3月24日からスウェーデン・ストックホルムで開催される世界フィギュアスケート選手権2021。

2020年の世界選手権は新型コロナウイルスの影響で中止となったが、今年は無観客にて行われる。

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世界選手権に向けて、全日本選手権よりも難易度の高いプログラムを作り上げた紀平選手。4回転ジャンプを操るロシア勢が席巻する女子フィギュア界で、今回彼女は唯一無二の攻めのプログラムこそが、最大の武器になるとして、難しい道にチャレンジすることを選んだ。

“4回転”の自信がさらなる高みへ

「やっと一歩が踏み出せた感じがしてよかったです」

紀平選手は、2020年12月に行われた全日本選手権をこう振り返った。

昨シーズンできなかった4回転サルコウを初めて成功させ、全日本選手権2連覇を達成した。

ようやくつかんだ4回転という“最強の武器”に、「出来は100点近いです」と試合後に語っていたが、それでも満足はしていなかった。

「構成も上げられる状態で、伸びしろはたっぷりだと思うので、もう少し難しい構成で練習していこうと思います」

年が明けた2021年。スイス・シャンペリーで練習を重ねる紀平選手は、その言葉通り、さらなるレベルアップを狙っていた。

「4回転を(構成に)入れることに対して、すごく恐怖心とかあったんですけど、しっかり集中して、こういう状態に持っていけたらこの前(全日本選手権)みたいに跳べるというイメージが出来たので、心の持ち方が変わりました」

世界選手権を目前に控えたインタビューで、「4回転のイメージがつかめた」という紀平選手。4回転サルコウを成功させてつかんだ自信と手ごたえが、彼女をさらなる高みへと駆り立てた。

高難度だからこそ、戦える

そんな彼女が目指す構成は、フリーの演技冒頭に4回転サルコウを入れることだった。

また、自身の代名詞でもあるトリプルアクセルを、トリプルアクセルとダブルトゥループのコンビネーションに変更。

得点が1.1倍となる後半には、2本のトリプルアクセルを組み込み、最後のダブルアクセルをトリプルルッツに変更し、超高難度のプログラムを作り上げた。

今回の世界選手権のジャンプ構成は、全日本選手権で見せたジャンプ構成より、約5点高い構成になる。

この高難度のプログラムについて、「2本のアクセルが後半にあるので、(後半の)トリプルアクセルは一番しんどくって…」と紀平選手自身も苦笑する。

さらに、一つのプログラムで4回転ジャンプと2本のトリプルアクセルを成功させれば、世界初の快挙となる。

実は、紀平選手は2年前から4回転サルコウとトリプルアクセルを2本入れる構成を見据えていた。その理由を当時の紀平選手はこう語っている。

「ロシアの選手で4回転をたくさん跳べる選手が上がってきているので、ジャンプ構成で負けないように攻めた構成で、完璧な演技をして戦えるくらいのレベルにしないといけない」

4回転ジャンプを操るロシア勢に、紀平選手は彼女にしかできない唯一無二のプログラムで挑んでいく。

今回の世界選手権へ向けて紀平選手は、「トリプルアクセルと4回転サルコウとも安定して、どちらも跳べるのは難しいこと。それを私が構成に入れてできているのは、戦っていけることでもある。私も自信を持って勝つという気持ちで、“自分が一番うまい”と思えるくらいの状態に持って行って」と意気込んだ。

北京オリンピックまであと1年という中、幼い頃から夢見てきた大舞台へ、紀平選手は自分史上最高難度の勝負プログラムを引っ提げ、世界の頂点を狙っていく。

「世界選手権はオリンピックに向けて最後の予行演習というか、最後のシミュレーション。世界選手権で自分の完成形をショート、フリーともにそろえることを目標に頑張りたいと思います」

2019年に初めて出場した世界選手権は4位で終わった紀平選手。“4回転”という武器を手にし、自信をつけた紀平選手は、初の“世界女王”を狙う。

フィギュアスケート取材班
フィギュアスケート取材班