東日本大震災から、間もなく10年。

34歳の女性社長によるサスティナブルな取り組みから、福島の未来を見つめる。

コスメに込めた復興への思い

東京・銀座にある百貨店の化粧品売り場。

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その片隅に並んだ「明日 わたしは 柿の木にのぼる」というユニークな名前のコスメ。

実は、このコスメには、被災地の復興を願う強い思いが。

株式会社 陽と人 代表・小林味愛さん(34):
福島に外から関わるのも大事なんだけど、本当にその土地を大事にしている人たちの思いを酌んで、仕事としてやっていった方が、人間らしい、裏切らない生き方ができるんじゃないかなって

福島・国見町。

震災から10年がたち、町は元の姿を取り戻しているように見えるが、2月13日に起きた震度6強の地震の爪痕が、さまざまなところに残っている。

この町に、あのユニークな名前のコスメを作った会社がある。

代表の小林味愛さん、34歳。
出身は東京都。

大学卒業後は、キャリア官僚として働いていたが、10年前のあの日、大きな転機が訪れた。

株式会社 陽と人 代表・小林味愛さん:
社会人になって東日本大震災が起きて、それこそ震災関係の業務をやってたんですけど、役に立ちたいと思って(国家公務員に)なったのに、なんとなく遠い。
役に立てているような実感がわかなくて、何もできていない自分が、本当になんて言うのかな、申し訳ないっていうか、そういう気分になったんですよね

福島の魅力を発信し続ける

「被災地の人たちの役に立ちたい」

そんな思いを抱き続けた小林さんは、その後、民間企業への転職をへて、4年前に福島で起業。

本来、捨てられてしまう、いわゆる規格外の農産物を買い付けて、首都圏へ出荷するなど、地域資源を生かしたさまざまな事業を行い、福島の魅力を発信し続けている。

農家の男性:
われわれの発想と全然違うんだよ、目の付け所が。
びっくりしたし、うれしいし、それで都会の人が喜んでもらえるならば

そして2020年、名産のあんぽ柿を作る際に出る、不要となった柿の皮を原料とした化粧品を開発。

このSDGsの取り組みが高く評価され、2020年のサスティナブルコスメアワードで銀賞と審査員賞を受賞した。

彼女が描く、福島の未来とは。

株式会社 陽と人 代表・小林味愛さん:
長い先を見た時に、この地域をどういい状態で残していくか、どう持続可能なものにしていくかということは、この10年のわたしたちだけじゃなくて、みんなの課題だと思っています。
若い人たちを、わたしたちがちゃんと受け入れられるような土壌なり、雇用の場っていうのをちゃんとしっかり作りだして、若い人たちにいかに引き継いで行けるかというのが、次の10年なのかなって思っています

未来に向けて目標を掲げるのが大事

内田嶺衣奈キャスター:
持続可能な福島の未来を描いていくというこの試みですが、本当に行動力が素晴らしいなと感じました。
松江さんはいかがですか。

デロイトトーマツグループCSO 松江英夫氏:
本当にそう思います。
心ある人、強い思いを持った人同士がつながっていく。
これがまさに復興の原動力なんだなと改めて感じました。

震災後10年で過去の記憶を風化してはいけないんですけど、そのためにも我々は未来に向けて目標を掲げる。
これが大事だと思うのです。
過去を忘れないようにするというだけではなくて、未来に向けて過去からどう学んでいくのか。
こういった姿勢を我々が持つことによって、過去が自分たちの心の中に生き続けるのではないか。
そんな風に感じます。

内田嶺衣奈キャスター:
未来に向けた目標というのは、どういった目標が今考えられますか。

デロイトトーマツグループCSO 松江英夫氏:
未来に向けては「Well-being」こういった考え方を持つことが大事だと思うのです。

デロイトトーマツグループCSO 松江英夫氏:
「Well-being」とは人の心と体と同時に、社会のあり方、この満たされた状態、より良き状態、これを目指していこうという考え方です。
例えば震災においても復興においても、経済の復興だけではなくて、そこに居住される方の安心感とか満足度は過去から未来に向けてどうやって高まっていったのか?
この質的な幸福感にも注目して高め続けていく。
これがまさに「Well-being」という意味するところなのです。

日本は震災で、自然環境においても社会的にも大きな被害を受けた。
そこから復興してきた。
この経験を生かして、未来にも地球規模に対しても、これを実践して発信していく。
これは日本ならではの貢献のあり方につながるのではないかと思います。

内田嶺衣奈キャスター:
先月も宮城県と福島県で震度6強の大きな地震が起きました。
このときの揺れに、あの日のことを思い出してしまったという方も多かったのではないでしょうか。
高校生の時に被災した経験を持つ方を取材させていただいたことがあります。
その際に、夢に向かってまっすぐに進む姿から本当に大きな勇気をもらいました。
復興はまだまだ道半ばです。
今度は私に何ができるのか、これから考えていきたいと思います。

(「Live News α」 3月5日放送分)