2011年3月11日の東日本大震災から、10年を迎えようとしている。この期間、被災地では持ち主が不明となった品物を「思い出の品」(震災拾得物)として保管し、本人や親族に返すための取り組みが続けられてきた。

だが、時代の流れでこの活動を終える自治体も出てきている。津波で甚大な被害を受けた宮城県気仙沼市もその一つで、2021年2月末で返却を終了するという。いったいなぜか。

今回は実物の拾得物が受け取れる最後の機会として、ご紹介したい。

気仙沼市の公式ウェブサイトより
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100万枚以上の写真を洗浄・保管

気仙沼市で拾得物の返却活動が始まったのは、2011年6月のこと。被災地域の復旧や復興、震災で職を失った人の雇用創出などを目的に、市が一般社団法人「気仙沼復興協会」(設立当初は任意団体)に委託する形でスタートした。

活動には多くのボランティアも参加した(提供:気仙沼市)

復興協会の職員らは、全国から集まったボランティアの協力を得つつ、被災地の清掃などを続けるとともに、所在不明の写真などを収集。洗浄や保管をし、仮設住宅を回ったり各地に展示するなどして、持ち主を探してきたという。

公民館などでの展示も行われた(提供:気仙沼市)

市によると、活動の成果もあり、累計の拾得物は写真が約100万枚、その他物品が約1万8000点にのぼり、このうち写真の約69万枚、物品の約1万3000点が返却されたという。

まだ多くの拾得物が保管されている(提供:気仙沼市)

一方で、損傷が著しく廃棄した分を除くと約11万枚の写真、約1700点の物品が現在も残っているともいう。

人々はどのような気持ちで思い出の品を求めたのだろう。そしてなぜ、2月末での返却終了を決断したのか。気仙沼市に実情を伺った。

震災から10年を一つの節目と捉えた

ーー震災拾得物の返却を始めた経緯は?

震災で多くの住居や建物が流出し、その拾得物は避難所などに集められました。それを持ち主に返したいという思いから、洗浄作業などを行うようになったこと。また、宮城県の災害廃棄物処理指針で、市町村は個人にとって価値があるもの(思い出の品)は一定程度保管し、持ち主に返すよう努めるように示されたことから、返却推進に努めてきました。


ーー実際にはどんな拾得物が集まった?

行方不明者の捜索やがれきの撤去作業、復旧事業などの際に拾得されてきました。集められた物の多くは写真ですが、それ以外でもトロフィーや賞状、位牌、置物などがあります。

実際に拾得された写真(提供:気仙沼市)

ーーなぜ、この2月末での返却終了を決断した?

震災から10年を一つの節目とし、2020年度で終了とさせていただきました。背景には展示を閲覧する人が少なくなっていることもありますが、あくまで数字的な区切りです。閲覧・現物の返却を2月末までとしたのは、3月を拾得物の整理と処分の期間とするためです。

思い出の品の返却事業は他の自治体でも行われていますが、国や県の指針では「いつまで」という期間が決められておりません。永遠に続けるところは難しいところもあり、皆さん悩みながら対応されているのではないでしょうか。

夢枕で写真を受け取りに来た人も

ーー活動で印象に残っていることは?

拾得物の写真を地元の新聞に掲載していただいた時期があるのですが、「ご先祖の命日に夢に出てきて新聞を見たら、写真が掲載されていてびっくりした」と、夢枕のような形で写真を受け取りに来た方がいました。また、津波で何もかも流されてしまった方が、ご自身に関係する写真などを見つけて、涙を流しながら喜んでくれたこともありました。


ーー返却期間が終了した後、拾得物はどうなる?

写真は震災以前の風景や文化を記録した民族資料として、気仙沼市内にある「リアス・アーク美術館」への移管を予定しています。写真以外の物品については、必要な供養や魂抜き(物体に宿った魂を抜く儀式)を行ったのちに処分する予定です。

10年の活動をまとめたパネル展も行われた(提供:気仙沼市)

ーーその後に拾得物を確認する方法はある?

2021年4月以降は市役所の危機管理課で、写真として保管されたデータの閲覧や印刷に対応する予定です。移管後は民族資料の扱いになるので、返却には応じられなくなります。

心当たりがある人は足を運んでほしい

ーー10年の振り返りと思いを聞かせて。

震災からはあっという間の10年でした。復興などいろんなことが進んでいますが、後ろも振り返りつつ、少しずつ前に進んでいければと思います。


ーー拾得物に関連して伝えたいことはある?

人々の中には、震災を思い出してしまうので見たくないという方もいると思います。ただ、実物が手に戻る最後の機会ですので、心当たりがある人は足を運んでいただければと思います。


2月末までの拾得物の返却は、気仙沼復興協会が窓口となる。今回の気仙沼市に限らず、思い出の品もいつかは扱いを考えなければならない時は来るだろう。何らかの心当たりがある人は、身近な自治体などに確認してほしい。
 

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