客「何も言わないうちに商品すっと来る」…スタッフは常連客200人の好みを把握

名古屋を中心に40店舗以上を展開する「支留比亜珈琲店」には、こだわりのコーヒーと居心地の良さを求め多くの客がやってくる。

2015年にオープンした病院と隣接する栄生店では、創業者が唱える「喫茶店は時間と空間を売る仕事」の教え通り、診察を待つ人のために外来の診察状況がわかるモニターを設置。「診察待ちにゆっくりとコーヒーを飲む時間」を提供している。

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支留比亜珈琲店は淹れたてのブレンドコーヒーに、名物のサンドイッチ、そして落ち着いた雰囲気が人気の喫茶店だ。

女性客A:
コーヒーがおいしいですよね

男性客:
ここへ来ると落ち着く、家にいるよりも落ち着く

開店30分前の午前6時半。名古屋市西区の栄生店で、入社5年目の澤田さんが開店準備をしていた。消毒液の設置や窓の開放など、感染対策を徹底し客を迎える。

午前7時。開店と同時に客がやってくる。澤田さんは客が席に着くと、注文を聞かずにそれぞれの席にドリンクやモーニングサービスを提供していく。彼女は常連客200人の細かな好みを把握していた。

澤田さん:
パンの耳は切ってほしいとか、フレッシュ(ミルク)は使わないとか、席のこだわりも強い方も多いです

カフェオレにホットドッグが定番のこの常連客にも…。

常連の男性客:
入るとすっと(いつも頼む商品が)来るもん。何も言わないうちに。作ってあるんじゃないかと思うくらい早い

大切なのはおもてなしの笑顔…敬愛する創業者の「目配り気配り心配り」の教えを守り続ける

支留比亜珈琲店は昭和47年、名古屋市東区に1号店をオープン。以来、店内で良質の豆を挽き、ハンドドリップで淹れるコーヒー専門店のスタイルを貫いている。そのため、フードメニューもコーヒーに合う軽食だけと決めてきた。

創業者の渡辺清さんは「喫茶店は時間と空間を売る仕事」と考え、客の動向やニーズを現場で感じ取り、一人一人の好みなどを覚えていくようスタッフを指導した。

澤田さんは高校生の時、自宅近くにあった店舗の味や接客に感動し、支留比亜珈琲店で働くようになった。そんな彼女は入社以来、創業者の「目配り気配り心配りの3大配り」の教えを守っている。

澤田さん:
味も空間も大事ですけど、一番大事なのは、最大級のもてなしである笑顔で常にお客さんを見て

「客が店を出るまでが420円」と創業者に常に言われていた澤田さん。客商売では当たり前かもしれないが、それをさりげなく毎日こなすことは決して簡単ではない。こうしたスタッフの陰ながらの努力が、居心地のいい空間を作り、支持されてきた。

ちなみに、澤田さんのスマホの待ち受け画面は、創業者とのツーショット写真。社員でありながら筋金入りのファンだ。

澤田さん:
すごく大好きで、憧れているんです

チーズ香るカルボナーラを厚切りトーストの上に…一番人気の「カルボトースト」

支留比亜珈琲店は、その味も人気の理由。看板のコーヒーは、香り・酸味・コク・風味の4つのおいしさをポイントに各国の厳選された珈琲豆を配合、独自の抽出法で淹れる。

「特製ブレンドコーヒー」(420円)をはじめ、香りとコクのあるエチオピア、上品な酸味が特徴のグァテマラなどを揃える。飲み物代だけでトーストとゆで卵が付く、モーニングサービスも人気だ。

女性客B:
すごいまろやかで飲みやすい。お砂糖も一切入れないです

正午、ランチタイムで客が増えてきた。フードメニューはパン類のみだが、サンドイッチはバラエティー豊かでボリュームも満点。大きなカツとキャベツを豪快に挟んだ「三元豚のカツサンド」(720円)や、ふわふわ卵をサンドした「ハムエッグトースト」(650円)など。

中でも一番人気なのが、「カルボトースト」(700円)。ハムやマッシュルーム、玉ねぎなどを炒め、フレッシュクリームとゴーダチーズ、コクのあるソースと合わせたカルボナーラをそのまま厚切りのトーストに乗せた。

女性客C:
名物のカルボトーストも、おいしくてよく頼みます

「喫茶店は時間と空間を売る仕事」…病院隣の店には外来の診察状況わかるモニター設置

栄生店には隣接する名鉄病院で働く人も訪れる。この店舗は店の向かいにある薬局から「薬の受け取りを待つ人のために」と出店のオファーがあり、ここに店を開いた。

そして店内には、病院の外来の診察状況がわかる大型モニターも設置されている。「診察の待ち時間に喫茶店でゆっくりしてもらいたい」と名鉄病院の担当者に打診され、設置した。

定期健診に訪れた女性客D:
(待ち時間が)1時間2時間と長いと、ここに来る。リラックスできる

定期健診の女性客E:
診察の間、1時間くらい時間があるのでここで朝食

通院する人たちには好評だ。

栄生店の店長:
(設置して)よかったです。コーヒーを飲んでゆっくりしてもらって、時間を有効に使ってもらいたい

まさに「喫茶店は時間と空間を売る仕事」、そう標榜する創業者・渡辺清さんの教えに沿った地域に根差したサービスだ。

栄生店の店長は「支留比亜珈琲店は、郊外型の店舗運営が得意だが、今後は都心エリアにも出店しチャレンジしていきたい」と話す。

東海テレビ
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