超党派の「日本チベット国会議員連盟」(下村博文会長)は4月27日、国会内で総会を開き、安倍前首相が「顧問」に就任することを決めた。議連は中国などによる人権侵害などを非難する国会決議の採択を目指している。
この記事の画像(3枚)今回の総会は、「チベット亡命政府」のセンゲ首相の退任に合わせ、センゲ氏とオンライン対話を行う形で開催された。冒頭に挨拶した安倍前首相はセンゲ氏に対し「チベットの人々の生活の向上と人権状況を改善するためにネットワークを生かしながら大変な尽力をしてこられた」と敬意を評した上で、次のように述べた。
「私も中国との首脳会談の折にはチベットの人々への人権状況を改善するよう呼びかけてきたところだが、残念ながら改善がなされていないという中において、私は総理を既にセンゲ首相よりも早く辞任しているが、これからも一議員として議連の皆さまと共に国際社会と連携しながらチベットの状況を改善するために努力をしていきたいと思う」
このように安倍前首相は、在任時に中国政府に対しチベットの人権状況の改善を呼びかけてきたことを強調した上で、今後も一議員としてこの問題に取り組む意向を示した。
議連の会長を務める自民党の下村政調会長は、およそ10年前にチベットの指導者ダライラマやセンゲ首相と面会した際のエピソードを紹介し、「是非これからもチベットの皆さんのためにも、我がこととしてしっかりとサポートしながらまた共に活動させていただきたい」と強調した。
その上で下村氏は、チベット、ウイグル、内モンゴル、香港、ミャンマーなどでの人権侵害行為を非難する国会決議の採択が調整されていることについて、議連として「まとまって行動をお願いしたい」と述べ、改めて非難決議の採択に意欲を示した。
またチベット問題に取り組んでいるジャーナリストの櫻井よしこ氏は、「中国はとても大切な国だ。隣国で大きな国ですから私たちは出来得る限りよい関係を築き、それを維持していきたいと願っている、それは当然のことだ。しかし、その関係の中でやはり守るべき価値観というものはお互いに守らなければならない、守っていただかなければならない。それは人権であり、自由であり、民主主義であり、法の支配であり、みんながなるほどと納得する価値観だ。安倍総理はこれをインド太平洋戦略の中で本当に見事に表現された。チベットに対しても中国は人権、人道、法の支配、人間の常識そうしたものを尊重すべきだ」と訴えた。
会合では、安倍前首相が議連の顧問に就任することが決定された。首相在任時は中国との関係修復に努めてきた安倍前首相だが、今後、人権など個別の問題では、中国に厳しい立場を示していくものとみられる。
(フジテレビ政治部 門脇功樹)