福岡市博多区の教会で、約20年続く生活困窮者のための「炊き出し」。
生活困窮者の拠り所であるこの炊き出しの現場にも、新型コロナウイルスが影を落としている。

20年続く“炊き出し”もコロナ禍で一変

福岡市博多区の教会で毎週火曜日に行われている生活困窮者のための「炊き出し」。

美野島めぐみの家 瀬戸紀子理事長:
特にホームレスの方は、ご飯を食べる機会が少ないんですよ、パンが多くて。だから私たちがいる時は、とにかく栄養があって、火曜日は食事を食べて良かったと思われるように一生懸命作っています

美野島めぐみの家・理事長
美野島めぐみの家・理事長
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約20年前から行われているこの炊き出し。
2008年のリーマンショック後には大勢の人が行列を作り、施設内で肩を寄せ合うようにして食事をとっていた。

肩を寄せ合い、炊き出しの食事をとる
肩を寄せ合い、炊き出しの食事をとる

新型コロナは、この炊き出しの光景も一変させた。

ボランティア:
緊急事態宣言になったので、これ以上密になるとちょっと困るので、お弁当にしました

密になりやすい炊き出しは、弁当配布に変更。

栄養たっぷりのお弁当
栄養たっぷりのお弁当

枝豆ご飯のほか、里芋や唐揚げも入って栄養満点だ。

弁当配布の10分前…。
教会の入り口では、訪れた人たちの「検温」と「手の消毒」が行われていた。

建物に困窮者を入れる。
10人ずつ、間隔を空けて建物に入ってもらう。これも新型コロナ対策の1つ。

「就職できない」「仕事がない」

弁当をもらいに来た男性に話を聞くことができた。

ーー仕事がしたくてもできない状態ですか?

求職中の男性:
2種免許を持っているんですが、コロナのためにちょっと

再就職先を探しているという男性。
新型コロナの影響で、なかなか見つからないという。

求職中の男性:
タクシーの運転手をしていたんですけどね。2年間 仕事を休んでいて、収入がないんですよ

新型コロナによってタクシーは客足が激減。どの会社も採用には後ろ向きだという。

求職中の男性:
会社も大変ですしね、タクシーにお客さんが乗らないですよね。夜の人は大変ですね、中洲が死んだから売り上げも難しいですね。最低限の生活が出来るようになればいいと思っていますね

アルミ缶を回収して業者に売ることで生計を立ててきた女性。

弁当をもらいに来た女性:
14年前からやってるけど、厳しくなってるから…。
Q.アルミ缶の買い取り価格が下がっている?
下がってます。
Q.どれぐらい?
100円から50円に下がった。何で落ちているか分かりません

新型コロナの感染拡大で、アルミを含む非鉄金属の需要も落ち込むとの見方が広がり、先物市場での価格が下落。
品質が劣化しにくく加工もしやすいことから、「リサイクルの優等生」とも呼ばれるアルミの買取価格も約半分に落ちているという。

弁当をもらいに来た女性:
そやけん、生活もビクビクになるから。これ以上になったら食べ物はないと思う

ボランティア:
とにかく1日1日、彼らに対して心を込めて、みんなが健康であるように。コロナにならないように一生懸命作っています

生活困窮者へ情報が届かない現状

一方、NPO「福岡おにぎりの会」が、毎週金曜日の夜に福岡市の公園などで行っている炊き出し。この日の炊き出しは豚汁。約40人が集まった。

冷泉公園:福岡市博多区
冷泉公園:福岡市博多区

ほとんどが60代、70代…。
その理由をNPO理事長に聞くと、炊き出しの情報が常連の人たち以外にうまく行き届いていないことを挙げる。

福岡おにぎりの会 郡島俊紀理事長:
コロナで(炊き出しを訪れる)新しい方たちっていうのは、多分ここであっている(炊き出しをしている)ことをご存じないと思う。そういった情報が入った冊子も作っているんですけどね。これをお渡しする機会がないと、どこで炊き出しがあるとかいうのも分からない

福岡おにぎりの会・理事長
福岡おにぎりの会・理事長

理事長は、コロナ禍で新たに生活困窮者となった人たちにも支援に関する情報が届くような環境づくりが今、必要だと強調する。

必要な人に必要な情報が届かない…
必要な人に必要な情報が届かない…

生活困窮者の拠り所である、炊き出しの現場にも影を落としている新型コロナ。
その闇は日に日に濃くなり、全く先が見通せない状況となっている。

(テレビ西日本)

テレビ西日本
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