技の正確さや演技の美しさを競う馬術。
吉越奏詞選手は18歳ながら、2018年世界選手権は個人8位、フリースタイル種目で6位に入賞した期待の星だ。
 

初回から魅了された乗馬

 
 
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2000年、生まれてすぐに先天性の脳性まひで右手と両足が不自由となり、医師からは「歩けないかもしれない」と言われたという吉越選手。

馬との出会いは、生後半年で母・清美さんに連れられて来たリハビリテーションだった。

清美さんは「一回目に乗ったときから大喜びで、『馬にもう乗せないよ』って言うと、何でも言うことを聞きました」と当時を懐かしむ。

吉越選手は、乗馬体験や馬とのふれあいを通じて、精神機能と運動機能を向上させるホースセラピーに取り組んだ。
 

「馬場馬術」の存在を知り、才能が開花

 
 

「自分の体に麻痺があって、思うように動かせないところがあっても、馬に乗れば自由に動かせるので、それが本当に快感なのかなと思っています」

幼い頃は右半身を動かす事も困難だったが、ホースセラピーのおかげもあり次第に回復し、歩けるようになった吉越選手。

2020年に東京パラリンピックが開催されることが決まり、“正確さ”と“美しさ”を競う「馬場馬術」があることを知り、競技を始めるようになった。

2015年には、全国障がい者馬術大会では初出場ながらも優勝。その後も国内の大会で優勝を重ね、昨年の世界選手権では個人8位、フリースタイル6位。
東京パラリンピック強化指定選手にも選ばれている。
 

目標は日本人初の金メダル

 
 

目標は、「馬場馬術」で日本人初となる金メダルだ。

2年前からのパートナー『ブラウンシュガー号』を愛でながら「馬はもう僕のパートナーというか、人生のほとんど全てという感じで捉えていて。馬がいなかったらこうやって普通に歩けたりとかもしてこなかったので…、恋人みたいな感じです」と話す吉越選手。

課題は、馬のことをもっと知ることだという。

「“人馬一体”という言葉がある通り、右手だったり足が使えなくても馬とコミュニケーションを続けていくことで、馬も僕のことを心がけて見てくれたりするので、感謝して乗っています」

馬を理解し、馬と心を1つにして、乗り手の気持ちを馬に理解させることが勝利につながる。

 
 

母も「2020年、大好きな馬と一緒に一生懸命戦ってきてください」と馬術を楽しむ息子にメッセージを送る。

取材中も、馬に乗りながら「やっぱり楽しい」と笑みをこぼした吉越選手。

2020年東京へ、人馬一体となって駆けていく。
 

吉越奏詞(ヨシゴエ・ソウシ)

 
 

よしごえ・そうし 2000年8月7日生まれ 18歳 東京都出身
東京障害者乗馬協会所属 クラス:グレードⅡ
私立日出高校を3月に卒業、今春から日本体育大へ。
15年全国障がい者馬術大会初出場で優勝。16年東京馬術大会優勝。
17年3月パラ馬場馬術大会、同年8月パラ馬場馬術大会総合優勝。
18年世界選手権は個人8位、フリースタイル6位。


(PARA☆DO!:毎週水曜夜10時54分放送
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