足の血管の病気で、患者は国内に1,000万人以上。コロナ禍の外出自粛で発症する人も多い「下肢静脈瘤」という病気。
一体どんな病気なのか、最新の治療法と共に取材した。
これはある男性の足を撮影した写真。足の血管がボコボコと浮き出ているのがわかる。
この記事の画像(14枚)のぐち血管外科クリニック・野口康久院長:
「下肢静脈瘤」という病気で、非常に多くの方が持っています。足に余分な血液が溜まりだして、血管が当然ブクッと圧力かっかて膨れてくるので、ボコボコした血管が出てくる
下肢静脈瘤を経験した人:
右足ですね、この辺(ふぐらはぎあたり)が全部血管がブクブクになって、夜中にこむら返りとか、ゴルフしたときに後半は打った瞬間に歩けなくなるんですよ
7割以上の人に「下肢静脈瘤」
国内に1,000万人以上の患者がいると言われているこの病気。
のぐち血管外科クリニック(石川・金沢市直江南)では、血管やリンパの病気を専門としている。
圧倒的に多いのが、血管が瘤のようになる下肢静脈瘤の治療。
のぐち血管外科クリニック・野口康久院長:
みなさん、大なり小なり7割ぐらいの人がお持ちになっている方が多いですね。気づいてなくて全く症状のない人もいれば、見た目だけの人もいますし、意外とあまり見た目がひどくなくても症状がものすごく強い人もいます
全身から心臓に戻る血管「静脈」には、重力に逆らって血液を運ぶために逆流防止弁が付いている。
さらに筋肉が収縮することで、ポンプの役割を果たし、血液を押し上げる。
しかし逆流防止弁が機能しなくなったり、筋肉のポンプ作用がうまく働かなくなると、血液が逆流して血管の下の方に溜まり静脈瘤となる。
悪性ではないが…悪化することも
痛みそのものはあまりないが、足の疲れやこむら返り、むくみやかゆみなどといった症状がある。
のぐち血管外科クリニック・野口康久院長:
悪性腫瘍とか悪いものではないので、放っておいても命に関わることはないんですけど、1つ厄介なのが、ずっと放っておくとひどくなります。一番困るのは足に「皮膚潰瘍」といって、皮膚に穴が開いてしまって出血したりとか、ばい菌が入る場合がある。こういうのになると、原因の静脈瘤を治してあげないときれいに治らないというのが現状
下肢静脈瘤は、特に長時間立ち続ける仕事の人や筋肉が衰えた高齢者、逆流弁が弱くなっている妊婦などが発症しやすい傾向にある。
最近はコロナ禍による外出自粛で運動不足となり、発症する人も増えているそう。
のぐち血管外科クリニック・野口康久院長:
足を動かしている時に筋肉の力で血液の戻りって良くなるので、意外と症状がぼやける方がいるんですけど。ゴロゴロしていたりとか、寝てばっかりとか座ってばっかりいると、意外とこういう症状が表立って出てきて、見てみたら出来ている…そんな方が結構多いかもしれない
2019年に手術を受けた会社員の早川健三さん、62歳。右足のふくらはぎにできた静脈瘤に全く気がつかなかった。
下肢静脈瘤を経験した・早川健三さん:
子どもが僕の足見て、ちょっと汚いよと言われたんですよ、それで気がついた
日常生活に大きな支障はなかったと言いうが。
下肢静脈瘤を経験した・早川健三さん:
短パンとか夏場足を出すのが嫌だったですね。ちょっと恥ずかしかったです
手術で静脈瘤を切除した早川さん。早めの手術を周りに呼びかけているそう。
下肢静脈瘤を経験した・早川健三さん:
もっと早くいけば良かったと思いました。私の姉とか友達の奥さんとか、やっぱりなって紹介しましたから、みんなもう楽になってます
「接着剤」使う画期的治療法を導入
こうした中、より患者への負担が少ない画期的な治療法が3月から石川県内にも導入された。4月14日、下肢静脈瘤の手術を受けに来たのは60歳の男性。
まずは静脈瘤のある右足に部分麻酔を行う。するとここで、「接着剤」入れていく。
新しく導入されたのが、静脈瘤のある血管を接着剤でくっつける「グルー治療」と呼ばれる手術方法。
従来は静脈瘤のある血管を切除して引き抜く方法や、レーザーで血管を内部から焼きつぶす方法が一般的だった。
しかしグルー治療では、接着剤で静脈内の血管を塞ぐため、痛みや出血がほとんどなく、患者の負担も少ない。
ーー血管ふさいで問題はない?
のぐち血管外科クリニック・野口康久院長:
基本的には害はないです、体には。足の真ん中に、1本太い深部静脈という血管が走っているので、そこが生きていれば人間の体には何の害もないです
手術時間は約30分。このグルー治療、2019年から保険が適用され、治療費は片足で約4万5,000円。※3割負担の場合
術後はすぐに歩いて帰ることができる。
手術受けた男性:
4、5年前に左足を同じような治療してまして、血管取ってしまうみたいな方法で
ーー痛みとか全然違う?
手術受けた男性:
やっぱ全然違いますね
のぐち血管外科クリニック・野口康久院長:
当然放っておけばおくほど進行していきます。なのでひどくならないうちにやる方が、足をいい状態で保てるというのも事実。
放置すると、血栓症などにつながる実は怖い病気の下肢静脈瘤。早めの治療が大切となる。
(石川テレビ)