政治・経済の情勢や生活情報、地域の身近な話題など、さまざまなニュースを届ける新聞。
人々の生活に必要な情報を伝える上で、最近は新型コロナウイルスに関する報道が大きな役割を担うが、デジタル社会が急速に進む昨今、大きな岐路に立たされている。

日本新聞協会のまとめでは、一般紙・スポーツ紙を含めた全国の新聞発行部数がこの20年で3割以上も減っていて、今や全世帯の4割近くが新聞を購読していないのが現状。

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販売店は、読者の減少に歯止めがかからない状況を肌で感じている。

琉球新報泡瀬中央販売店・玉城雄二代表:
ここ数年、すごいスピードで読者の減少が続いています。販売店の収入は新聞から得られる読者からの代金と、新聞配達をすることによってチラシという広告収入が大きいところがあって、不安を口にする販売店主も多い

専修大学 人文・ジャーナリズム学科 山田健太教授:
自分が知らない、通常関心を持たないような情報が毎朝届く。新聞によって知ることができる貴重な機会だった。しかし今日、SNSに頼る状況になって、わかりやすさ優先による「思考停止社会」とも言われる。マスメディアが消失する危機があるのではないか

電子版を買ったら新聞がついてくる

沖縄のニュースを日々送り出す地方紙、琉球新報。
2020年11月にデジタル推進局を立ち上げ、新たな目玉として、それまで有料としていた電子版のセット販売…いわば“無料化”を打ち出した。

琉球新報デジタル推進局・滝本匠局長:
紙を読んで頂く皆さんには、デジタルも(無料で)読んで頂けますよと。逆にデジタルでしか読まないという方々には、新聞も同じ値段でセットで付いてくる

電子版を無料化したのは、これ以上の読者離れを食い止めると共に、新たな読者の開拓につなげる戦略がある。

琉球新報デジタル推進局・滝本匠局長:
全世界どこにいても、朝5時になると琉球新報を読めるというのがデジタル(電子版)の強み。ホームページにアクセスする方の傾向を見ても、本土の皆さんが多い。世界のウチナーンチュ(沖縄県系人)の方もいる。沖縄の状況を伝える大きなチャンネルになるのではないかと期待している

AI(人工知能)がニュースを音声で伝える、新たなコンテンツも始めた。

琉球新報デジタル推進局・田吹遥子記者:
家事をしながら、歩きながら、何かをしながらニュースを聞く人に届けられたらと思って。幅広いニーズにニュースを配信するための取り組みです

これまでも県内のニュースを、Yahoo!ニュースやLINEなど様々なプラットフォームを通して配信してきた琉球新報。

「誰のために書くのか」思いを伝える記者

報道する側の“思い”や取材の裏側をつづる「記者コラム」の連載も、ウェブ限定でスタートした。

琉球新報デジタル推進局・滝本匠局長:
(会見で)記者は何を聞いているんだという批判がネットで起こっていて、取材姿勢も含めて問われている。新聞や報道の世界での信頼性が落ちてきていると言われる中で、「われわれはこう取材して、こう記事を書く」という過程を見せるのは非常に大事なことと思って

権力を監視し、民主主義の根幹とも言うべき「知る権利」に応えるジャーナリズム。
メディアが変化していく時代にあっても、その本質は変わらない。

専修大学人文・ジャーナリズム学科山田健太教授:
基地経済によって沖縄経済が支えられているとか、普天間基地は誰も住んでいなかったという”フェイク情報”がネット上で拡散していた。沖縄の2紙を中心に、多くの人達に対して本当の情報を伝え続ける意味合いは非常に大きかった。
新聞社・テレビも含めて、トータルとしての報道機関自身が努力することが前提だが、皆で支えていく。それが”民主主義のコスト”だということを理解することが求められている

沖縄の地元紙は戦前戦中に大本営発表や軍部からの情報を“垂れ流し”し、「戦争に加担してしまった」ことの反省を原点に、戦後 歩み直した。
今に続く米軍基地問題をめぐる取材・報道などに、その姿勢は表れている。

琉球新報デジタル推進局・滝本匠局長:
市民目線、民衆目線で「誰のために書くのか」というのは叩き込まれている。その魂は変わらずに、新しいモノを皆さんにお届けできるのではないか。「今日は何があるのかな」というのをワクワクして(新聞を)待っていただければと思います。そういう情報を、われわれも届けていきたい

若者を中心とする活字離れと、急激なデジタル社会の大波に晒され、生き残りをかける新聞業界。
ジャーナリズムの灯をともし続けるために、試行錯誤しながらも前を向く。

(沖縄テレビ)

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