閑散とした空港 徹底した感染予防対策

感染拡大が深刻なヨーロッパで新たに変異ウイルスなどの影響が広がっている。各国がロックダウンや入国規制の強化など感染防止に躍起となる中、フランス・パリ行きの国際便に乗ると、機内では徹底した感染予防対策が行われていた。

チェックインカウンターでは様々な感染予防対策が
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搭乗したのは年の瀬も押し迫る2020年12月29日の日本航空・羽田発パリ行き便。午前8時、羽田空港の国際線ターミナルは閑散としていた。年末年始を国外で過ごすため、例年多くの家族連れなどで賑わうが、航空会社のカウンターに行列はなかった。

客は少ないが、様々な形で予防対策がとられていた。ソーシャルディスタンスを促す注意書きが各所に設置されているほか、航空会社が用意する車椅子やベビーカーには「消毒済み」の文字が。一つおきに開設しているカウンターにはそれぞれ除菌液が設置され、アクリル板越しに立つ職員は全員マスクはもちろん、中にはフェイスシールドを着用している職員もいる。

本人確認は一人一人マスクを外す

客も皆マスクを着用しているため、パスポートの本人確認の際はマスクを外すよう求められる。また、フランス入国には現在、発熱や風邪症状、味覚障害などがないことを証明する宣誓書の提出が義務づけられていて、これを提出しないと飛行機に乗ることはできない。改めてコロナの世界的な蔓延を実感した。

保安検査と出国審査を通過し、搭乗ゲートへ進むと、こちらも年末の空港とは思えないほどがらんとしている。パリ便の搭乗口でフェイスガードを付けた職員に迎えられ、改札を抜けて機内に入る。

搭乗ゲートも従来とは違う光景だ

機内サービスに変化 乗客との接触機会を最小限に

機体が滑走路へ向けて動き出すと、早速機内のアナウンスが流れる。

「新型コロナウイルスへの対応として機内食などの衛生管理や必要に応じて機内の消毒を行うなど環境整備を行っています。」
「お客様に安心してお過ごし頂くため飲食時以外はマスクの常時着用をお願いします。」

エコノミークラスで配られる紙おしぼりも全て個包装

離陸してしばらくすると、機内サービスが始まった。客室乗務員は全員マスクにゴーグル姿で、ビニール手袋も付けている。離陸後のくつろぐ時間だが、どこか落ち着かない。しかしこれも新たな様式だと納得する。

そして配るのは個包装で使い捨ての紙おしぼり。ビジネスクラスなどでは従来、熱々のタオルのおしぼりを提供していたが、感染予防のため変更したという。またビールなど、缶で提供する飲み物はこれまでコップに注いで乗客に手渡していたが、今は開けずに缶のまま渡している。

食事はどうか。
ビジネスクラスではこれまで、一部料理を提供する直前に温めて機内で盛り付けている路線もあったが、今は完成された状態で積み込み、フタを外さず提供している。パンは温かいものをトングで一つ一つ提供していたが、こちらも個包装されたものだ。また軽食は、これまでは乗客の注文を受けてからラーメンやカレーなどを機内で調理していたが、現在はカップ麺やレンジで温めるパスタなどに切り替えたという。エコノミークラスも含め、いつでも飲めるようにギャレーに常時置かれていた飲み物も、今はない。

ドリンクと食事は同時に提供される(エコノミークラス)

一方、乗客との接触機会を減らす工夫もなされていた。ドリンクや食事、アイスやお茶など、その都度別々にサービスが行われていたが、今はドリンクと食事、アイスとお茶をそれぞれ同時に配っていた。これらの対策はエコノミークラスでも同様に徹底して施されており、行き届いたサービスを懐かしむ一方、「効率的」という点ではこれもいいのでは・・・ふとそのようにも感じた。

厳格な衛生管理 過酷なトイレ清掃

衛生管理には特に神経を使う。

乗務員はこまめにビニール手袋を交換、消毒を行い、廃棄する。ゴミ袋は毎回新しいもの使うため、手袋もゴミ袋もその消費量は膨大だという。

使用済みビニール手袋を入れたゴミ袋はその都度廃棄される

なかでも感染リスクの高いトイレ清掃は過酷を極める。全身を覆うビニールのガウンに、二重の手袋、さらにゴーグルとフェイスシールドを着用し、消毒液を使って隅々まで磨く。一つの個室の清掃に要した時間はおよそ8分。30分に1回の巡回とは別に、こうした大掛かりな清掃は約12時間のフライト中に5回ほど行われた。ヨーロッパで変異ウイルスの拡大が続くこともあり、引き続き感染防止対策を徹底していくという。

客室サービスの合間に行われる大掛かりなトイレ清掃

航空業界をめぐる厳しい環境は続く

新型コロナウイルスの影響で航空業界は大打撃を受けている。

この日の乗客は定員244人に対して42人。日本航空では減便率が国内便で41%、国際便で79%に上る。一日あたりに社員600人が自治体、物流、コールセンターや教育機関などに出向している。

感染リスクや、配置転換など苦境の中でも懸命に業務を続けている航空業界の人々。機内で話をした客室乗務員の言葉が印象に残る。

「お客様との接触回数は減らしていますがサービスの品質自体は下げていません。五輪開催に合わせて食器をリニューアルするなど準備をしてきましたが、新型コロナの影響でそうした取り組みのお披露目の機会が少ないのは本当に残念です。」

窓越しに広がるのはパリ郊外の風景

終わりが見えない新型コロナの収束と航空業界の苦境。
パリのシャルル・ド・ゴール空港、マスク姿の乗務員に見送られ機体を後にした。

【執筆:FNNパリ支局長 山岸直人】