「今、ロンドン、ニューヨーク、香港というのが美術品のマーケットの3大市場ですけども、是非日本もアジアの美術品マーケットの一つのコアに育てていきたい」

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FNNの取材に対してこのように語った河野太郎規制改革相。世界のアート市場は約10兆円といわれ、そのうち香港は2割にあたる約2兆円の規模を誇る。一方、日本は香港の10分の1の2000億円程度だ。世界第3位の経済大国で、100万ドル以上の資産をもつ富裕層の数も世界トップ3であるにもかかわらず、アートの市場規模が非常に低い。この状況を打開し、“日本を世界のアート市場のハブにする”。今、そんな可能性を秘めた規制改革が進んでいる。

3月27日、東京・有楽町にある現代アートを展示するギャラリー「CADAN」を視察した河野大臣に、この改革の狙いを聞くと、河野大臣は壮大な未来予想図を披露すると共に、中国政府の圧力により激変する香港情勢も関係していることを明かした。その単独インタビューの詳報をお伝えする。

「保税ルール」に厳しい日本と香港

ーー2020年12月にとある規制改革をされましたね。

河野大臣:
「今まで日本は、保税に関するルールが非常に厳しかったんですけれども、財務省の協力をいただいて、保税地域が比較的緩やかになんでもできるようにルールを変えさせていただきました。香港は非常に保税のルールが緩いものですから、そこへ海外から美術品を持ってきて展示をしたり、そこでオークションをやって売買が行われて、保税地域から外に出せば一切香港に税金を払う必要がないというのが香港でした。それに比べて日本は、非常に保税のルールが厳しくて、保税地域のなかでオークションができなかったり、保税地域に持ち込んだものはいつまでに持ち出さないといけないというようなルールがあって、香港のように自由に保税地域で展示をしたりオークションをやったりということができなかったんで、アジアではやっぱり美術品の市場は香港が中心というのは、保税のルールによるところが非常にこれまでは大きかったんですね。今、そういうことを一生懸命やっています」

ーー今訪れているこのギャラリーも「保税地域」に指定できるのでしょうか?

河野大臣:
「ルールは(2020年12月に)変わりましたんで、これから日本の画廊さんたちに頑張ってもらって、街中でも保税地域に指定することもできますし、空港や港のそばの今までの保税地域の中でオークションもできるようになっています。どんどんやりたいと思っています。コロナも収まれば、海外から色んな画商、画廊に出てきて貰いたいと思います」

これまで、美術品のギャラリーやオークション会場に海外から美術品を持ちこみ展示・販売する際は、高額な税金を払う必要があった。例えば、10億円の美術品を売買した場合には、消費税が1億円かかる。外国へ持ち出す際は、還付を受けられるが、いったん11億円を払わなければならず、そこで1億円余計なお金を動かさなければいけないというのが、事業者にとっては大きなネックになっていた。そこで、2020年12月から、ギャラリーなどを免税店のように税金を保留できる「保税地域」にすることを可能にし、高額な税金の支払いを一旦不要にした。香港でできていることが、日本でもできるようになったのだ。

世界的メガギャラリーのトップと河野氏がオンライン会談

この改革を通じて河野大臣が狙うのが、メガギャラリーなど世界的アートコミュニティーの日本進出と海外の美術品コレクターの来日による経済効果だ。世界の2大オークション会社である「サザビーズ」や「クリスティーズ」、そして世界3大ギャラリーといわれる「ガゴシアン」、「ペース」、「ハウザー&ワース」はいまだ日本に進出していない。

今回の規制改革をきっかけに日本進出を狙う米・「ペース」社のマーク・グリムシャーCEOと河野大臣のオンライン会談を独占取材した。グリムシャー氏は、日本のアート市場は、規制などのハード面と、海外のアートコミュニティーとの繋がりが弱いというソフト面の双方により、市場がなかなか発展しなかったことを指摘した。その上で、「今回の規制改革で、日本のアート市場は見逃せなくなった。是非日本を訪問し進出を検討したい」と期待を寄せた。さらに河野大臣は、アート市場の活性化に向けて描いている未来図と、中国政府の圧力により激動している香港情勢との関連について語った。

香港激変を踏まえ次世代アーティスト発掘とインバウンド拡大へ

ーー今回の規制改革で、アートの市場が広がっていく可能性を秘めていますが、どんなことを期待していますか?

河野大臣:
「今、香港の一国二制度というものが失われていく中で、いままで香港でやっていたことを日本でやれるようになれば、多くの方が日本にきて美術品の売買をするだけでなく、日本の国内色んなところを観光してまわるということもそれに加えてできるんだろうと思います。

瀬戸内が現代美術で観光客を集めることに成功していますし、石川・金沢でも色んな試みが行われていますから、美術あるいは現代美術というものがインバウンドにとって一つの大きな鍵を握るということになると思います。これは東京だけではなくて全国でそういうことが行われていけば、色んなところの地域振興にも繋がると思います」

「また、新しいアーティストを皆で発掘してそれを育てていくということもこれから必要になっていくんじゃないかなと思っております。保税のルールを変えることによって、海外からの画廊が進出してくる、画商がでてくる或いはアートバーゼルのような一大展示会が日本国内で行われていくということになれば、新しい若いアーティストが日本でも光が当たって、さらにそういう人が世界でその価値を認めて貰える、第二の草間彌生さんみたいなのが発掘されていくというようなことになったらいいなと期待しています」

ーー一方で課題はどこにあるとお考えですか?

河野大臣:
「今までなかなか日本でそういうことが行われていませんでしたから、例えば、美術品を安全に梱包して運んでいく、そういう一連のインフラを整備していかないといけないと思っています。いままで日本というのは、例えば美術品を動かすにしても、非常にコストが高いといわれていましたんで、それを競争によってコストを引き下げていくということはこれから大事になっていくと思います」

文化庁も動きを加速 アート振興のための初の報告書

文化庁も動きを加速させている。2021年3月末、アート市場を活性化させるための報告書を初めてまとめ、今後、新国立美術館の認知強化や若手アーティストの支援拡充、国際的アート人材の育成、鑑賞教育の充実などを検討していくという。文化庁の担当者は、「文化庁はこれまでもアート振興について取り組んできたが、今回の規制改革を皮切りに、社会全体がアートに関心をもってもらうには政策として何が必要なのか明らかにしていきたい」と強調した。

香港などのライバルと争い、世界の美術需要を呼び込めるか---。今後、取り組みの真価が問われそうだ。

(フジテレビ政治部 阿部桃子)