2017年より本格的なブームとなったVTuber。キズナアイが黎明期を切り開き、電脳少女シロ、ミライアカリ、輝夜月(かぐやるな)など多様なキャラクターが活動を開始、一大ブームに。

YouTubeから始まり、現在では音楽ライブやテレビ出演など活動の幅を広げ、VTuberという定義も曖昧になりつつある。

現在のVTuber業界とは一体どのような状況なのか? バーチャルを楽しむエンタメメディア「MoguLive」副編集長・VTuber領域統括の永井良友氏に話を伺った。

そもそもVTuberとは?

「MoguLive」副編集長・VTuber領域統括の永井良友氏
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ーーこの数年で一躍人気となったVTuber。テレビ番組やCMの出演などで活躍されていますが、そもそもVTuberとはどのような存在なのでしょうか?

一言でいうならば『アバターを被った人間』です。狭義においてはYouTubeで配信を行ったりCDデビューや音楽ライブを行うといったタレント軸の活動を指しますが、もっと個人的な活動でもVTuberと呼ぶことが出来ます。例えば、Twitter上では氏名や顔を出さず、2Dイラストのアイコン同士でコミュニケーションをしますよね。それらもアバターを被ったコミュニケーションの一つと言えます。

2021年4月3日(土)、4日(日)に開催される『V-Carnival』

ーーVTuberが活動する為の基本的な仕組みは?

2Dのイラストや3Dのキャラクターを用意し、パソコンのウェブカメラなどで実際の表情をトラッキングしています。アバターを作れるスマートフォンアプリもあり、PC/スマホ等の機材や通信環境を持っていれば、無料でもVTuber活動を始めることが可能です。ただ、トップレベルのVTuberと同じクオリティーを求めると3Dキャラクターで数百万円、設備のあるスタジオを構えたら数千万円の費用がかかります。さらに、技術者・編集者などの人件費も重なります。

トップVTuberを目指すにはコスト面で参入障壁が高いことも、「いちから」や「カバー」といったVTuberの運営・マネージメントを専門にした企業の台頭につながりました。日夜オーディションでタレントを発掘しています。最近ではオーディションを通過した人に2Dキャラクターを提供し、人気になったタイミングでクオリティーの高い3Dキャラクターに切り替えるという傾向もあります。

また、身体全体の動きをトラッキングできる貸しスタジオを提供している企業やVTuberが活動できるVR上のルームを提供している企業、キャラクターのデザインや制作を行う会社など分業化も進んでいます。弊社の様に専門メディアでの情報発信や、VTuberを始めたい企業に対してコンサルティングや導入支援を行う企業も存在します。

人気の理由は『実在感』

ーーVTuberがファンに支持される理由は?

VTuberを応援する理由の一つとして『実在感』が上げられます。YouTubeの日々の雑談やTwitter上での日常のやりとりなど、間近にいる様に錯覚してしまいます。こういった動きはアニメのキャラクターでは実現できませんよね。

VTuberはこの世界に存在して対話することができます。アバターという存在を介し、コミュニケーションできることがウケている理由ではないでしょうか。また、キャラクター同士がSNSなどでコラボしている様を見ることで、存在を認識できる点も他には無い特色です。

また、VTuberの良さとして成長を実感できるという点も上げられます。ファンの人達が応援することで、話術や歌唱力を高め、大きなハコや他メディアでの露出を獲得することができる。こういった動きは、アイドルファンが『推す』と呼ぶプロセスにも似ています。地下アイドルから段々と成長をして、最終的に武道館でライブを行うといったサクセスストーリーがVTuberでも生まれています。

2021年4月3日(土)、4日(日)に開催される『V-Carnival』

ーー実在するタレントと比べて、VTuberならではの特色は?

まず、場所を選ばないという点です。地方や海外であっても活動できます。その上、複数のVTuberが離れた場所から一つの空間でコラボしたり、3D空間でライブイベントをすることが可能です。またミミックさんの様にダンスやアクロバティックなVR動画を撮影したり、ピーナッツくんの様に2頭身キャラに変化したりなど現実世界と異なるアウトプットが可能な点も特色の一つです。

メイクや身だしなみが必要ない点もリアルなタレントさんと比較してメリットも大きいです。一般的なタレントさんであれば、2時間前に入ってメイクをして、衣装を合わせてといった流れが必要となります。収録スタジオに来ること無く、接続したらすぐにスタジオに行き、顔色が悪い日も変わらないクオリティーを保つことができます。

リアルタレントはVTuberにリプレイスされるのか?

ーーVTuberはリアルからVR、VRからリアルといったように、リアルとVRで融合していくのでしょうか?​

VTuber発のブームは一般的になっていくと思います。今まで深夜帯で実験的に制作された番組も、今ではVTuberである事が番組にキャスティングされる理由になってきました。TVCMやラジオの出演も増えつつあります。リアルでタレントがやっていることは一通り出来る様になると思います。

2021年4月3日(土)、4日(日)に開催される『V-Carnival』

ーー逆に、実在タレントのVTuber化も進んでいくのでしょうか?

はい。現在声優や俳優さんの一部がVTuberに進出しています。それだけでなく、最近ではオリエンタルラジオの中田敦彦さんがアバターでの活動を宣言しました。今後、バーチャル空間は必ず増えていきます。その時代の到来を予期して、アバターとしての適応を開始されたのかもしれません。

またVTuberという言葉は日本発ですが、国の垣根なく活動する人が増えてきました。英語圏で大ヒットしている「がうる・ぐら」さんや、ポルトガル語圏で人気の「雲母ミミ」さんなど、日本以外の活動も増加しています。国際的なファンは間違いなく増えて行くでしょう。

ーーVTuberの歌手デビューやライブ活動も一般的になってきました

初音ミクやYOASOBIなど作曲や歌い手文化から生まれたネット発の歌唱カルチャーはVTuberとも非常に親和性が高いです。3Dキャラクターがあれば、ミュージックビデオ上を縦横無尽に動き回ることができますし、立体感や動きのある映像を撮ることもできます。

トレンドとしては、よりリッチで実在感のあるライブを作る流れになっています。例えばVTuber事務所の一つである神椿(KAMITSUBAKI STUDIO)はライブ会場ごとVRで制作し、現実であるかのようなライブを提供しています。

(神椿に所属するVTuber花譜(かふ)による音楽ライブ)

初期の頃はステージ上に液晶モニターが一つあるだけでしたが、現在では透明のパネルを設置してホログラムのようにキャラクターを投影し、壇上にいるかのように見せたり、リアルな人間とVTuberを同じ空間に混在させ、実在感を増すなどの工夫もなされています。

2021年4月3日(土)、4日(日)に開催される『V-Carnival』

『V-Carnival』
業界トップクラスのVTuberが集結する音楽ライブ。従来のライブと異なり、生のステージ、生の照明の中に、全てのVTuberがARで登場する。さらに、最先端CGを駆使した空間演出を行い、リアルとバーチャルが融合したド派手なライブパフォーマンスが行われる。

■出演者:
戌神ころね、大神ミオ、花譜、獅子神レオナ、白上フブキ、
月ノ美兎、角巻わため、ときのそら、常闇トワ、猫又おかゆ、
花鋏キョウ、樋口楓、HIMEHINA、富士葵、星街すいせい、
本間ひまわり、YuNi、理芽、緑仙、竜胆尊 
※アーティスト記載:五十音順
■MC:
一翔剣(ニッポン放送)、白上フブキ、月ノ美兎

――最後に、VTuber業界のビジネス市場としての可能性は、いかがでしょうか?

ビジネスモデルに関しては、YouTubeのスーパーチャットやライブコマースといった、いわゆる投げ銭と呼ばれるような一回の盛り上がりだけに依存せず、サブスクリプション型にも移行していくのではないでしょうか。

また、YouTube一本足打法では無く、たとえばピクシブのFANBOXというサービスでメンバーシップを募るなど、収益軸の多角化も今まさに起きている流れになります。

VTuber市場の定義にもよりますが、ファンを魅了するものは提供するコンテンツであり、タレントはVTuberというツールも活用して、バーチャル上での活動を拡大していくのだと考えています。

『V-Carnival』
2021年4月3日(土)、4日(日)19時スタート
(イベント後2週間のタイムシフト視聴可)
https://www.v-carnival.jp/

文:佐藤大介/ワードストライク