「マスクの隙間問題」解決アイテム

コロナ禍で生活に欠かせないアイテムとなったマスク。

少しでも感染リスクを減らそうと、不織布マスクにウレタンマスクを重ねてつける“二重マスク”をしている人を見かけることも多いだろう。

理化学研究所が発表したスーパーコンピューター「富岳」によるシミュレーションによると、不織布マスクの上にウレタンマスクをつける“二重マスク”の場合、飛沫をとらえる割合「捕集効率」は89%。また、不織布マスク一枚を顔にぴったりと密着させた場合は85%という結果が出たという。

一方で、不織布マスクを密着させず、隙間が空いている状態で装着した場合は69%。マスクを効果的に使うためには「隙間のあるなし」が重要、ということがわかった。

(関連記事:不織布1枚でも「タイトフィット」なら二重マスクに近い飛沫防止効果…スパコン富岳の分析で意外な結果

感染予防には“二重マスク”をしたり、不織布マスクをぴったりと装着するのが効果的…ということだが、実際に“二重マスク”をしてみた人の中には、息苦しさを感じた人もいるのではないだろうか。

また、不織布マスクには鼻に当たる部分にワイヤーが入っているものなどもあるが、眼鏡をかけている人の中には「しっかり顔に沿わせているはずなのに、息が漏れてきて眼鏡が曇る…」といった経験がある人も多いだろう。

なかなか解消できない「マスクの隙間」問題。そんな中、株式会社タナックが発売している「マスピタ」というアイテムが注目されている。

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「マスピタ」は、タナックが慶應義塾大学・理工学部応用化学科の奥田知明教授と共同開発したマスクカバー。

独自の「クリスタルゲル」という柔らかな素材を使っており、不織布マスクよりも一回り大きなサイズで、マスクの上から装着することで顔にぴったりとフィットさせることができる。

一見“二重マスク”と変わらないように見えるアイテムだが、同じような息苦しさは感じないのだろうか? また、その性能は?タナックの担当者に詳しくお話を聞いた。

粉塵の侵入率を60%近くカット

――「マスピタ」開発のきっかけは?

昨春に出展予定だった展示会や学会が、新型コロナウイルスの影響で中止や延期が相次ぎ、営業活動が満足にできない中、会社として何か社会に貢献できることはないだろうか、世の中のお困り事に提案できることはないだろうか、という思いが発端でマスピタを開発しました。


――こだわった点はどこ?

マスクの正しい装着の仕方で肝要なことは「マスクの隙間を埋めること」です。鼻・ほお・あごの隙間を抑えるには、立体形状に追従する柔らかく伸びる素材が必要でした。

弊社の独自素材「クリスタルゲル」は医療機器部品での採用実績も豊富で、肌に優しく、耳たぶのように柔らかく、かつ1000%以上伸びても歪みが少ない素材です。慶應義塾大学 理工学部 応用科学科の奥田教授からのアドバイスを頂きながら試行錯誤を繰り返し、今の形状にたどり着きました。


――これまでの売り上げはどのくらい?

医療・介護の現場を中心に累計50,000枚を突破致しました。ウイルスのみでなく花粉症対策にもなるという口コミが広がり、2月中旬から注文が急増しております。


同社によると、国内二度目の緊急事態宣言の影響と“二重マスク”の流行とで問い合わせ数が増えたという。2020年4月の発売以降、月間では、12月に1,000枚、2021年1月に4,000枚だったという売り上げも、2月には10、000枚にまで上昇したとのことだ。

また、吸引時の周辺大気のリーク(漏れ)量のテストを見てみると、医療用の不織布マスクを使っていても、ぶかぶかの状態などでつけていると鼻の隙間からはフィルターを通さない空気が漏れ入ってしまい、飛沫やエアロゾルに無防備な状態になってしまっているのがわかる。

鼻の部分のワイヤーを折って顔に沿わせた場合は吸い込む空気の量がかなり減ったものの「これ以上のフィットはウレタン素材の立体型マスクかN95マスクが必要」だと指摘。

一方で「マスピタ」を使った場合はほぼ隙間からの吸い込みがない状態になっている。

マスクの外側と内側の粉塵粒子数をそれぞれ計数し、マスク内への粉塵の侵入率(漏れ率%)を調べる別の実験では、マスクのみを着けた場合では「漏れ率」は平均で84.6%。

一方、「マスピタ」を使った場合では平均で25.0%と、粉塵の侵入率に60%近くの差が出た。(測定機器:労研式マスクフィッティングテスター(MT-03)試験粉塵:大気塵(0.3μm~0.5μm))

また、「マスピタ」なしの場合ではマスクの中でくしゃみをしたときにあごの隙間から飛沫が飛んでしまったが、「マスピタ」ありの場合では飛沫の量が軽減されることも確認された。

マスクのふちだけを覆う形で息苦しさもカット

マスクの隙間をきっちりと押さえてくれる効果があることはわかったが、問題はマスクにつきまとう「息苦しさ問題」。こちらの問題はどうなのだろうか?


――“二重マスク”と比べて、息苦しさは?

マスクの隙間をなくす方策として二重マスクがありますが、マスクの上から装着しますので息苦しくなりがちです。本製品はマスク1枚に対して縁を覆うように装着致します。正しく装着頂ければ、マスクのフィルタ機能が向上致しますので、効果を感じて頂けると思います。

マスピタのポイントは、マスクをしっかりと押さえながらも“二重”にならないところ。“二重マスク”の息苦しさは布が重なってフィルターを通しての息がしにくくなるところにあるが、マスピタは口に当たる部分に穴が開いていることで、通常の不織布マスク1枚と変わらない息のしやすさが確保されるのだ。


――どんな場面で使ってもらいたい?

特に通勤電車・バス、会議など、密になる時に使用いただきたいと考えております。

ハンカチなども簡易マスクに早変わり
ハンカチなども簡易マスクに早変わり

「マスピタ」は「ふつうサイズ」が1枚1,078円(税込)、「やや大きめサイズ」が1,188(税込)。

まだまだ続きそうなマスク生活だが、遠からず二度目の「マスクの夏」がやってくる。便利なマスクグッズを上手に取り入れて、少しでも快適に過ごして頂きたい。

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プライムオンライン編集部
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