山での遭難事故につながる「山菜採り」だが、そのシーズンも終盤。
山で道に迷わない秘訣や注意点を、山菜採りの達人に聞いた。

山で民謡を熱く歌いあげるのは、岩手・西和賀町の高橋康文さん(67)。この道50年、「山菜採りの達人」。

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歌うことで熊よけしながら山菜採り

山菜採りの達人・高橋康文さん:
これくらい歌うとクマも逃げるでしょ。山で歌うのは気持ちもいいんですよ

高橋さんに、この季節に採れる山菜を教えてもらった。

山菜採りの達人・高橋康文さん:
これはミズです。生食してもアクがないのでお腹壊さないから。マヨネーズ持ってきてちょっと付ければ、ほんと美味しいから。
山菜のシドケ。折られているのはカモシカが食べた跡です

シーズン終盤を迎えても、県内には美味しい山の恵みがまだまだ溢れている。
その一方で毎年、後を絶たないのが山菜採り中の遭難事故。
県内では、2016年から2020年までの5年間で、山菜採り中に遭難した人は58人。このうち9人が死亡している。

何かあっても「落ち着く」ことが大切

そこで、これまでに遭難したことは一度もないという高橋さんに、その秘訣を聞いた。

山菜採りの達人・高橋康文さん:
みんな同じ景色に見えるので、平らなところほど迷いやすいんです。
(道に迷わないポイントは)目印をつけることです。目印になるのは、木の枝を切って下げていくとか、木に印をつけるとか

山菜採りの達人・高橋康文さん:
ここまでくれば、折れてるなとか、あそこに傷があるなとか、それで戻れるから

そして、もしも道に迷ってしまったら、まずは落ち着くことが大切という。

山菜採りの達人・高橋康文さん:
迷ったなと思ったら、まず腰かけて休んで考えること。焦ってあちこち動き回ってしまうと、疲れるだけ疲れて、本当に(道が)わからなくなってきた時、体力が余っていないと大変だから

また、クマの被害にも注意が必要。
クマに遭遇し逃げている途中で道を見失ったり、襲われた際のケガで動けなくなる遭難事故もある。

山菜採りの達人・高橋康文さん:
(山は)我々が住んでいるところではない。クマの領分を犯すことになる。ゆっくり入っていく

ゆっくり楽しみながら歩くことで、クマが人から離れていく時間が作れるという。

山菜採りの達人・高橋康文さん:
向こう(クマ)も人を警戒しているはずなので、何かを見たり、あるいは大きな声を出すよりは、歌を歌うとか、向こう(クマ)も「人が来た」と思って遠くに行ってしまうので、(クマに)会わない

そして、もしも道に迷ったら頼りになるのが携帯電話。
遭難者の捜索にあたる県警では、電波が途切れたとしても携帯電話を持つことが早期の発見につながるという。

県警地域課・岩持寿和次長:
携帯電話の最後の電波の状態を確認し、そこを起点に捜索範囲を狭めることができます

また遭難者の捜索にはヘリコプターが使われる場合がある。
この時、早期の発見につながるのが服装。ヘリコプターから撮影された映像を見ると、赤いジャケットを着た人はすぐに見つけられるが、茂みには全部で4人がいる。

しかし、目立たない服装のため、とても見えにくい。
このように目立つ色の服装は、捜索する側から見つけやすいことがわかる。

そして、救助を待つ間に必須なのが非常食。「軽い」「腐りにくい」の2つがポイント。
高橋さんが持ち歩く、西和賀ならではの非常食は。

山菜採りの達人・高橋康文さん:
これは「かゆっこ餅」というお餅です。おかゆを炊いて凍らせた食べ物です。これは、このままで3年でも5年でももちます。マタギの食べ物、携行食ですね。これをこのまま食べます

ユニークな遭難事故対策で山を楽しみながら歩く高橋さん。
遭難事故に遭わず、長年 山菜採りを続けられる秘訣は、山を楽しむ心の余裕だった。

(岩手めんこいテレビ)

岩手めんこいテレビ
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