

「空家等対策特別措置法によって、自治体が空き家を調査した結果、倒壊の危険性があったり著しく景観を損なっていたりする場合は『特定空家』に指定されることになりました。『特定空家』の所有者には、自治体から助言・指導・勧告・命令が出され、それでも空き家の管理を行わない場合は命令違反の過料が科せられます。さらに、行政代執行として自治体が解体を行い、その費用を請求される場合もあるのです」

自治体も「特定空家」を増やさないため、放置空き家の存在を把握した段階で所有者に連絡を入れ、管理の相談に乗ることもあるそう。

「『特定空家』に指定されて自治体から勧告を受けると、『住宅用地の特例措置』が適用されなくなるため、固定資産税が上がることもあります。その状況を避けるためにも、もし空き家を所有していて解体する予定がないのであれば、放置せずに管理すべきです」

空き家であることを近隣や地域の人に報告して

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空き家の管理とは、具体的にどのようなことをすればいいのだろうか。

「先述したように、家は人が住まなくなると途端に傷み始め、壁紙が剥がれたり床の腐食が進んだりしやすくなります。都市部であっても、ハクビシンやネズミが住み着いてしまうことも。家を保持するのであれば、月1回は空気の入れ替えを行いましょう。屋根や外壁は、15年から20年に一度は手入れをした方がいいといわれています」

月1回の点検を行うだけでなく、少なくとも両隣と向かいの家、その地域の自治会長には、空き家にしていることを報告しておくことも大切とのこと。

「近所や地域の人に報告する際には、連絡先も伝えておくといいでしょう。きちんと管理していることを伝え、良好な関係が築ければ、『ごみが捨てられているよ』『庭の草木が伸びてきてるよ』といった連絡をもらえるかもしれません。そうすれば、周囲に迷惑をかける前に対処できますよね」

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そして、もっとも重要な空き家対策は、早いうちに家の相続や処分についての話し合いを行うこと。

「親が他界して実家を引き継いだものの、子どもは既に持ち家があるため、実家を持て余して“放置空き家”にしてしまうケースはよくあります。そうならないためにも、親が元気なうちに実家の相続について親族で話し合いましょう。相続したい人がいるなら、そのままで問題ありません。必要ないのであれば、親が生きているうちに解体したり借り手を見つけて賃貸物件にしたり、処分や利活用の方法を検討する必要があります」

所有者が持てあました空き家によって、迷惑をかけられるのは近隣の住民たち。なるべく人に迷惑をかけないためにも、「家」の扱いは前もって決め、「空き家」を維持するにしても近隣住民への気遣いは持つべきだろう。

取材・文=有竹亮介(verb)
図表=さいとうひさし