菅首相が2月2日に行った、10都府県への緊急事態宣言延長を発表する記者会見では、これまでの会見とは異なる点があった。それがパネルとプロンプターの使用だ。

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菅首相の背後に用意されていたパネルには1都3県への緊急事態宣言が決定された1月7日から、会見前日の2月1日までの全国と東京都の新型コロナの新規感染者数の推移がそれぞれ強調されていた。そして首相はこのデータをもとに感染者数が減少傾向であることを示し「国民の皆さんの御協力により、はっきりとした効果が見られはじめている」と説明した。

このパネルの使用について首相周辺は「菅総理自身の発案だ」と話している。前回、1月13日のコロナ対策に関する会見と比べると、感染者数の推移の細かな数字を言葉で説明することに加えグラフをパネルで示すことで、視覚的にもわかりやすく伝える効果はあがっていそうだ。

そして二つ目の変化がプロンプターの使用だ。会見台に立つ首相の左右に立てられた半透明の機器がプロンプターと言われるもので、記者やカメラ側からは半透明に見えるが、首相側から見ると原稿が映し出され、前を向いたまま事前に練った原稿を確認しながら読み進められる利点がある。

菅首相は就任以来、手元に原稿を置いて都度確認する、自身の官房長官会見時代のスタイルを続けてきた。しかし手元の原稿を確認する頻度が多いと、どうしても顔が下に向き、目線が下がり気味になることが多く、菅首相の思いが伝わらないなどと批判を受ける一因になっていた。そのため、テレビ映りを意識して安倍前首相のようにプロンプターを使った方がよいのではないかとの声が以前から出ていて、ついに今回それを受け入れた形だ。

会見の中でプロンプターを使用した理由を聞かれた菅首相は「従来より記者会見で、国民の皆さんにきちんと情報発信し、説明責任を果たしたいと思って臨んでいた。プロンプターについてもそうした観点からの一助になればといういろんな方からのお考えがあったので、今回初めて使わせて頂いた。受け止め方というのは皆さんがお決めになることでありますけども、機会に応じて活用していきたい」と語った。

国民からは、顔が見えることにより、首相から語りかけられているようでいいという声の一方、プロンプターを読んでいるのがバレバレだとの声もあり賛否両論のようだ。ただ、官邸関係者からは「目線を上げて雰囲気がガラッと変わっていた」との好意的な受け止めが比較的多く聞かれ、次回以降も使われる可能性が高まっている。

今後政府は、改正コロナ特措法と改正感染症法が施行される13日の前日12日に、感染が抑えられている一部地域について、緊急事態宣言を解除し「まん延防止等重点措置」に移行できるか判断する見通しだ。また順調にいけば17日にも第一弾のワクチンの医療従事者への優先接種が開始される見通しで、これらは政府のコロナ対策の重要な節目となる。

こうした節目に会見を行う可能性があるとみられる菅首相だが、国民も一体となってコロナに立ち向かう姿勢をアピールするためにも、新たなツールをどう使っていくかが問われる。一方で、官邸内から「見た目だけじゃなくて中身が伴ってこないといけない」との声も聞かれるように、国民へのアピール以上に、政府の具体的対策の内容がより重要であるのは言うまでも無い。

(フジテレビ政治部 亀岡晃伸)

亀岡 晃伸
亀岡 晃伸

イット!所属。プログラムディレクターとして番組づくりをしています。どのニュースをどういう長さでどの時間にお伝えすべきか、頭を悩ませながらの毎日です。
これまでは政治部にて首相官邸クラブや平河クラブなどを4年間担当。安倍政権、菅政権、岸田政権の3政権に渡り、コロナ対策・東京五輪・広島G7サミット等の取材をしてきました。