コロナ禍で2度目のラマダン

イスラム教徒はコロナ禍での二度目のラマダンを迎えている。

ラマダンとはイスラム教徒の用いるヒジュラ暦の九番目の月で、その一ヶ月間は日の出から日の入りまで飲食などを慎むなどする斎戒が命じられる。それだけならばコロナ対策には抵触しない。問題は、ラマダン月には多くの信者が集って食事をしたり、いつもより長い時間をかけて礼拝をしたり、親族が集ったりする慣習や儀礼があることだ。

ラマダン月はいつもより長い時間をかけて礼拝
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コロナ感染を予防するためには、集会や不特定多数での共食は厳禁とされる。ゆえに昨年のラマダン時期は、多くのイスラム諸国でモスクを閉鎖する措置がとられた。しかし今年はそこまでの厳戒態勢はとっていない国が多い。それらの国では、モスクに入る人数を制限したり、隣の人との距離をとって礼拝をしたりすることで対策をとっている。

隣の人との距離をとって礼拝

もうひとつ、今年のラマダンと昨年との違いは、オンラインで様々な「サービス」が提供されるようになったことだ。指導者がオンラインで説教をしたり、オンラインのイスラム勉強会が開かれたりもしている。

イスラム過激派がテロ活動を活発化

ラマダン月には、信者は斎戒を破らないようにことのほか気を使う。ほとんどのイスラム諸国では既にコロナ・ワクチンの接種が開始されているため、各国の宗教当局や宗教指導者は、ワクチン接種が斎戒破りにはあたらない旨を通知した。一方、飲食を断たなければならない日中は体力が低下するため、できるだけ夜間に接種するようにとも推奨している。

ラマダン月は特に善行が推奨される月でもあり、神の敵との戦いであるジハードを最高の善行と考えるイスラム過激派がテロ活動を活発化させる月でもある。

「イスラム国」はラマダン開始後の4月14日からの1週間に全世界で63回の「作戦」を実行したと発表したが、これはその前の週の43回の約1.5倍だ。ニジェール軍を襲撃して大量の武器を「戦利品」として手に入れたり、イラクの首都バグダードで自爆テロを実行したりと、各々の「作戦」も大規模だ。

4月18日にはエジプトのシナイ半島を拠点とする「イスラム国シナイ州」が、コプト教徒1人と地元の部族民2人を殺害する動画を公開した。動画にはリーダー格が戦闘員らに対し、神の道において敵と戦うジハードはイスラム教徒の義務であり、ジハードで殉教した者には楽園行きが約束されている、と繰り返し述べるシーンも映っている。

攻撃を強化しているのは「イスラム国」だけではない。4月22日にはパキスタンのクエッタのホテルを標的とした自爆テロが発生、パキスタン・タリバン運動が犯行声明を出した。声明にはホテルの警備員を狙ったとあるものの、当時同ホテルには駐パキスタン中国大使が宿泊中だったため、彼を含む中国使節団を狙ったのではないかとも疑われる。

4月23日にはフランスで、チュニジア出身のイスラム教徒移民がランブイエの警察署を襲撃、「アッラーフ・アクバル(神は偉大なり)!」と叫びながら女性の首をナイフで刺して殺す事件が発生し、当局がテロ事件として捜査を開始した。

襲撃事件が発生したランブイエ(4月23日)

悪趣味娯楽番組の是非

ラマダン月にはテレビの娯楽番組やドラマが充実するのも特徴だが、今年はイラクで放送されているドッキリ番組が悪趣味だと話題になっている。これは有名人に「イスラム国」の被害にあった家庭を訪問させ、そこに偽のイスラム国戦闘員が現れてその有名人を脅す番組だ。視聴者はドッキリだとわかって見ているが、それを知らない有名人たちは必死の形相で命乞いをする。腰にニセの自爆ベルトを巻かれて失神した女優もいる。

女優が失神したドッキリ番組の一場面(ロイター配信映像より)

今も「イスラム国」テロが絶えない中、このような番組をラマダンの娯楽として消費することの是非については、イラク人の中でも意見は分かれている。

【執筆:イスラム思想研究者 飯山陽】