ミャンマー国軍によるクーデターと民主派市民への武力弾圧が国際的問題になる中、今、日本の政府与党がミャンマーへの制裁に関してジレンマに陥っている。その背景にはあの隣国の存在がある。

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自民党部会はミャンマー国軍に圧力かけるも「制裁」は否定

自民党は3月30日、外交部会と外交調査会の合同会議を開き、ミャンマー国軍への非難決議をとりまとめた。会合の冒頭で、ヒゲの隊長こと佐藤正久外交部会長は、次のように述べた。

「ミャンマーの国軍記念日3月27日の際におけるデモに対する発砲、報道では100名以上の方が犠牲になった。情勢は深刻の一途をたどっていると言わざるを得ない。国際社会からも多くの非難が寄せられ米国が新たな制裁をかけ、茂木大臣からも初めて直接的に非難をするという形の談話が出されました」

このようにミャンマー国軍に対する厳しい認識を示した佐藤部会長。国際社会では、アメリカは対抗措置としてミャンマーとの貿易協定停止という制裁を発表し、EUも軍幹部への制裁を打ち出すなど厳しい措置をとっている。そうした中で佐藤部会長も強硬姿勢を示すかと思いきや、次のように制裁には慎重な姿勢を示した。

「ミャンマーを民主化プロセスに戻すということ、そして中国側に追いやらないというこの連立方程式を解くためにも、やはり日本はASEANやインド等との外交努力というものをさらに強化すると同時に、制裁ではない実効性を持った強いメッセージを出すことは重要だと私は考えます」

佐藤部会長は、ミャンマーの民主化の重要性と同時に、これまで日本と関係の良好だったミャンマーに対し強硬措置をとることによってミャンマーが日本と距離を置いてしまい、中国と接近することへの懸念を示し「制裁」を否定した。その上で、制裁ではない強いメッセージとして「新たなODA案件の先送り」や「国軍から日本に派遣される軍人留学生の見合わせ」などに言及した。

アメリカとも一線を画した独自対応へ

また衛藤征士郎外交調査会長は、次のように述べた。

「我が国は唯一の同盟国アメリカ、そういう関係はありますけれども我が国は我が国としての独自性主体性をしっかり確立した対ミャンマーに対する外交、そういうものを展開せねばならんと思っています」

衛藤氏はこのように、同盟国のアメリカと一線を画してでも、ミャンマーに対する独自戦略の重要性を強調した。会合では、ミャンマー国軍に対し、「強く非難し、民間人への暴力停止を即時求める」「新規ODAは特に慎重を期す」「在ミャンマーの邦人保護に万全を期す」ことを求める内容の非難決議をとりまとめ、総理官邸に要請することが確認された。

この中でODA(政府開発援助)に関する表現を「停止」ではなく「慎重を期す」と抑制的にしたことについて、幹部は「新規ODA案件を即時停止すべきだと表現したいが、それをやると中国やロシアが喜ぶ。そういうことにならないような態度をとるべきという意見も出た」と説明した。

最大援助国として「新規ODA停止」で圧力

また茂木外務大臣は国会で、新規ODAは停止していると説明し、「日本はミャンマーに対する最大の経済援助国だが、経済援助の新規案件はないという明確な立場をとっている」と指摘し、欧米の制裁と比べてどちらが本当にミャンマーに効くかをかんがえたら明確だと強調した。

人権を重んじる日本としてミャンマーでの弾圧は見過ごせない暴挙だ。一方で、自民党の外交部会などは、中国の軍事的台頭やアジアでの国際戦略に強い危機感を抱いている。その中国政府による新疆ウイグル自治区への圧力も問題になる中、日本はミャンマー国軍にいかに厳しく対応し、かつ中国サイドに取り込まれないようにするか。人道的かつ戦略的な対応というジレンマの中で難しい判断を迫られている。

(フジテレビ政治部)