最大震度7を観測した熊本地震が発生して、2021年4月15日で5年。
あの日の記憶を忘れず、自らの仕事に生かすため、現地に何度も足を運ぶ鹿児島市の職員がいる。市民の命を守るため、伝えたいこととは…

自分の目と耳で…市職員の思い

山内博之さん:
一番恐ろしいのは、家の真下に(断層が)走っていることですよね

熊本県益城町 2021年4月
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熊本地震で大きな被害を受けた熊本・益城町を、1人の男性が訪れていた。

山内博之さん(44)。
鹿児島市の地域福祉課に勤務し、主に避難所の整備を担当している。

山内さんが大切にしているのは、自分の目で現場を見て、自分の耳で被災者の声を聞くこと。

山内博之さん:
みんなで災害に備えていけるように伝えていければなと

山内さんが鹿児島市の職員を目指すようになったきっかけは、1993年 鹿児島市などに大きな被害をもたらした8・6水害だった。

山内博之さん:
(8・6水害のとき)私が当時高校生でしたけど、近所で発生した土砂崩れによって子どもが生き埋めになったと。私も救出活動に加わったんですけど、結果的に亡くなってしまって。それを助けられなかったという後悔とか無念がずっと残ったような感じです

1993年 8・6水害 当時の写真

「災害から1人でも多くの命を守りたい」

山内さんは、これまでも東日本大震災で姉を亡くした女の子の写真展を企画するなど、被災者の痛みを伝える試みを続けてきた。

4歳娘が手術に成功 その矢先、入院中の病院で地震が…

そんな山内さんが4月に訪ねたのは、熊本・合志市に住む女性だった。
宮崎さくらさんは、当時4歳だった娘の花梨ちゃんを熊本地震の本震、5日後に亡くした。

花梨ちゃんは生後間もなく重い心臓病を患い、入院生活を送っていた。
熊本市内の病院で受けた手術は成功し、家族に希望の光が差し込んだ矢先だった。

2016年4月、最大震度7を観測した熊本地震が発生。入院していた病院は2回の大きな地震で傾いた。

「倒壊の恐れがあるため、福岡の病院へ転院を」

「倒壊の恐れがある」入院中の病院で…

主治医からそう告げられた。
心臓病を患い、手術後数カ月しか経っていない4歳の花梨ちゃんにとって、移動はかなりの負担だった。
福岡に到着後、容体が悪化。そのまま花梨ちゃんは帰らぬ人となった。

2016年1月に撮影された、花梨ちゃんの生前の映像。

花梨ちゃん(当時4歳):
退院したら、一緒に遊ぼうね。おもちゃでいっぱい遊ぼうね。ばいばい

「一緒に遊ぼうね」

病院の耐震構造がしっかりしていれば…
合志市は、花梨ちゃんの死を「災害関連死」と認めた。

宮崎さくらさん:
関連死って防げる死といわれるじゃないですか…。「二度と」、本当に二度とですよね。同じことにならないようにしないと、やっぱり浮かばれない

山内博之さん:
せっかく災害から逃れたのに、その後に命を落とされてしまうというのは、本当にあってはならない

“災害関連死”は防げる 命を守るため語り継ぐ

熊本地震の死者は273人。
そのうち、災害関連死で亡くなったのは223人にのぼる。
関連死の中には、避難所に入りきれずに車中泊が原因で亡くなった人も多くいる。

車中泊が死の原因にも…

はたして鹿児島市内の避難所の環境は十分なのか。

山内さんは、梅雨末期の大雨で一部の市民が避難所に入りきれなかった鹿児島市の2019年7月の事例などを元に、避難所の環境や運営のルールづくりに力を入れている。

山内博之さん:
被災された方の気持ちに寄り添いながら犠牲者をなくすことが私の思いでもありますので、ほかの人への防災教育というのを充実させていきたいと考えています

山内さんは市民の命を守るために、これからも各地の被災地に足を運び、防災の大切さを語り継いでいく。

(鹿児島テレビ)