東日本大震災からまもなく10年。
被災地の企業が、その経験から学び生かしてきた「まさかのときの対応力」についてお伝えする。
「災害時の対応で成長が決まる」
「なるほど」なアイデアで低価格の商品が魅力の生活用品メーカー「アイリスオーヤマ」。

「アイリスオーヤマ」は、東日本大震災の被災地、宮城・仙台市に本社を置く。
アイリスオーヤマ・大山晃弘社長:
大きな災害に直面したときは需要が一気に変わる。
その時に、いかに機敏に対応できるのか、それで企業の成長が決まってくる。

三田友梨佳キャスター:
先日の地震も東日本大震災の余震と考えられると聞くと、まだ東日本大震災は終わっていないんだなとあらためて思いますが、10年という節目を迎えるにあたって、今、どんなことを思われますか?
大山晃弘社長:
東日本大震災から10年たって、宮城県含め大部分のところでは復興も復旧も済んで、傷痕というものも徐々に見えなくなっているのかなと思います。
ただ、福島県に関しては、原発の影響があって、まだまだ傷が深くて復興がまだなっていないというところで、10年だからこの大震災を忘れていいということはないと思っています。

2011年3月、アイリスオーヤマの本部機能を有する宮城県の角田工場では、電気や水道などのインフラがすべて停止。
倉庫の荷物は崩れ落ち、天井がはがれるなど、大きな被害に遭った。

この被災した経験は、会社の経営方針に変化をもたらしたという。

「生活者の不満解決」→「日本の課題解決」へ
大山晃弘社長:
経営方針に関しては、やはり社会のニーズや社会の問題を解決することが最大の需要創造だと、このように捉えまして、積極的に世の中の問題について目を向けるようになりました。
アイリスオーヤマは、これまで生活者の不満を解決する事業を行ってきたが、震災後から日本の課題を解決する事業を強化。

原発事故による電力不足に対応したLED照明の生産強化や、被災地の農家を支援する目的で精米事業などを新たに始めた。

さらに、2020年は新型コロナウイルスの影響で需要が拡大したマスクの国内生産をいち早く強化した。

「余裕をもつ」ことで迅速に変化に対応
三田キャスター:
コロナ禍での対応においても、震災を経験されたことが役立つ部分はあったのでしょうか?
大山晃弘社長:
はい、大いにあったと思います。
社会が大きく変わるとき、大きな災害に直面したときは需要が一気に変わる。そのときに、いかに機敏に対応できるのか、それで企業の成長が決まってくると思っているので、今回もできるだけ早い判断をしようと思って行動していました。

大山晃弘社長:
そういった意味では、ある程度経営に余裕があることが大事だと思っていて、今回のマスクに関しましても、普段からある程度生産の余裕や倉庫の余裕があったから、一気に設備を導入して量産するということができたと思っています。

今後は、被災した経験から、災害が起きたときに必要となるものを事業として展開する。

大山晃弘社長:
震災10年という形で、今年、あらためて防災について捉えようと考えています。
震災が起きたときに一番に困るものは水だった。そういったところで、水をわれわれ自身が製造して、いち早く被災者に届ける。そういったサプライチェーンをまず構築しようと考えています。

変化への対応力を迅速にし、日本の課題を解決する。
被災地企業としての矜持が込められている。

三田友梨佳キャスター:
アイリスオーヤマでは工場に常に3割の余力を作っていることが柔軟な対応に繋がっているそうです。
10年前の震災の時、生活に欠かせない物資を提供する企業として一刻も早く復旧しなければならない一方で、働くみなさんも被災者であるというのは過酷な状況だったそうです。
社会のためにと自らを奮い立たせて行動してきたと話す大山社長には、このコロナ禍においても日本の課題を解決するのだという強い覚悟が感じられました。
(「Live News α」3月9日放送分)