FNN記者のイチオシのネタを集めた「取材部 ネタプレ」。
今回取り上げるのは、社会部・オコナー海記者が伝える「そんなところに!?ポツンと建った一軒家」。

「パスポートがないと家に行けない」一軒家

社会部・オコナー海記者:
今回は、横浜にポツンと建った一軒家についてお伝えします。

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この土地を巡って法廷闘争に発展し、3月 その判決が高裁で出されました。
では、なぜそんな事態に至ったのか。
横浜市上空からの映像でを見ると、緑豊かな場所に位置する青い屋根の家がぽつんと建っているのがわかると思います。

ただこの家、某局の人気番組のぽつんと一軒家とは違い、この家に行くにはパスポートが必要です。
というのも、実は周りがすべて米軍が終戦後に接収…いわば取り上げた、事実上のアメリカ領に囲まれているからなのです。
だからパスポートが必要です。

この家に住むのは佐治みどり(69)さんと夫の実さん(73)夫婦です。
みどりさんは、この住宅に生まれてからずっと住んでおり、2021年で約70年になるそうです

佐治みどりさん(69):
父から残してほしいと言われたので、一応どうにかここまで来たという状態。私より家が古いんです

社会部・オコナー海記者:
歴史を紐解くと、元々この土地は、みどりさんの祖父が1936年から所有していたそうです。
しかし、終戦後1947年にGHQが祖父の土地の周囲をぐるりと接収しました。
ただその際に、何らかの理由でみどりさんの祖父の土地だけは接収されなかったのです。

そして、米軍が関係者向けの「根岸住宅」を整備したため、陸の孤島になってしまったとのことです。

陸の孤島になったことで、佐治さん夫婦には多くの不便があったと言います。
まずは、パスポートと入門カード。
佐治さん夫妻は、自宅に出入りするために米軍が発行した”入門カード”が必要だということです。
そして、佐治さんの友人については、佐治さんを訪れる際にパスポートを持っていかないといけないということです

救急車も警察も交渉しないと呼べない

社会部・オコナー海記者:
さらに、一刻一秒を争うときにも大きな障害になったといいます

佐治実さん(73):
救急車呼んだら、「そこは行けません」、「米軍施設内ですから」って。
(その後)米軍とも交渉して、救急車呼ぶにも結局全部自分で処理しなきゃいけない

社会部・オコナー海記者:
大変な状況ですが、実は日本の警察もお手上げです。
トラブルが起きた際に、警察を呼ぼうとしても、日本の警察権が及んでいないため、駆けつけることができないそうです

加藤綾子キャスター:
住田さん、これはどうしたらいいんですか?

住田裕子弁護士:
周りが民有地であれば、通行権は迷惑かけない限り認められるのですが、とにかく周りが米軍…アメリカの外交権だけではなく軍事施設ですから、軍事機密があるとなると自由な通行が認められなくても法律上はやむを得ない。
それでも、交渉の末に何とかやってきたんですね

社会部・オコナー海記者:
さらに、毎日の生活面でも困ったことがありました。
それは、家の建て替えができなかったそうで、あらかじめ決められた宅配業者などであれば出入りができるということですが、建築業者については米軍が出入りを認めなかったそうです。
そのため、家の建て替えなどができていないそうです。

今でこそ米軍管理の水道を使えているものの、かつてはそれが認められず、長年 井戸水で生活していたとのことです。

根岸住宅は、2004年に日本への返還が決まり、米軍関係者の全世帯が退去しました。
しかし、現時点でもこの住宅の周囲は事実上アメリカ領のままです。

このような生活の制限を受けていたということで、佐治さん夫婦は2013年に国を提訴しました。
しかし2020年から2021年にかけて、一審・二審の判決が出ましたが、いずれも佐治さん夫婦の敗訴でした。
その理由は、「我慢できる限度を超えていない」ということです

加藤綾子キャスター:
どうしたら良いのでしょうか?

住田裕子弁護士:
大きな意味では、外交交渉です。ただ、国と国との交渉に軍が入ってくるので、一つの例外を認めさせるのも難しい。機材を持っている建て替え業者や、水道にどのようなものが入れられるかわからない。そういう意味で、軍というのは厳しいところです。
だからこの土地を今後もどうするかというのは、今までご先祖様の代からちゃんと引き継いできたけれど、一度ちゃんと大使館とかそういう所を通してご相談された方がいいかもしれません。
個人ではなかなか厳しそうだと思います

(「イット!」3月31日放送より)