地元・神奈川トークで始まった宇宙との交信

菅首相は20日、首相官邸で国際宇宙ステーションに滞在中の野口聡一宇宙飛行士と交信した。交信には、萩生田文科相と井上科学技術相、それから進行役として、22日に宇宙に滞在予定の油井亀美也宇宙飛行士も同席した。地元・神奈川トークで挨拶を交わした両氏。菅首相が宇宙にいる野口氏へ尋ねた最初の質問はどのようなものだったのか。交信の全文を紹介する。

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「成果を日本のこれからの宇宙開発に還元していきたい」

野口宇宙飛行士 :
日本の皆さんこんばんは。そして油井さんお疲れ様です。今日は総理はじめ皆さんとお話できることをとても楽しみにしております。 

菅首相:
野口さーん!総理大臣の菅です。半年間にわたる長期滞在、大変疲れさまでした。お元気なお姿を拝見できて、安心してます。民間人宇宙船に米国人以外で初めて、搭乗されたことは、野口さんのこれまでの努力と実績、そして国際宇宙ステーション計画への貢献が高く評価された結果だと思ってます。野口さんは横浜で生まれて、神奈川県ご出身ということでありますけども、今回の船外活動で、日本人として、最多最長記録を更新するなど、地元も大変盛り上がってます。今月末には帰還されると聞いてますけれども、貴重な体験を、お聞かせください。楽しみにしてます。

野口宇宙飛行士 :
総理、本日はお時間いただきまして本当にありがとうございます。また先日のアメリカでの首脳会談、大変お疲れ様でございました。総理と同じように私も神奈川県には大変ゆかりが深くて、あの総理の神奈川2区のね、お隣の磯子で暮らしておりましたので総理のご活躍は以前から拝見しておりました。神奈川県の皆さん含めて日本の皆さんに、今回のこの宇宙滞在の様子をずっと応援していただいてとても嬉しく思っております。また日本人として初めてこの民間企業が開発した宇宙船で、この国際宇宙ステーションに来ることができたの大変嬉しく思っておりますし、この成果をぜひ日本のこれからの宇宙開発に還元していきたいと思っているところです。今日はよろしくお願いいたします。 

“有人探査の意義”について野口氏は…ジョーxヨシ会談を引き合いに

菅総首相:
先週、アメリカを訪問しまして、バイデン大統領と首脳会談を行いました。新たな国際宇宙船探査計画、アルテミス計画を協力して進めていくことで合意しました。次は火星で人類が活動する時代を見据えて、改めて、有人での宇宙探査の意義などを教えていただければありがたいです。 

野口宇宙飛行士:
総理、ありがとうございます。我々JAXAはこの国際宇宙ステーションや様々な国際宇宙科学プロジェクトで、様々な知見を集めてまいりました。この有人宇宙活動を含む宇宙活動を牽引して、貢献していくということは、科学技術の発展、そして外交的なものはもちろんとして、未来の繁栄に向けた投資であり、また、若い世代を鼓舞して次の世代を担う人材を育てていくという意味でも大きな意義があると思います。今、総理が言及していただきました、アルテミス計画、まさにこの2020年代そして30年代に向けて、日本はもちろんアメリカ、そして世界中の国が一丸となって進める大きなプロジェクトだと思います。 

いつかはですね、月面で日本人宇宙飛行士が各国の飛行士と一緒にハンバーガーを食べながら話ができる日がくるんじゃないでしょうか。 

地上も宇宙もシームレスに繋がる時代へ

続いて、科学技術を担当する井上科学技術相が宇宙のリモート・デジタル化について質問し、野口氏は、「究極のテレワークで仕事中だ」と述べた上で、ファックスなどで交信した過去の滞在を振り替えり「デジタルの世界ではまさに地上も宇宙も、いつもシームレスに繋がる時代がまさにやってきている」と述べた。

井上科学技術相:
宇宙政策担当大臣の井上信治です。野辺さん、本日はこうして宇宙におられる野口さんと自然にお話ができていますけれども、宇宙分野についても、リモート化、デジタル化が進んでいるんだなっていうことを改めて実感をしています。今回の滞在中、野口さんはSNSを使って頻繁に動画やメッセージを宇宙から発信していただいています。私も含めて、多くの国民がその配信を楽しんでいます。 デジタル化、また科学技術の発展によって、地上と宇宙の距離は大変近づいたと感じてます。野口さんの宇宙滞在をも大きく変えたんではないかと思いますけれども、過去の宇宙滞在と比べてデジタル化、また科学技術の発展を実感する何かエピソードがあれば教えてください。 

野口宇宙飛行士 :
井上大臣、本日はお時間いただきまして本当にありがとうございます。また平素より宇宙政策に関して様々なご指導いただき本当にありがとうございました。今、まさにご紹介していただきました通り、この国際宇宙ステーションから様々な形でいろんな情報発信させていただきました。我々は、ある意味、究極のテレワークとして地上と離れたところで仕事をしておりますけれども、離れているからこそ、やはりコミュニケーション力、発信力というのが求められるなと。このいろいろなIT技術を活用して、我々発信することができるようになってるわけですけども、むしろこの発信力があるかないかの差が如実に出てしまうなという意味ではすごく怖い時代にもなってるかなと思います。情報格差、デジタルデバイドと言われますけれども、逆に自分が発信力があればどこまでも伸びていきますけども、発信力がないとですね、変わらないということで、そういう意味で我々宇宙飛行士もこれから国民の皆様にいかに直接、話をしていくかと、気持ちを届けていけるかというところが求められるかなと思います。過去3回のフライト比べても最初のスペースシャトルときには我々ファクシミリを使って情報をやりとりしてたんですね。で、2回目のときには電子メールと後、初めて私ツイッター宇宙からやりましたけども、今回はいよいよ動画配信ということで、デジタルの世界ではまさに地上も宇宙も、いつもシームレスに繋がる時代がまさにやってきていると思います。 

時代の宇宙飛行士を募集!必要な素養を野口氏に質問

最後に質問した萩生田文科相は、次世代を担う宇宙飛行士を今後複数名募集することを明かした上で、宇宙飛行士を目指す人へのメッセージを求めた。

萩生田文科相:
野口さん文部科学大臣の萩生田光一です。出発前にもオンラインでお話をしましたけど、こうしてISSとですね、直接お話ができることを大変光栄に思っております。冒頭、菅総理からもお話がありましたけれども、先日、日米の首脳会談でアルテミス計画改めてしっかり協力していこうという確認をしてくれました。これから先ですね、月や火星に向かって日本人宇宙飛行士が活躍する機会っていうのも、増えてくると思います。今年の秋ですね、久しぶりに新しい宇宙飛行士の募集を複数名しようと思ってます。財務省との調整があるんで複数名としか言えないんですけれど、しっかりですね、次の時代を担う宇宙飛行士の皆さんを募集をしたいなと思ってます。

オンライン対談
オンライン対談

この映像をですね、多分多くの皆さんも見てると思います。野口は先週、ISSで誕生日を迎えられて、いよいよおじさんチームにどんどん入ってきてですね、若田さんも含めて50代後半になりました私も同世代です。国家公務員で言えば間もなく定年の年なんですけれど宇宙飛行士には定年がないと思いますんで、まだ頑張ってもらいたいんですが、これから先、宇宙飛行士を目指す若い人たち、どういう経験を持った人が宇宙飛行士に応募したらいいのか、あるいは次世代の宇宙飛行士の皆さんに、野口さんからどんなことをお伝えしたいか、ぜひ宇宙からお伝えいただければと思います。 

野口宇宙飛行士 :
大臣、ありがとうございます。また出発前には激励いただきましてその際は本当にありがとうございました。大臣とは、大臣が青年局長の頃からお世話になっておりますけども、お互いに今はもう青年とは言えない年齢になってまいりましたが、まだまだ気持ちは青年のつもりで頑張っていきたいと思います。 

ご紹介いただきました通り、我々JAXAは今年、新しい世代の宇宙飛行士を募集することになっておりますので、アルテミス計画ももう目前に迫っておりますし、やはり日本人が月面で活躍するために、新しい世代の人たちにはぜひ頑張っていただきたいと思います。私自身もまだまだ定年までね、あと何年かありますので、月面というかですね月を目指してまだ挑戦は続けていきますけれども、新しい世代の宇宙飛行士には、もう本当に月・火星、そういった国際宇宙探査が彼らのメインの活躍の場所になると、そういう意味ではこれまで我々が培ってきた経験だけではカバーできない世界にどんどん出ていきますので、幅広いバックグラウンドを持った人たちの応募、そして、彼らがこの宇宙での活躍に関してもっと興味を持っていただいた上で、さらにですね、先を目指していくと、これまでにない景色をぜひ彼らには見てほしいと思います。 

 “日本も主体的に世界に貢献”野口氏にエール

菅首相: 
宇宙のフロンティアの開拓はまさに永遠の挑戦だと思います。今後、星出飛行士をはじめ、ますますのご活躍を期待をしてます。日本政府としても、主体的な役割を担い、世界に貢献をしていきたいと思ってます。野口さん、地球へ帰還が迫ってますが、残るミッションの成功と、そして無事に帰還されることをお祈りいたしております。地上でも、お会いするときを楽しみにしてます。最後に日本の皆さんにメッセージを送ってください。 

野口宇宙飛行士 :
総理、ありがとうございます。本日はお時間いただきまして本当にありがとうございました。このような形で、皆さんと直接お話できたことをとても良い思い出にしたいと思います。日本の皆さん、半年間の宇宙滞在の間、いろいろな形でご指導、そしてお会いいただきまして、本当に嬉しかったです。ありがとうございました。 

私の後はですね、星出飛行士がすぐ参りますし、さらに若田飛行士、古川飛行士も活躍の場を控えています。さらに、今年募集する新世代の宇宙飛行士も次に控えていると思います。これまで活躍していた油井飛行士、大西飛行士、金井飛行士といった若手の飛行士も含めて、まだまだ日本人宇宙飛行士、頑張っていきたいと思いますので、引き続き応援のほどよろしくお願いいたします。本日はどうも、ありがとうございました。 

(フジテレビ政治部・阿部桃子)

阿部桃子
阿部桃子

ニュース総局政治部 平河クラブ 自民党茂木幹事長担当。1994年福岡県生まれ。慶應義塾大学法学部卒業後、2017年フジテレビ入社。安倍元首相番や河野規制改革相など経て現職。