子どもへのワクチンの治験
イギリスのオックスフォード大学は子どもと未成年を対象にした新型コロナウイルスワクチンの安全性や有効性などを確かめるための治験を開始。使用するのはアストラゼネカと共同開発しているワクチンで、今回対象となるのは6歳から17歳までの300人のボランティアだ。12歳以上には2月に1回目の接種を行った。6歳から11歳までの人に関しては、現在行っている治験データから投与量など決め、今後数週間以内に開始したいとしている。
イギリスではこのような治験を含め、ステロイド薬が重症者の治療に有効だと確認するなど新型コロナウイルス感染症に関する研究が進んでいる。その背景には、これまで培われてきた感染症研究の実績や人材が集まっていることだけなく、イギリス国内で感染が拡大し、多くのデータが集まったことが大きい。

感染収束への鍵は子どもへのワクチン接種?!
今回の治験研究グループのリーダーの1人であり、小児科医のリン・ソング医師は子どもへのワクチン接種が将来的には感染収束に向けた一つの要素になる可能性があるという。
リン医師は「このウイルスは子どもを介して他人を感染させることがわかっている。子どもへの接種が進めばその感染力をおさえることになり、パンデミックの収束に一役買う可能性がある」と語る。
また、リン医師は集団免疫を獲得するには、感染媒体になり得る子ども達へのワクチン接種が最終的には必要になるとの見解を示した。
治験開始から2週間が経過し、リン医師はまだデータを集めている段階なので公表できるものはないとしながらも、これまでのところ非常にうまくいっており、夏頃には暫定的な結果が得られるとしている。

実際に治験に参加した人は
今回取材したのは、この治験のボランティアに応募したオックスフォード近くに住む兄妹で、2月17日に1回目の接種を終えた。二人とも副反応があったという。
リリーメイさん(14):
「接種した当日熱が出た。その後もいつもより疲れやすいと感じた」
兄のロックランさんも接種当日は疲れを感じたという。接種から2週間が経ったが2人とも体調に問題はないと話しているが、治験に参加することに不安は無かったのか聞いた。
ロックランさん(17):
「信頼しているから不安はなかった。それよりも子ども達のワクチン接種に向けて、この治験に参加できることが嬉しかった」
リリーメイさん(14):
「子どもにもワクチンを接種できると知る助けになればと思う。そして子ども達を守ることにつながって欲しい」
リリーメイさんは1カ月後に、ロックランさんは3カ月後にそれぞれ2回目の接種を行い、その後は血液検査などで経過を観察するということだ。

実用化はまだ先だが、子ども達の命を救うための治験
ロックランさんやリリーメイさんを含む治験参加者のデータは1年をかけて集め分析される。実用化については、変異ウイルスへの対応も必要になる可能性があり、まだ遠い話だという。その上で、リン医師は幼い子どもの重症化や死亡から守る効果が確認できれば「ワクチン接種を勧めていきたい」と話し、子ども達の命を救うための治験になることを小児科医としてのゴールに見据えていた。
【執筆:FNNロンドン支局 小堀孝政】