子供向けに変異ウイルスを分かりやすく紹介
感染力が強いとされる新型コロナの変異ウイルス(変異株)の感染が拡大する中、国立成育医療研究センターが、変異ウイルスについて、子供にも伝わるようにまとめたリーフレットを作成し、ホームページなどで公開した。
リーフレットの1枚目では、「コロナの変異ウイルスは、こどもにかかりやすいの?」という疑問についての回答。
“コロナの変異ウイルスは前と比べて、感染のパワーは最大で1.7倍!「こどもだけ」にかかりやすいのではなく、「みんなに」かかりやすいんだよ。”
“こどもがコロナの変異ウイルスに感染したときの症状はこれまでと変わらないと言われているよ。(発熱、せき、鼻水、下痢、頭痛など)”
と説明し、2枚目では「コロナの変異ウイルスは、どうして広がったの?」についてを解説。
コロナウイルスがふえるとき、自分の体の情報をコピーする。
→何度も何度もコピーをすると、そのうちにまちがえる。
→そうしてできたコロナウイルスは、前と違う「変異ウイルス」になる
→感染の力がアップした変異ウイルスはいま日本や世界に広がっているんだ。
という経緯があることを紹介した。
そして、最後の3枚目では、「コロナの変異ウイルスには、なにをしたらいいの?」という疑問についての回答。
いまできることは、感染を予防すること!
(1)こまめな手洗い(2)マスクをつける(3)密にならない
これは変異ウイルスでも同じだよ。
このように説明し、変異ウイルスの特徴や予防法ををとてもわかりやすくまとめているのだ。
なお、同センターがリーフレットを作成する前の今年3月、日本小児学会の予防接種・感染対策委員会も、このような見解を示している。
・変異株が既に広がっている英国ロンドンでは、変異株による感染は、特に子どもに多いということはなく、成人と子どもの感染者の割合は変異株の出現した前後で大きく変わっていません
・変異株が子どもに感染した場合、既存株と異なる経過を示すことはないと報告されています。
・子どもでは感染者の多くが無症状から軽症で、既存株でも変異株でもその違いはありません。
こちらでも、成人と子供の感染の割合は変異ウイルス前後で変わらず、さらに子供が感染した場合でも、既存のコロナウイルスの症状と違いはなかったというのだ。今回、国立成育医療研究センターがリーフレットを作成したのは、こういった背景も関係しているかもしれない。
ただ、変異ウイルスの子供の感染については、国内では2月に、児童が通う施設で、変異ウイルスのクラスターが発生しており、不安に思う保護者や子供も少なくないだろう。
そこで、子供向けのリーフレットを公開した理由について、作成した同センター「コロナ×こども本部」の半谷まゆみ研究員に詳しく話を聞いてみた。
必要以上の不安や恐怖からこころを守る
――今回、リーフレットを作成した理由を教えて。
変異ウイルス流行に関連した不安の声がアンケートにも寄せられています。正しくない情報をもとに必要以上に恐れているように見受けられるものもありました。正しい知識をしっかり伝えることが、必要以上の不安や恐怖からこころを守ることに役立つと考えました。
――このリーフレット、どのように利用してほしい?
家庭や学校などで、こどもたちと一緒に眺めて読んでいただきたいです。知識を再確認したり、誤った情報を払しょくしたりするために使っていただけましたら幸いです。
不安の高まりでイライラする、集中できない子供も
――子供たちが誤解しているという声は聞いている?
保護者からの声はありました。こどもから直接の声は今のところありませんが、報道のされ方や、休校を検討する動きなどから、こどもが誤って理解しかねない状況ととらえていました。
――他に、親からどういった不安の声を聞く?
例えば、0歳の男児の保護者からこんな声をいただきました。
「変異ウイルスに関する情報(子供も重篤化しやすい?)が不足しているように思います。」
――子供たちの感染の不安が高まるとどうなる?
「コロナのことを考えると嫌な気持ちになる」「すぐにイライラする」「集中できない」といった様々なストレス症状が出ることもあります。
必要以上に怖がらず正しい行動を
――リーフレットで、特に訴えたいことは?
「変異ウイルス」に対して、必要以上に怖がらず、正しいことを知って正しい行動をしてほしい、ということ。それから、大人には、(変異ウイルスのことに限らず)こどもにも分かりやすく話したり説明したりしてほしい、ということを伝えたいというのが隠しメッセージです。
なお 変異ウイルスの感染力が強いということで、飛沫以外でも感染するかを聞いたところ、
リーフレットの監修をした同センター感染症科診療部の宮入烈部長が「感染経路自体は変わっていません。動物実験などで従来のウイルス・変異ウイルスともに、飛沫でも分泌物との接触でも感染することが確認されています。ただ、それぞれの頻度が変異ウイルスで高くなったと考えられています」と答えてくれた。
変異ウイルスの感染は今も広がっている。このようなリーフレットを活用して家庭で正しい情報を伝え、子供たちのコロナに対するストレス軽減などに役立てて欲しい。
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