ふるさと納税をした本当の理由

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ふるさと納税をしてしまった。岡山県赤磐市に7万円寄付すると白桃8個とシャインマスカット2房が届いた。特に白桃は冷やして食べるとジューシーで本当に美味しかった。娘は大喜びだった。

やり方は簡単だった。スマホで検索してふるさと納税のサイトを適当に選び、自分の年収を入れると、年間の寄付の限度額を教えてくれる。あとはカタログショッピングのように好きな返礼品を限度額以内で選ぶだけでかかる費用は2000円。寄付したお金は全額返ってくる。

ざっくり言うと年収700万円の人は7万7千円まで寄付できる。返礼品は寄付額の3割以内なので、2万3千円分の返礼品がもらえる計算だ。

美味しい桃とシャインマスカットを食べたい、というのが赤磐市に寄付した第1の理由。

実は赤磐市というのは初めて聞く地名で、従って思い入れもない。白桃とシャインマスカットの返礼品が岡山の他の自治体に比べて「割が良かった」ので赤磐市に寄付しただけだ。これが理由の2番目。

3番目は、僕の払っている住民税の額に比べて東京都や僕が住む区から受けている公共サービスが少なすぎるという不満である。で、東京都と居住区に復讐するために税金を他の自治体に移したというわけだ。

総務省HPより
総務省HPより

これがふるさと納税の実態である。節税してカタログショッピングを楽しんでいるくせに、あたかも善行をしたような顔をして、おまけに居住地の行政に復讐する、こんなに楽しいことはないが、何かおかしい。

これを考えたのは総務官僚らしいのだが天才だと思う。ただ天才が考えた悪魔のシステムだ。これを利用して金儲けをたくらむやつがいっぱい出てきた。

不良自治体と悪徳業者は排除せよ

一番問題になっているのは大阪の泉佐野市などが、自分たちの特産品でないもの、たとえばAmazonのギフト券などを返礼品にして荒稼ぎし、国から参加を除外されたことだ。泉佐野市は第3者機関に訴え、来月その結論が出る。

Amazonのギフト券は論外なので泉佐野市のような「不良自治体」はふるさと納税に参加させてはいけない。制度の根幹が崩れる。元気なのに病院に行って保険でたくさん薬をもらうのと同じだ。モラルがなくなると崩壊する。

総務省と大阪・泉佐野市が“直接対決”(2019年7月)
総務省と大阪・泉佐野市が“直接対決”(2019年7月)

天才が作った悪魔のシステムを改良せよ

ただ一つ気になることがある。以前、ある小さな自治体が自前の特産品でふるさと納税を前年の税収を上回るほど荒稼ぎし、小学生全員にタブレット端末を配布した、というニュースを見て驚いたことがある。

特産品はあるところもあればないところもある。子供の住んでいるところの桃が美味しかったらタブレット端末をもらえ、特産品が何もない所だからもらえませんでした、というのは変だ。

税金というのは公平に使われなければいけないのではないか。特産品のない地域に住む子供がいい教育を受けられない、というのはおかしくないか?

そう考えると、天才が考えたこのふるさと納税はもう少しシステムに改良を加える必要があるだろう。まずシステムの不備を利用して荒稼ぎする不良自治体やそれに群がる悪徳業者を厳密に排除することである。

第2に返礼品を寄付額の3割にまで下げたが、さらに下げてもいいのではないか。2割でも、利用者からすると十分に楽しい。

第3に自治体ごとに寄付を受ける額に上限をつけられないか。これまでの税収の倍以上も稼ぐ自治体が現れるのはちょっと異常である。自治体がそういう財政運営をするべきではない。

ふるさと納税は地方創生策だが、実はもっと大きな側面がある。それはこれまで税金を取られるだけだったサラリーマンにとって、初めて税金を取り返す、つまり反撃する機会を得たということなのだ。こちらの側面の方が重要かもしれない。

ただ住んでいる町で美味しい桃が採れるか採れないかによって、教育や福祉など住民が等しく受けるべき権利に差が出てはいけないのだ。

【執筆:フジテレビ 解説委員 平井文夫】

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平井文夫
平井文夫

言わねばならぬことを言う。神は細部に宿る。
フジテレビ報道局上席解説委員。1959年長崎市生まれ。82年フジテレビ入社。ワシントン特派員、編集長、政治部長、専任局長、「新報道2001」キャスター等を経て現職。