工場に続き本社も移転

東京シリーズなど数々のビールを生み出してきたクラフトビールメーカー『Far Yeast Brewing』。

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2020年に東京・渋谷から山梨県の小さな村に本社を移転した。
すると、変わったのは、窓から見える景色だけではなかった。

Far Yeast Brewing・山田司朗代表:
(社員の)応募数自体は増えています。大きく変わったのが、地元の人の会社への見方です。

清流が流れ、目の前に山々を望む山梨・小菅村。

4年前からこの地に自社工場を構えていたFar Yeast Brewingが、東京・渋谷にあった本社もここ小菅村に移転することを決めたのは2020年10月のことだった。

山田代表:
2020年の緊急事態宣言で在宅勤務に全社的にしたが、滞りなく業務できたというのがあって、今移転しても特段の業務上の支障はないかなと。

移転後も、本社で働いていた6人の社員に引っ越しを強要せず、都心からの在宅ワークを認めたことで移転にともなう影響はほとんどなかったという。

その一方、あるうれしい変化も…

山田代表:
山梨の企業や生産者、小菅村の皆さんにFar Yeastは腰を据えてここでやっていくと示すことができ、いろんなところから声がかかるようになりました。

知名度が上がり、地元の企業とのつながりが強まったという。

以前から行っていた地元農家と協力したビール開発を2020年から「山梨応援プロジェクト」と題しシリーズ化。

モモやブドウなどを使用したビールを開発・販売するなど、地元との連携に力を入れた。

移転を機に入社希望者は海外からも

うれしい変化は商品にとどまらない。
移転後に入社したFar Yeast Brewing事業推進チームのメンバーは・・・

移転後に入社した若月香さん:
今まで都内で働いていましたが、小菅に本社を移転してそこで働く人材を募集しているとみて応募しました。
(コロナの影響で)都内で半年くらいリモートワークで、どこにも行かずに仕事しているのは閉塞感があった。

若月さんのように、移転を機に入社を希望する人は国内にとどまらず、海外からも。

山田代表:
世界中から応募いただいていて、2名ほど外国人の方の採用予定があります。
1人はブルワリーで働いていた経験のある人。

移転により起きたさまざまな変化。
今後の会社のあり方について山田代表は…

山田代表:
どこにいてもリモートでパフォーマンスを発揮できる時代。
東京vs地方みたいな2極で語るのではなく、本社工場という拠点とそのほかいろんな場所という多極化した支店で海外で働くこと、かつリモートで仕事することも将来考えたい。

地方企業でも全国企業がライバルに

三田友梨佳キャスター:
社員全員がリモートワークで働く会社、キャスター取締役COOの石倉秀明さんに聞きます。
リモートワークの普及によって本社機能は都会でなくてもいいといった流れが起きていますね。

キャスター取締役COO・石倉秀明氏:
これまでは人も多いし、取引先も集中しているということがあって東京に本社を置く企業が多かったと思いますが、リモートが進んできて取り引きや仕事自体がエリアを超えて出来るようになってきていることで、その会社の事業をやるのに最も適した場所に本社を置くという選択肢が生まれてきているのは確かだと思います。

企業にとってリモートワークが前提になってくると、そのエリアに限らず全国、もしくは世界中から人材を採用することが可能ですし、働く人にとってみても自分のキャリアを選びやすくなったという側面はあると思います。

三田キャスター:
石倉さんの会社も東京から宮崎県に本社を移転されていますが、どのような変化がありましたか?

石倉秀明氏:
本社を宮崎に移転して2年以上経過しますが、結果として宮崎にオフィスを構えたことで地方とのつながりが増えて、都道府県別に見ると宮崎県在住の社員が一番多くなっています。

地方創生の仕事もさせてもらうと地域とのつながりは確実に増えていると思います。

三田キャスター:
一方で課題を挙げるとするとどういったことがありますか?

石倉秀明氏:
地方の会社にとってはエリアの制限がなくなったということは、人材獲得の面から考えると全国の会社と競争しなくてはいけないということも事実です。

ですので、地元で今まで働いていた優秀な人が、待遇が良かったり、仕事の内容に面白さを感じて都心の会社に流れてしまう可能性も逆に出てきているわけで、地方だからということが通用しない時代になってきていることも事実です。

だからこそ生産性を上げることや待遇を都心並みにすることももちろん大事ですけど、その会社だから働きたいという魅力をそれぞれの会社がどこまで作れるかがカギだと思います。

三田キャスター:
働き方も働く場所も柔軟にすることで、どうしたら企業が従業員と一緒に理想的な働き方を作り上げることができるのかを考えていくことが社会情勢が大きく動く今、最も重要なことかもしれません。

(「Live News α」3月22日放送分)