津波で流された思い出の品を集めた施設が、福島・浪江町にある。
東日本大震災から10年を経ても、多くの品が残され、持ち主が現れることを待っている。

福島・浪江町の「思い出の品展示場」
福島・浪江町の「思い出の品展示場」
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浪江町に7年前開設…2300点以上が持ち主へ

棚の上に整然と並べられた、品々…。津波に流され、がれきに埋もれ、この場所にたどり着いた。

棚の上に整然と並べられた思い出の品々
棚の上に整然と並べられた思い出の品々

思い出の品展示場・三浦由佳里さん:
がれき処理を請け負った会社が、木や燃えるもの、燃えないものと選別する中で、浪江町の思い出になるようなものがあれば、それも一緒に選別をするということで、ここに並べられるようになりました

福島・浪江町に7年前、開設された「思い出の品展示場」。
これまでに約1万7,000点の品が集められ、2,300点以上が持ち主の元に戻った。

約1万7,000点の品が集められ、2,300点以上が持ち主の元に
約1万7,000点の品が集められ、2,300点以上が持ち主の元に

ここにあるものは全て、発見されたあと一度洗浄され、放射線量を計って並べられている。
多くのものには、発見日や発見場所が記載されていて、持ち主が引き取りに来るのを待っている。

引き取らず処分も…持ち主の選択を尊重

この日、避難先の福島・いわき市から訪れた安倍敬子さん。
何度も展示場を訪れ、祖母の位牌や賞状、写真などを見つけた。

祖母の位牌や賞状、写真などを見つけた安倍敬子さん
祖母の位牌や賞状、写真などを見つけた安倍敬子さん

安倍敬子さん:
嬉しいっていうのとは、ちょっと違う感覚ではありますけど、良かったっていうか…。自分の生きてきた証っていうのは変だけど、生きてきた証拠というか、そういうものが少しずつ戻ってきているっていう感覚

“あの日”に残してきたものを探す。

安倍敬子さん:
これもそうなんです。マリンパークまで流れていっちゃったんですね

見つかった愛用のバック。自宅から少し離れた海沿いまで、流れ着いていたことが分かった。

見つかった愛用のバック
見つかった愛用のバック

安倍敬子さん:
茶色いバックは、大好きなバックだったんですよ

引き取ることもできるが、処分を決めた。

安倍敬子さん:
自分で処分するのも辛いしね…

思い出の品展示場・三浦由佳里さん:
待ってたから10年、持ち主に触ってもらうことを待ってたから。それで処分だったらそれは致し方ないし、良かったなって思います

処分を決めたバック
処分を決めたバック

3月に展示場閉鎖…思い出の品・1万5000点処分へ

多い時には、1日100人ほどが訪れていた展示場。
しかし、震災から10年…来場者は徐々に少なくなり、引き取られる品も大幅に減った。

いまも約1万5,000点が残る「思い出の品展示場」
いまも約1万5,000点が残る「思い出の品展示場」

運営する浪江町と環境省は「一定の役割を果たした」として、2021年3月に展示場を閉鎖。
全ての品物を処分する方針。

思い出の品展示場・三浦由佳里さん:
本当に多くの人に見ていただいて、1つでも多く持ち帰っていただきたいっていうのが、今の一番の気持ちです

この場所に残る思い出の品は、約1万5,000点。
持ち主との再会を待ちながら、10年目を迎えようとしている。

(福島テレビ)

福島テレビ
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