バイデン大統領が就任して100日の節目に合わせる形で行われた初めての議会演説。
新型コロナウイルス対策に始まり、雇用創出、子育て支援など1時間以上にわたりアメリカが直面する課題などについて力説した。同時に、その演説の底流には一貫して「中国に勝ち抜く」というメッセージが込められていた。

施政方針演説を行うバイデン大統領
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国内向けアピールの場で異例の中国批判

歴代大統領の議会演説は、テレビのプライムタイムである午後9時に行われてきた。国民向けに大統領が自らの実績や政策をアピールする施政方針演説の場とされている。その演説でバイデン大統領は、中国の習近平国家主席に少なくとも10回言及した。

準備していた原稿は直前で大幅に加筆され、習主席を「専制主義者」と呼ぶ文言も追加された。
「彼(習主席)は世界で最も重要で影響力のある国になろうと必死だ」
「彼や他の専制主義者たちは、民主主義は合意形成に時間がかかるので、21世紀は専制主義国家には勝てないと考えている」

施政方針演説の原稿の一部 赤色で表記した部分は急遽追加された発言。中国への発言での加筆が目立つ

国内政策も、中国に勝つため

「与野党でけんかしている場合ではない、この間にも中国が力をつけているのだ!」
バイデン大統領は鬼気迫る表情で語った。バイデン大統領が力を入れるのは子育て支援予算「ファミリープラン」。200兆円規模の大型予算について、国民の教育水準を高め「中国との競争に勝つため」には一世一代の投資が必要だと強調した。

「中国対立軸」が分断の懸け橋に

バイデン大統領が次々に発表している巨額の予算案を実現するには野党・共和党の協力が不可欠だ。しかしトランプ政権時代から続くアメリカ議会の分断は根深い。党派を超えて深刻な懸念を共有する中国との対立軸を示すことで、共和党の理解を取り付ける狙いものぞく。

国際協調でも「中国」が鍵

「中国を含めすべての国が、グローバル経済において同じルールを守らなければならない」「我々は競争を歓迎するが、衝突を望んでいるのではない」
バイデン大統領は習主席に対し「国有企業への補助金や、米国の技術と知的財産の盗用などに立ち向かい、アメリカの利益を守る」と伝え、中国に釘を刺したと強調した。

そして、「現代の危機に1国で対処できる国はない。アメリカは単独ではなく、同盟国と協力して対処する」との姿勢を鮮明にした。

対中国の最前線としての日本への期待

バイデン大統領の頭にあるのが日本だ。

対面式の初の首脳会談の相手に日本の菅首相を選んだのも、対中国の最前線として日本に重要な役割を担ってもらいたいという期待があるからだ。この点について、トランプ政権で駐日アメリカ大使を務めた、ハガティ上院議員は日本に「覚悟」を求める。

ハガティ氏は地域の安全保障や人権問題での日米協力に加えて、一部の日本メーカーが中国当局の影響を受けている企業と取引をしているとして、強い懸念を表明した。情報の漏洩など経済安全保障の観点から、損失を覚悟で日米が共に立ち上がるべきであると強調する。

経済安全保障の面で、日本がどっちつかずの対応を続ければ、アメリカの不信感を増幅させる懸念がある。日本経由で中国に情報が筒抜けになると見なされれば、最先端技術などを扱う研究や開発に日本の企業が参加できなくなる恐れもある。そうなれば、国益を害するだけでなく日米同盟の結束が弱まる事態にもつながる。

日本政府は中国にどのように対峙していくのか、明確なスタンスを示すことが求められている。

【執筆:FNNワシントン支局長 ダッチャー・藤田水美】