天皇陛下は23日に61歳の誕生日を迎え、記者会見でオンラインを活用した活動を重ねた1年を振り返り、コロナ禍に直面する国民に心を寄せられた。

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以下が会見全文

「コロナ禍を忍耐強く乗り越える先に,明るい将来が開ける」

--新型コロナウイルスの感染拡大により,皇室の活動も制限され,天皇陛下が多くの国民と交流される機会が減りました。国民との直接のふれあいが難しい中,陛下は皇后さまとご進講を重ね,オンライン行幸啓を始めたほか,元日には国民に向けたビデオメッセージも公表されました。感染症の影響が長期化する中で,コロナ禍の天皇や皇室の在り方,今後のご活動の方針について,どのようにお考えでしょうか。新しい取り組みについてのご感想とともにお聞かせください。

天皇陛下の会見 2月19日 赤坂御所
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日本の歴史の中では,天変地異や疫病の蔓(まん)延など困難な時期が幾度もありました。これまでの歴代天皇の御事蹟(せき)をたどれば,天変地異等が続く不安定な世を鎮めたいとの思いを込めて奈良の大仏を作られた聖武天皇,疫病の収束を願って般若心経(はんにゃしんぎょう)を書写された平安時代の嵯峨天皇に始まり,戦国時代の後奈良天皇,正親町天皇など歴代の天皇はその時代時代にあって,国民に寄り添うべく,思いを受け継ぎ,自らができることを成すよう努めてこられました。

その精神は現代にも通じるものがあると思います。皇室の在り方や活動の基本は,国民の幸せを常に願って,国民と苦楽を共にすることだと思います。そして,時代の移り変わりや社会の変化に応じて,状況に対応した務めを考え,行動していくことが大切であり,その時代の皇室の役割であると考えております。

 国民を思い,国民に寄り添う点で,災害で被災された方々,障害者や高齢者,あるいは社会や人々のために尽くしてこられている方々にも心を寄せ,ねぎらい,励ましていくことはとても大切なことです。それは,私と雅子二人の自然な気持ちであるとともに,皇室としての大事な務めであるとも思います。

2月2日撮影 赤坂御所

この1年は,コロナ禍に翻弄されてきました。愛する方を失った御家族や御友人のお悲しみはいかばかりであったことでしょう。心から哀悼の意を表します。また,コロナ禍の閉塞感からでしょうか,自ら命を絶つ人が増えていることも極めて痛ましいことで,皆で何とか防がなくてはなりません。

その一方で,強い使命感を持って医療に取り組んできた方々や保健所などで現場の対応に当たってきた関係者を始め,高齢者や障害者など,社会的に弱い立場にある人々を支えてきた関係者や,子供食堂のような,困難な状況に置かれた子供たちを支援してきた関係者など,多くの方々からお話を伺う機会を得,皆さんの有り難い尽力に思いをより深く致しました。このような方々に対し,国民の間で感謝の念を広く共有することができた1年となりました。

このところ,新規感染者の数は,幸いにして全国的に減少傾向に転じているようです。また,新型コロナウイルスワクチンの接種も始まりました。今しばらく,国民の皆さんが痛みを分かち合い,協力し合いながら,コロナ禍を忍耐強く乗り越える先に,明るい将来が開けることを心待ちにしております。

 同時に,現在の状況を見ると,新型コロナウイルス感染症の影響により,多くの国民の皆さんと直接触れ合うことが極めて難しくなっていることを,私たち二人も残念に思っております。

このような状況の中で,人々とのつながりを築き,国民の皆さんの力になるために,私たちに何ができるかを考え,宮内庁とも相談して,オンラインでの交流の可能性が検討されました。

昨年8月には「新型コロナウイルス感染症大流行下の水防災に関する国際オンライン会議」にお誘いを頂いて,オンラインで聴講し,会議後に,参加者の方々ともオンラインでお話ししてみたところ,臨場感があり,人と人とのつながりを肌で感じることができました。そこで,その後,更に検討を重ね,昨年秋以降,オンラインで日本赤十字社の医療現場,高齢者や障害者の仕事や活動の場,そして,今年に入ってからは,昨年7月の豪雨災害の被災市町村を訪問し,それぞれ,関係者の皆さんとお話をすることができました。

九州豪雨の被災地をオンラインご訪問 1月27日 

このオンライン訪問には,感染症対策としての利点以外にも,同時に複数の場所にいる人々に会うことや,中山間地域など通常では訪問が難しい場所でも訪問できるという利点があることを実感いたしました。

この1年は公務に様々な制約が生じ,例えば,新年の一般参賀を行うことも難しい状態でしたが,代わりに,ビデオメッセージで国民の皆さんに私たちの気持ちをお話しすることができたことも含め,オンラインによる活動に新たな可能性を見いだせたことは,大きな発見と言えます。

地方を訪問する際の駅頭や沿道も含めて,現地で多くの方々と同じ体験を共有し,その土地,その土地の雰囲気を肌で感じるなど,実際の訪問でなければ成し得ない部分はあるものの,感染が収束しない現状では,オンラインは有効な手段と考えられます。オンラインには,オンラインなりの課題もあるでしょうが,引き続き,状況に応じた形で活用していきたいと思います。

皇后さまと共に臨まれた新年のビデオメッセージ

--ご家族についてお尋ねします。皇后さまは療養が続く中でも,この1年多くの活動をされましたが,体調や様子について陛下はどのようにご覧になっていますか。愛子さまは今年で20歳になり,成年皇族の一員となられます。入学した学習院大学に通学できない中でのお過ごしようや父親としての向き合い方,将来の活動や結婚についてのお考えをお聞かせください。陛下は平成期,上皇さまと秋篠宮さまと定期的にお話する機会がありましたが,直接顔を合わせられない中でどのようにコミュニケーションをとられていますか。

雅子は,新型コロナウイルス感染症の感染拡大による活動への制約などから,体調を整えにくくなっている面はありますが,種々の工夫や努力を重ねながら,幸いにして,昨年も諸行事や諸儀式を滞りなく務めることができました。

2月2日撮影 赤坂御所

特に,昨年の5月から6月にかけては初めての養蚕に取り組んだほか,11月には立皇嗣宣明の儀・朝見の儀を無事に終え,また,新年のビデオメッセージでは,一緒に国民の皆さんに御挨拶ができたことを良かったと思っております。

ただ,雅子はいまだ快復の途上にあり,体調には波があり,大きな行事の後には,疲れがしばらく残る傾向があります。これからも,無理をせずにできることを一つ一つ着実に積み重ねていってほしいと思います。

また,雅子は私の日々の活動を支えてくれる大切な存在であるとともに,公私にわたり良き相談相手となってくれております。私も,今後ともできる限り雅子の力になり,支えていきたいと思っています。

国民の皆さんには,これまで雅子に温かく心を寄せていただいていることに,改めて感謝の気持ちをお伝えするとともに,引き続き雅子の快復を温かく見守っていただければ有り難く思います。

12月に成人を迎える愛子さまについて

昨年の4月から大学生になった愛子は,新型コロナウイルス感染症の影響により,オンラインでの授業が続いておりますが,昨年秋に初めて大学に登校した際に「大学では新しい知識を得たときに感じられる喜びを大切にしながら,様々なことに取り組んでいければと思っています」と語っていたように,大学での勉強に意欲的に取り組んでいることを私と雅子もうれしく思い,また,少し頼もしくなったように感じております。

オンラインでの授業では,課題もかなり多く,愛子もその一つ一つに一生懸命に取り組んでおり,大変そうですが,授業を準備される先生方の御苦労も大きいものと思いました。私たちも,愛子がオンラインで授業を受けているのをそばで見る機会もありましたが,私たち自身も,新たな知見を得ることができたり,何か学生時代に戻ったような気持ちになりました。今後,どのような状況の大学生活になるかは分かりませんが,愛子には,有意義な学生生活を送ってもらいたいと願っております。

2020年12月21日撮影 赤坂御所

愛子は,普段時間のあるときには,屋外で運動も少ししたりしていますが,家の中で過ごす時間も長いので,私たち家族3人で楽しく団欒(らん)する時間を大切にしてくれています。

また,早いもので今年の12月で成人を迎えます。愛子が誕生した時の会見でも申しましたが,孟子の言葉を参考にした「敬宮」「愛子」という名前には,人を敬い,人を愛してほしいという,私たちの願いが込められています。それは20年経つ今でも変わっておりません。今後,成年皇族として公務に当たっていくことになりますが,感謝と思いやりの気持ちを持って,一つ一つの務めを大切に果たしていってもらいたいと思います。

そして,いろいろな方からたくさんのことを学び,自らの考えを深めていき,また,今まで以上に,様々な経験を積み重ねながら視野を広げていってほしいと願っています。その過程で,将来のことも含め,私たちで相談に乗れることは,できる限りしてあげたいと思います。

上皇陛下や秋篠宮と直接会う機会が減っていることは残念ですが,上皇陛下や秋篠宮とは適宜連絡を取るようにしております。ただし,詳細については,回答を控えたいと思います。

上皇陛下,上皇后陛下には,新型コロナウイルス感染症の感染拡大にお心を痛められつつ,日々を送っておられることと拝察いたします。どうか御無理をなさらず,お身体を大切に,末永くお健やかにお過ごしいただきますよう心よりお祈り申し上げます。

上皇ご夫妻 2020年12月2日撮影