東日本大震災から10年。私たちは、再び大きな地震に備える必要が出てきている。

千島・日本海溝沿いで想定される巨大地震

2020年、内閣府から発表された千島・日本海溝沿いの巨大地震による津波想定では、岩手県内では最大震度6強、そして最も高い津波が来ると予想される宮古市では、家や漁港がない場所だが29.7メートル、そして岩泉町で26.6メートル、山田町で21.9メートルなどとなっている。

千島・日本海溝沿いの巨大地震発生時の津波想定(岩手県内では最大震度6強)
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東日本大震災と同じ、またはそれを超えるような津波が予想されるこの新しい想定について、どう向き合うべきか取材した。

東北大学災害科学国際研究所・今村文彦所長:
400年くらいの周期で発生しているものと考えられます。前回は1600年代で起きましたので、今回(東日本大震災から)そんなに間がなく地震津波が発生する可能性があります

東北大学災害科学国際研究所・今村文彦所長

こう語るのは千島・日本海溝沿いの巨大地震による津波の浸水想定の作成に携わった東北大学災害科学国際研究所の今村文彦所長。

東北大学災害科学国際研究所・今村文彦所長:
特に岩手県北部においては、3.11を上回るような規模、または浸水範囲になると考えられます。今回の最大クラスの地震津波は切迫性が高いということで、その状況は、早く市民の皆さんに知っていただく必要がある

東北大学災害科学国際研究所・今村文彦所長

東日本大震災による大津波。私たちは津波の恐ろしさを目の当たりにした。

東日本大震災による大津波(2011年3月11日)

今回、想定が発表された巨大地震で、大きな津波が心配される町の1つ、宮古市。
震災後、宮古湾には10.4メートルの防潮堤が整備されたが、それを越えるような津波がくる場所もあるとされている。

宮古湾の防潮堤

森尾絵美里アナウンサー:
津軽石地区です。海から約2kmほど離れたこの場所まで、10年前は津波が押し寄せました。ですが、新しい想定ではさらに奥へと広がっています

津軽石地区は、東日本大震災で683棟が津波の被害を受けた。
すでに作られた防潮堤が破壊される想定の内閣府の発表では、10年前を上回る約960世帯が津波で浸水するとみられている。

この想定に住民からは戸惑いの声も。

浸水区域に住む男性:
ここには住めないなっていうような頭だったけども、今さらどこに逃げるわけにもいかないし、新しく建てるわけにもいかないし

命を守るため“津波”を伝える中学生

こうした状況も踏まえ、宮古市では3月はじめから、海抜を示した看板を学校の通学路など電柱95カ所に設置。新たな避難場所などを知らせる防災マップを作り、市内全世帯に配った。

宮古市が全世帯に配布した防災マップ

宮古市・芳賀直樹危機管理監:
宮古市は、できるだけ多くの情報を市民にお知らせして、なんとか「津波てんでんこ」逃げていただきたいという思いで作りました

宮古市・芳賀直樹危機管理監

こうした動きは、地元の中学生にも。
津軽石中学校の3年生は、市の防災マップをもとに「避難を呼びかけるポスター」を作り、近隣の住民に配った。

津軽石中学校(宮古市津軽石)

ポスターには、避難するときの持ち物や、災害時の備えについて書かれている。
学校がこの取り組みを始めたのには理由がある。

津軽石中学校・伊藤貴洋学年主任:
今回あらためて記憶が確実になったと思うので、「最後の記憶のある世代」なのかなとは思います。波を見ているとか、当時の避難所の空気とかを知っているこの子たちだからこそ、すごく熱の入った、こういう活動になったんじゃないかと思います

津軽石中学校・伊藤貴洋学年主任

当時5歳だった山口瑠夏さん(15)は、東日本大震災の津波で自宅が大規模半壊し、1週間ほど車の中で過ごした。

津軽石中学校3年生・山口瑠夏さん:
震災が来る日の何時間か前に作っていたみそ汁を、もう一回家に帰れた時に作り直して、それを車で食べたり…

ーーその時食べたみそ汁の味を覚えている?

津軽石中学校3年生・山口瑠夏さん:
すごくおいしいなって思いました

10年前の津波を忘れないでほしい。瑠夏さんは、命を守るために伝え続ける。

津軽石中学校3年生・山口瑠夏さん:
チラシとかポスターを見て、いろんな人が助かったらいいなって思います

津軽石中学校3年生・山口瑠夏さん

あの想定を超える震災から10年。「津波による犠牲者をゼロにしたい」という思いを未来につなぐ次の世代が、再び訪れるかもしれない巨大地震と津波への備えを始めている。

(岩手めんこいテレビ)