30歳を過ぎてから網膜の病気を発症

藤田芳雄さん:
私も最初は目が見えない人は何もできない人というふうに思っていましたが、少し頑張ってみると実はできることがたくさんあります

小学生に“挑戦することの大切さ”を伝えるのは、長岡市に暮らす藤田芳雄さん(72)。
優しい口調で話す藤田さんは、目が全く見えない。

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長岡市で鍼灸院を営んでいる藤田さん。光りの強弱も感じられず全く見えないなか、どのように施術するのだろうか。

藤田芳雄さん:
きちんと鍼を並べておいて、手を伸ばせばそこにあるという状態に。事前にセットしておくので全く問題ない

藤田さんは30歳を過ぎてから、少しずつ進行する網膜の病気を発症。だんだんと見えなくなり、人生を悲観したことも。

藤田芳雄さん:
死のうかなと思ったこともある

しかし、これまで支えてくれた人への感謝は数え切れないと話す。

藤田芳雄さん:
目が見えていたら無かったような色々な出会いがあって、徐々にではあるけど立ち直ることができた

マジシャンと出会い…日々本気で練習を

この日、藤田さんに会いに来たのはバーディ山井さん。
三条市を中心にマジシャンとして活動するバーディ山井さんは、3年ほど前から月に数回、藤田さんへマジックを指導している。

二人羽織のように手に手を添えての練習。そもそも、全く見えない藤田さんがなぜマジックを始めたのだろうか?

藤田芳雄さん:
マジックは見えないとおもしろくないと思うかもしれないが、マジックをやることは見えなくても楽しめる。“人が喜ぶということを楽しむ”ということかな

山井さんとの出会いは、マジックのボランティア講座だった。

バーディ山井さん:
最初は戸惑いがあった。大丈夫だろうかと思ったが、本人が『どこまでやれるか挑戦したい』のだろうから付き合おうかなと

当初はマジックをすぐに諦めると思っていた山井さんだったが、藤田さんが諦めることはなかった。本気で取り組む藤田さんに、教える山井さんも本気で応える。

バーディ山井さん:
厳しくしないと本人も納得できないでしょうから

藤田芳雄さん:
“障害があるからこんなものか”というのでは、見ている人がつまらないと思う。私だけじゃなく障害を持つ人はそうだと思う

山井さんが帰ってからも、藤田さんは自主練習を続けている。それも、毎日。

藤田芳雄さん:
人の3倍努力してやっと人並み。それが目が見えない人にとって当たり前かな

 “自分の努力が誰かの勇気になれば”と地道にマジックを練習し、2年前には山井さんの勧めで初めて舞台に立つまでに上達した。

小学校で久々のマジックショー

2020年7月9日、藤田さんの姿が長岡市の大島小学校にあった。これまで月に数回ほど学校や福祉施設でマジックを披露してきたが、新型コロナウイルスにより、この日は久しぶりの披露となった。

藤田さんのマジックショーに不可欠なのが、一枚の点字ブロック。立ち位置に置くことでネタの位置や、お客さんの方向を確認することができる。

藤田芳雄さん:
これで、まっすぐ子どもたちの方向が分かる。マジックのときに動いたりすると時々迷子になっちゃうので。これが私の武器

準備を終え、大島小学校3年生に向けた講演が始まった。

藤田芳雄さん:
今までで一番うれしかったのは、できないと思っていたことが、一つ一つできるようになったこと

そして児童お待ちかねのマジックショーに。
ところが、ショーの途中で箱が壊れるハプニングが!
しかし、こうしたハプニングも藤田さんは児童の学びにつながると考えています。

藤田芳雄さん:
私は失敗が大好き。失敗を恐れずに挑戦して最後まで諦めないこと

児童:
失敗しても、ちゃんとやり直したり、成功するまで挑戦したい

藤田芳雄さん:
目が見えない人、手足がない人、耳が聞こえない人。それぞれ一生懸命、自分ができる範囲で頑張っている

たとえ目が見えなくても…
マジックで見る人を驚かせる諦めない心には、種も仕掛けもない…。

(NST新潟総合テレビ)