6月20日までの延長が決まった、緊急事態宣言。

菅義偉首相:
感染防止とワクチン接種。1日も早く接種を進めて新型コロナに打ち勝つ。

政府分科会の尾身会長は、若い世代も含め“とにかく早く”ワクチン接種の必要があると強調した。

今一層求められる接種のスピードアップ。すでに東京でも、64歳以下への接種を始めようとする区が出てきている。

豊島区は、6月末から64歳以下の接種をスタートさせる見込みだ。これまでの高齢者への個別接種がスピーディーに進んだことで、いち早く幅広い世代に広げられるという。

どうやって接種のスピードを上げたのか?

薬局によるワクチン配送で医師の不安を取り除く

実は当初、豊島区ではインフルエンザの予防接種を約200の医療機関が行っているのに対し、新型コロナのワクチン接種に協力したのはわずか30カ所ほどだった。

冷凍管理の難しさや廃棄への不安などから、二の足を踏むところが多かったという。それが今や、接種を行う医療機関は186カ所にまで増加。そこには、不安を取り除く豊島区独自の一手があった。

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今回、取材したのは、ワクチンを一括管理する豊島区の保健所。 保冷ボックスにワクチンを小分けし運び込んだ先は、接種を行う医療機関ではなく地域の薬局だった。 

多くの自治体では配送業者などが直接、各医療機関にワクチンを届けるが、豊島区ではまず41の薬局へ配送。そこから薬剤師たちが担当の医療機関へ届けて回るという。

めぐみ薬局 南出美佐さん:
デリケートなものなので、室温に放置してしまって、ワクチン破棄しなきゃいけなくなったというような報道があったと思うんですけれども。きちんと管理できる薬局でお届けした方が接種がスムーズに進むのではないかというところがあって、薬剤師会で積極的に関与させて頂いています。

また、薬局と医療機関は普段から付き合いが深いため…

めぐみ薬局 南出美佐さん:
診療時間を避けてお届けするようにしています。診療が忙しい時間に受け取ったりすると、放置されちゃうかもしれないですよね。

薬剤師が管理し、確かに届けるシステム。接種を行う医師は…

月本診療所 月本正院長:
ものすごく安心感がありますね。やりやすいかなと思います。

接種スピードを上げるカギの1つは、医療機関の不安を取り除き、いかに多くの協力を得るかということ。

接種率全国トップの“和歌山方式”

その最たる例が、接種率全国1位の和歌山県。

特に接種が進んでいるのが和歌山市だ。 約400ある医療機関のうち、283カ所が接種に協力している。しかも…

和歌山市新型コロナワクチン接種調整課 本間照生課長:
内科以外でも、接種に対応していただいている医療機関もございまして。例えば、耳鼻科や産婦人科、眼科、小児科もございます。

内科だけでなく、耳鼻咽喉科や産婦人科など、様々な専門の医師が引き受けているというのだ。その理由を耳鼻咽喉科の医師に聞いた。

耳鼻咽喉科はやしクリニック 林正樹院長:
薬剤に関する情報とか副反応の現在の状況とか、そういう情報を流してもらえたので、それに乗じて準備を始められた。

実は和歌山市では、接種開始の3カ月も前から速やかに進めるための調整課を発足。医療機関と情報を共有してきた。さらに、市から届くワクチンには1瓶で打てる6回分の注射器など、必要なものが全て同封されている。

星野クリニック 星野好則院長:
私たちが迅速に打てるようにこんなにやっていただいてですね。もう準備の段階から、一手間、二手間、三手間が省かれますから本当に感謝の一言ですね。

スピードアップのため、日々、注射器など大量の袋詰めを行うのは、市の職員たち。 毎日、午前と午後の2回に分け、約60の医療機関に1週間分を届けている。 

こうした行政の努力に応えるように、クリニックでも接種回数を増やす工夫をしてきた。仕切ったスペースに並ぶ6人に次々と接種していく。そのペースは1人、1分足らず。

星野クリニック 星野好則院長:
ぐっとまとめてですね、数を稼ぐという戦略をとっています。たくさんの方に受けてもらえるようなシステム作りを、各医療機関がたぶん工夫されているんじゃないかと。

自治体も汗をかき、医師が応える相乗効果。

和歌山市の医師会に聞くと、すでに64歳以下の接種を見据えていた。特に若い世代は、地域にかかりつけ医がいない場合も多く、今後は「集団接種」を広げていくという。

大変なのは「打つこと」よりも「接種の準備」

現在、個別接種を行っている長尾クリニックの院長は、別の視点からも集団接種が必要と語る。

長尾クリニック 長尾和宏院長:
(ワクチンを)打つだけだったら、それ自体は全然、簡単なんですね。準備に1時間2時間、ワクチンを溶かして希釈して…9割を準備に費やさないといけない個別接種は、とにかく準備にものすごく手間がかかって難易度が高いと思います。

例えば、完全に寝たきりの方とか、呼吸器をつけていて外せない、運べない方、個別接種しかできない人だけを個別接種にして、集団接種会場に行ける方はできるだけ…9割は集団接種で対応すべきだと思います。

今後のスピードアップのカギを握る「集団接種」。打ち手や接種会場の確保などの課題を早急に解決することが求められている。

(「Mr.サンデー」5月30日放送分より)