国内で発症する脳卒中患者の人数は、年間推計約29万人。発症すれば高い確率で半身麻痺などの後遺症が残る病気と言われている。
「人生100年時代」を迎え、後遺症に苦しむ患者への支援も重要な課題となる中、ロボット技術を活用した最新のリハビリ治療がいま注目されている。
最新技術で利用者の90%が改善
尾道市・因島にある「因島医師会病院」。
脳卒中の後遺症で、半身麻痺を抱える患者の新たなリハビリとして、この病院で2017年から導入されているのが、歩行アシストロボット「リゲイト」。
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「リゲイト」は広島大学が設立したベンチャー企業と早稲田大学の共同研究で開発されたもの。
足首に装着する本体と腰に巻く制御装置をあわせても重さ2kg以下と、軽量でコンパクトなのが大きな特徴。
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広島大学大学院・弓削類教授(開発担当):
患者の歩いているところを見ると、つま先が上がらない患者が多い。適切なタイミングでつま先を上げて蹴るという動作を、歩行のなかで学習させることが重要。(利用した人の)90%くらいは歩行の改善がみられます
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靴底にあるセンサーが足裏の動きを感知し、モーターが麻痺した足のつま先の動きを自動でアシスト。
自然な歩き方に誘導し、正しい歩行を繰り返すことで、脳機能の回復をうながす仕組みになっている。
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この病院では、「リゲイト」を含む1日2時間のリハビリを、1カ月から2カ月の間、集中して取り組む入院プログラムを実施している。これまで延べ130人が利用するなど、全国の患者から高い関心が寄せられている。
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因島医師会病院・藤井温院長:
障害のある多くの患者は、どうしても社会的に孤立をしてしまう可能性がある。やはり自分の足で歩いて外出できるのは、非常に大きなメリット。ニーズは非常に高いという風に感じておりますので、コロナ禍のなかではありますが、感染対策をしながらできるだけ多くの患者を受け入れていきたい
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「やりたいことが全部なくなった…」
2021年3月、名古屋市から入院した60歳の男性。1年半前、取引先との会食の席で、突如異変が襲った。
愛知県から入院した男性:
何かおかしいと思ったら、立てなくなっちゃって、その場で救急車で運ばれて…このまま死ぬのかなというような感じ
診断の結果は「被殻脳出血」。
手術はせず、命に別条こそなかったものの、右半身に重い麻痺の障害が残った。
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愛知県から入院した男性:
ある日突然、全てが奪われる感じ。手も動かない、足も動かない。感覚自体が全くなかった。引退したらお茶をやって、スキーも行って、楽しいことをいっぱいやりたいなと思ってたら、それが全部なくなった。これは自分のなかでは想像を絶すること
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地道なリハビリを重ね、短い距離なら杖を使って歩けるまで回復したが、外出をするときなどはいまも車イスが欠かせない。
"希望を持たせてくれる”ロボット
日常生活を少しでも早く取り戻すために選んだのが、この「リゲイト」だった。
「リゲイト」のもうひとつ大きな強みは、タブレット端末を使って、患者の状態に合わせてオーダーメイドで設定ができること。
担当の理学療法士が、リハビリの効果を最大限発揮できるよう調整を行っている。
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愛知県から入院した男性:
(ロボットが)助けてくれているから、つまづきがない。何にもしなくても、すっと足が前に出てくる感覚はある
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今回の入院で初めて「リゲイト」を体験したこの男性。
入院時と退院時に撮影した歩く様子を比べてみると、入院時は麻痺のある右足が前に出にくく、筋肉の緊張による足の震えも確認されていたが、1カ月のリハビリで足の運び方や姿勢が改善し、歩くスピードも上がってきていることがわかった。
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愛知県から入院した男性:
何回練習をやっても、何もなしだと変わりないというケースも多いですから、小さな動きだけでも、もし変化として出ていたら、僕らにとってはものすごく大きな変化。希望ですよね
入院から1カ月、「因島医師会病院」を退院した男性は、広島大学で脳の活動状況などを測定する検査を受けた。
ロボットのリハビリによって、脳の機能がどの程度回復したかを科学的に検証し、一般的なリハビリとして広く活用できるよう普及が目指されている。
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愛知県から入院した男性:
(リゲイトは)長く履けば、きっと足が動いてくれるんじゃないかという希望を持たしてくれるロボット。自分が通っているリハビリの病院でも、誰でもが使えるようにぜひ開発してほしい。どこにでも歩いて行けるよという風になれれば、生きていく望みが出てくるかな
(テレビ新広島)