いよいよ5月24日から国が進める新型コロナウイルスワクチンの大規模接種が始まるが、ワクチンを打つべきかまだ迷っている人もいるのではないだろうか。

そんな中、妊婦の新型コロナワクチン接種について、日本産婦人科感染症学会と日本産科婦人科学会は12日に「接種するメリットがリスクを上回る」とする提言を発表した。
 

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提言では、現時点で妊婦への接種については十分な知見がないとしながら、アメリカのCDC(疾病対策センター)は4月24日から妊婦への接種を推奨しており、イギリスでも希望者は接種をためらうべきでないとしているなど、海外の動向をふまえ「現時点では世界的に接種のメリットがリスクを上回ると考えられる」としている。
また「妊婦をワクチン接種対象から除外しない」として、特に感染が拡大している地域では積極的な接種を考慮するよう呼びかけた。

そして、妊婦が接種する場合は、「母児管理のできる産婦人科などで接種することが望ましい」として、なるべく接種の前後に超音波検査などで胎児の心拍を確認することを推奨。
産婦人科医は、ワクチンの長期的な副反応は不明で、胎児および出生児への安全性は確立していないことを十分に説明し、同意を得てから接種を行うとしている。
 

出典:厚生労働省

一方、厚生労働省の「新型コロナワクチンQ&A」には、妊娠中・授乳中・妊娠を計画中の人はワクチン接種ができるとしながら、安全性に関するデータが限られているとして「よく検討して接種を判断していただく」という表現にとどめている。(5月19日時点)
 

学会も1月27日に発表していた提言では「安全性は確⽴していない」点を強調していたが、今回の新たな提言は、接種を推奨する内容へと一歩踏み込んでいる。
これは様々なデータが集まったということなのか?また妊婦が集団接種を利用する際の注意点は?
日本産婦人科感染症学会副理事長の早川智さんに聞いた。

「ご本人の理解が得られれば接種を勧める」という立場

――いま提言を公開したのはなぜ?

米国ではすでに10万人以上の妊婦に接種し、問題が起きていない。CDCは4月24日積極的に推奨に転じた。
英国も当初、慎重であったが、米国に習って、妊婦に積極的に接種勧奨になった。
イスラエルや米国では、接種の広がりによって、新規感染者、重症者、死亡者が激減している。
我国のみ、感染拡大が広がっている現状から できるだけ多くの方に接種を受けていただきたいと考えている。
 

――妊婦が集団接種を受ける時の注意点は?

産科のある施設で個別接種を受けられれば望ましいが、そうでない場合、特に集団接種を受けるときは、その前後(直前直後でなくてもよい)に産婦人科を受診して母児双方の検診を受けていただきたいと考えている。
普通に妊婦健診を受けていればそれでよいが、何らかの症状があればすぐに受診する。副反応などがひどい場合も電話相談か受診をしてほしい。
 

――今回の提言は、厚労省Q&Aより強く接種を勧めるもの?

まだ接種が始まったばかりで、遠い将来も絶対に大丈夫とは誰も言えない。
ただ、妊娠後半期に罹患して重症化している妊婦さんが少なくないこと、我国の都市部で感染者が増加していること、変異株は若年者にも感染し、重症化率も高いことからご本人の理解が得られれば接種を勧めるという立場である。
どうしても受けたくない方に無理に勧めるものではない。

――ワクチン接種やコロナ感染の胎児への影響で新たに分かったことは?

子宮内感染は極めて稀であるし初期に感染しても流産や奇形の原因にはならない。
ワクチンが不妊の原因となったり、胎児胎盤障害を引き起こすことはない。
妊婦全体としての重症度は変わりないが、妊娠後期に感染して人工呼吸器やECMO管理になった妊婦の報告が続いている。
今後、感染者が増えれば、一定の確率で増加する可能性がある。
 

――授乳中の母子についての注意点は?

授乳中は何の問題もない。
 

妊婦や基礎疾患のある人など、コロナワクチンの副反応が報道されるたび、神経をすり減らしている人も多いだろう。
今回は妊婦に対して積極的な接種を呼び掛ける提言だが、大きなメリットがある反面もちろんリスクもある。提言の最後では「患者さん⼀⼈⼀⼈の背景が違いますので、まずは産婦⼈科の主治医と⼗分にご相談ください」としている。