東日本大震災10年…各地で祈り
東日本大震災の発生から10年。
被災地では「早いような遅いような10年が過ぎた。われわれは命があって、今日一生懸命頑張っていますということと、あらためて安らかにお眠りください」といった声が聞かれた。

もう10年、まだ10年…
10年という節目にそれぞれの思いを胸に、各地で祈りが捧げられた。

「皆さんを救ってね。いってらっしゃい」との思いが込められ、海に浮かべられた白い折り鶴。

岩手・大船渡市では「いつまでも悲しんでいられないので頑張らなきゃ」との声が聞かれた。
子どもたちのメッセージが空を舞う
祈りは、次の時代を担う若い世代も。

岩手・宮古市では子どもたちのメッセージが晴れわたった大空へと舞い上がった。
震災後に生まれた宮古市の小学3年生:
私がお腹の中にいるときに、お母さんが一生懸命守ってくれたので、(風船には)自分もその分頑張って生きていきたいですと書きました

福島・広野町では、赤いテープを手に、ひとつにつながった中高生およそ300人が海に向かい祈った。

福島・広野町の中学生:
もう10年経つんだなぁと。あのとき僕は3歳だったので、10年後にはもう大人になっているので、震災を経験した立場からあとの人たちにつないでいきたい

都内では、地震発生の時刻に合わせて政府主催の追悼式が開かれた。
天皇陛下:
今後、困難な状況にある人々が、誰一人取り残されることなく、一日でも早く平穏な日常の暮らしを取り戻すことができるように、復興の歩みが着実に実を結んでいくよう、これからも私たち皆が心を合わせて、被災した地域の人々に末永く寄り添っていくことが大切であると思います。

「きっと近くで見守ってくれている」
今も400人余りの行方がわかっていない岩手・大槌町。午後6時すぎ、追悼と未来への希望をテーマに、およそ700発の花火が夜空を彩った。

津波で亡くした夫の墓参りに来て、花火を眺めたという女性は「わたしは震災から10年あっという間だったんです。10年間を一生懸命に生きてきたから(花火が)美しく見えました。震災に遭ったけれど、見守ってもらえる旦那を見つけられただけでも良かったかなと思う。きっと近くにいて見守っていると思いますから」と、10年を振り返った。

未曽有の被害をもたらした東日本大震災。
死者は1万5900人、行方不明者は2525人にのぼり、今も54人の遺体の身元がわかっていない。

三田友梨佳キャスター:
大切な人を亡くされた方や、いまだ行方不明の方を待つ皆さんの中には、時が止まったままの方もいらっしゃると思います。震災は年数で区切ることはできませんし、終わりはないのだと思います。どれだけ年月がたっても、決して風化させてはなりません。今、自分にできることを考えていきたいと思います
復興財源は増税ではなく“CATボンド”の活用を
三田友梨佳キャスター:
ここで、エコノミストで企業ファイナンスを研究している崔真淑さんに聞きます。復興はまだ道半ばですが、崔さんは経済の面からはどうご覧になっていますか?
エコノミスト・崔真淑さん:
震災直後は公共投資の影響もあり、建設業を中心に右肩上がりで経済成長してきました。しかし、復興予算がこの10年で約30兆円だったものが、これからの5年間は約1.6兆円と大幅に縮小されます。そして、さらに足元の東北経済は、日本銀行のデータを見てみると、コロナの影響もあり非常に弱い動きとなっています。また、これまでの成長も、あくまでも公共投資ありきであり、やはり企業のイノベーション力であるとか、跡継ぎ問題、人手不足もあり、なかなかそういったところができていなかったんじゃないかという指摘もあります。

三田キャスター:
被災経験をさらに未来につなげるためには、どんなことが必要だと崔さんは思われますか?
崔真淑さん:
やはり、レジリエンス(※復元力)の強化が必要だと思います。つまり、災害に強い日本の土台を作ることが必要です。具体的には、復興の予算を財政ありきではなく、金融の仕組みを使って促そうじゃないか、そんな考え方が今、注目されてきているんです
三田キャスター:
具体的には、どのような仕組みになるのでしょうか?
崔真淑さん:
これまでの復興というのは、一時的な増税であるとか、財政ありきでまかなわれてきました。しかし、もし大規模災害が起きたら、これからも財政ありきでまかなえるのか、復興となれるのか。それが今、懸念されています。そういったこともあり注目されているのが、“CATボンド”という仕組みです(※CAT:Catastrophe=大災害)。これは、投資家に対して、通常時は国債よりも高いリターンを支払っておき、もし大規模災害が起きたら、投資家の元本を復興の財源に使おうというものなんです。財政ありきではなく、復興のための財源を金融の仕組みを使って整えておく。それが未来への備えになるのかなと思っています。
三田キャスター:
そうですね。今も多くの方が避難生活を余儀なくされていますし、ふるさとに帰ることができない方が多くいらっしゃいます。災害に強い国づくり、そのために国全体が一体となって進めていくことが求められます
(「Live News α」3月11日放送分)