「もっと規制改革について質問してほしいー」

会見後、記者にこう本音を漏らしたのは河野太郎規制改革相だ。1月に新型コロナワクチン接種の担当を兼務することになって以降、記者会見での質問は国民の関心の高いワクチン関連が多くなり、元々の業務である規制改革に関する発言をしても記者からの質問がなかなか出ない。ニュースや記事の扱いも小さくなりがちだ。そのため河野大臣は会見の冒頭で「今日は規制改革の超ビッグニュースです」と述べたり、ワクチンと規制改革の会見を別々に開いてみたりと、発信に様々な工夫を凝らしてきた。では“チーム河野”はこれまで一体、どんな規制改革に取り組んできたのか。

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チーズの規制改革に魚のオンライン診療…多岐にわたる規制改革

記者会見で河野氏の口から出てくる規制改革のキーワードは様々だ。その河野大臣の発言と共に改革の例を振り返る。

○環境省の立ち入り検査の際の45種類の身分証を一本化

「立ち入り検査のための身分証がジャラジャラいっぱいあって、重くて首が折れそうという話がありました」

○魚病のオンライン診療の認可

「魚の病気の治療をする医師が20人ぐらいしか全国にいないので、オンライン診療でできるようにしようという話をしたところ、農水省から初診は対面でというガイドラインが出そうになったので、ブリの診察をするのにいきなり『初診は対面で』ってそれはおかしいだろうと」

○地方税のカード払いの手続き簡便化

「どこで買い物をしても、クレジットカードで買い物して、入金があるまで領収書は出さないというお店は、もう今はないわけですから、これはルールとしていかがなものかと」

さらに転居時の車のナンバープレート交換を次回の車検期限まで猶予する特例措置の新設や、「空飛ぶクルマ」実現のための規制改革、チーズを製造する際の規制緩和など、会見で言及したテーマは様々だ。

こうした改革の取り組みは、行政の縦割りや規制改革に関し国民から広く意見を募る内閣官房のHP「縦割り110番」(規制改革・行政改革ホットライン)に実際に寄せられた意見や、地方自治体や民間などからの要望を元に改革の方向性を議論しているもので、これまでに下記のような規制改革が前進した。

・再生可能エネルギーに関する規制見直しの着手

・乗り合いバスなどの無人自動運転の完全キャッシュレス化

・教育現場におけるオンライン教育の活用

・歩行者用道路での自動運転バス走行

・駅前ロッカーを利用したクリーニング衣類の受け渡し

・引越しに伴う転出・転入手続きのワンストップ化の早期実現

・「空飛ぶクルマ」の実現に向けた制度の整備

「極めて由々しき事態」 政府通知の不明確さが規制緩和の障壁に

こうした改革についての河野大臣の記者会見での説明を通じて、明らかになったことがある。それは「規制緩和に関する政府から自治体への通知などに“何ができるようになり、何はできないか”が明記されていない場合、自治体は具体的な可否を判断できず“慣例に従ってできない”と解釈してしまうため、実は既に緩和されている規制が、事実上存続しているケースが多い」という実態だ。3月には記者との間で次のような質疑があった。

記者:
「できることになっていたものが明示されていなかった、というお話ですが、こういうものが多くて、ずっと続いているんですけれども、今後もこうやって一つ一つ潰していかないといけないのか」

河野大臣:
「どれが気付いていないものかがよくわからないというのが問題だと思います。先日もクリーニング屋さんがロッカーを使えないという話がありましたけれども、あれは、よくよく厚労省に聞いたら、いや、そのようなことはないと。厚労省が出している通知には、できないようなことが書いてあるけれども、これは別に強制しているわけではないという話がありましたので、できるのに気付いていないとか、できるけれどもあたかもできないように役所が装っているようなものまで、結構根っこは深いと思っています」

このやりとりの約2カ月後の4月30日、河野大臣はこうした実態について「極めて由々しき事態だ」と改めて強調し、今後の対応を検討する方針を示した。具体的にどのような手を打っていくのか注目される。

直轄チーム員がワクチン業務の助っ人も!河野氏は“神出鬼没”

こうした規制改革を行う実行部隊が、河野大臣直属の「大臣直轄チーム」だ。その働きぶりについて河野大臣は、「自治体からかなりエース級をだしてもらっていて、色んな分野で活躍をしている。なかには、ワクチン(業務)を手伝ってくれる人もいる」と述べ、取り組みの成果を強調している。

「縦割り110番」は、創設から2カ月で8400件以上の要望が寄せられたことから、2020年11月以来、受付を一時停止中だ。河野大臣が「全て処理するには10年かかる」と述べたこれらの要望だが、内閣府によると現在のところ約8400件中、約1100件が解決済みだという。

その先頭に立っている河野大臣について、規制改革を担当する内閣府幹部は「神出鬼没だ。ワクチン担当になっても、規制改革の作業部会(ワーキンググループ)に変わらず出席していて、体がいくつあるんだろうと思う。一つ一つの決断が早いからだろう」と評価する。

しかし規制改革には、各省庁の抵抗や各業界団体の事情、様々な既得権益などの大きな壁が立ちはだかっている。さらに、ひとつ舵取りを誤れば、国民生活にマイナスの影響を与える危険性もはらんでいる。「次の首相候補」についての世論調査では、ワクチンへの期待も追い風となってトップに立っている河野氏だが、本業の規制改革でも確かな結果を残し、将来の総理大臣の座により近づくことが出来るか、今後の取り組みで、その真価が問われている。

(フジテレビ政治部 首相官邸担当 阿部桃子)