静岡県富士市には、サイダーを寒天で固めた「サイダーかん」なるデザートがあるのをご存じだろうか。シュワシュワとした食感が珍しいと今、注目を集めているのだ。

きっかけは、富士市出身の漫画家・ミツコ(@_3_2_5_)さんが5月9日、サイダーかんをテーマに描いた漫画をTwitterに投稿したこと。小学生の頃、給食で絶大な人気を誇るメニューで、休みの児童の分は争奪戦になるほどだったという。

子どもたちに絶大な人気があったという(提供:ミツコさん)
子どもたちに絶大な人気があったという(提供:ミツコさん)
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漫画では、富士市のウェブサイト「富士じかん」で公開されているレシピを参考に、サイダーかんを作る様子も描かれている。材料はサイダー、メロンシロップ、粉寒天などで、溶かした寒天液にサイダーを入れ、冷蔵庫で冷やして固めるのだという。

シュワシュワの食感が味わえる(提供:ミツコさん)
シュワシュワの食感が味わえる(提供:ミツコさん)

完成写真を見ると、そこには緑色で気泡の入ったゼリー状のスイーツが。なんともおいしそうだ。

ミツコさんが作ったサイダーかん(提供:ミツコさん)
ミツコさんが作ったサイダーかん(提供:ミツコさん)

富士市限定?「懐かしい」「知らない」

ミツコさんの投稿は、11万以上(5月14日現在)のいいねを集めたが、一方で話題となったのはこの食文化について。知っている・知らないで人々の反応が分かれたのだ。

・知っている人
懐かしい!!と、いうかコレ見てご当地メニューて初めて知りました!
マジか…これ富士市限定だったのか…給食でよく楽しみにしてたなぁ

・知らなかった人
まさかそんなのあるとは知らなかった…(近傍の〇〇市在住)
隣の焼きそばの民ですけど知らない…隣の芝生がリアルに青い…

なぜ、富士市でこのようなデザートが生まれたのだろうか。味わってみたいものだが、家庭で作るコツはあるのだろうか。富士市教育委員会の担当者に聞いてみた。

50年以上続くオリジナルデザート

ーー給食でサイダーかんが出るのは、普通なの?

50年以上にわたり、富士市の小中学校の学校給食で提供されているオリジナルデザートです。親子でサイダーかんを食べた家庭も多く、世代を超えて親しまれています。


ーー給食にはどんな場面や頻度で出る?

夏季の人気デザートとして、学校給食で提供されています。普通の献立として、7~9月ごろ、月に1回程度の頻度で提供されることが多いです。

富士市の学校給食。中央上にあるのがサイダーかん(提供:富士市教育委員会)
富士市の学校給食。中央上にあるのがサイダーかん(提供:富士市教育委員会)

ーー材料は?味や食感はどんな感じ?

材料は、水、粉寒天、砂糖、メロンシロップ、サイダーです。味はほんのり甘く、食感は寒天なのでプルプルしていますが、口に入れるとサイダーのシュワシュワが感じられます。

きっかけは昭和40年代の“家庭の味”

ーーこの食文化はいつ、どんな経緯で生まれた?

昭和40年代、富士市の学校給食栄養士だった紺野祐子さんという女性が、自身が幼少期に母親がおやつとして作ってくれたものを、学校給食に提供したのが始まりと聞いています。

当時は材料が限られ、手の込んだデザートを出すのも難しかったのですが、子供たちにさっぱりとしたデザートを出したかったそうです。「サイダーかん」という名前の由来は「サイダーの入った寒天」から来ているそうです。


ーー他の自治体でこうした食文化はある?

富士市オリジナルのデザートだと聞いております。


ーーサイダー以外の飲み物で作ることはある?

サイダーのシュワシュワ感が特徴ですので、他の飲み物を使って作ることはありません。

調理のコツは“52℃”を逃さないこと

ーー家庭で作るときのポイントを教えて。

本市のウェブサイトでもレシピを公開しており、ご家庭でも作ることができます。サイダーの泡を寒天に閉じ込め、シュワシュワした食感にするためには、寒天液が52℃まで冷めたときに冷えたサイダーを入れて混ぜるのがポイントです。

科学的な説明は難しいのですが、52℃より高いとサイダーの泡が揮発して上手に入らず、逆に低いと寒天が固まらなくなってしまいます。50年間の研究で行きついたのが、52℃です。

富士じかんではレシピも公開している
富士じかんではレシピも公開している

<サイダーかんの作り方>(富士じかんより)
1.分量の水で粉寒天を混ぜて火にかけ、よく煮溶かす。
2.砂糖を入れてさらによく煮る。
3.火を止め、メロンシロップを加え混ぜる。
4.容器を水で濡らし、3の寒天液を流し入れる。
5.寒天液の表面がうっすら固まる状態(寒天液の温度が約52℃)まで冷めたら、よく冷えたサイダーを入れてへらでそっとかき混ぜる。
6.粗熱がとれたら冷蔵庫でよく冷やして固まったら出来上がり

ーー珍しい食文化と話題だが受け止めは?

地域に根付いたデザートなので話題を集めていることに驚いていますが、富士市で育った子どもたちがサイダーかんをきっかけに、地元を見直す機会になってほしいと願っています。

 

”サイダーの入った寒天”が名前の由来だというサイダーかんは、子供たちにデザートを食べさせてあげたいと、一人の女性が家庭の味を給食で提供したことが始まりだった。今年の夏、家族で作ってみてはいかがだろうか。
 

サイダーかんの漫画はミツコさんの連載企画「おみつごはん」でも掲載している

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プライムオンライン編集部
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