電力の需給が全国的にひっ迫

全国的に厳しい寒さが続いていることなどから、電力の需給がひっ迫している。

全国の電力需給を調整している「電力広域的運営推進機関」によると、1月15日の電力の供給力に対する需要の割合を示す「電力使用率」のピーク時予想は、以下のエリアで90%を超えている。

四国エリア:97%
中国エリア:95%
北陸エリア:91%
北海道エリア:90%


なお1月5日に首都圏や関西圏で、電力供給量に対する使用率のピーク時予想が90%程度とひっ迫し、電力広域的運営推進機関は翌6日、首都圏や関西などの発電事業者に対して、火力発電所などを最大出力で運転するよう求めるなどの指示を初めて出した

厳しい寒さでエアコンを使う機会も増えた(画像はイメージ)
厳しい寒さでエアコンを使う機会も増えた(画像はイメージ)
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また、電力大手10社で構成する「電気事業連合会」(=電事連)は1月10日、電力需給のひっ迫を受け、ホームページを通じて、節電への協力を呼び掛けた

暖房などで電気を使う量が増えたかもしれないが、最大出力で運転するよう初めて指示を出すほど電力の需給がひっ迫しているのはなぜなのか? 電力広域的運営推進機関の担当者に話を聞いた。

電力の需給がひっ迫している理由

――電力の需給がひっ迫しているのはなぜ?

去年12月中旬以降、寒冷な気象条件が継続したことなどの影響で、電力の需要が増加する一方、供給力・調整力として大きく依存しているLNG(液化天然ガス)火力発電が燃料の制約により、持続的な供給力(発電電力量)が低下しています。

こうしたことなどから、年明けから、東京電力パワーグリッド管内、関西送配電管内などにおいて、厳しい電力の需給状況が継続していると認識しております。


――LNG火力発電の燃料が、なぜ制約されている?

寒冷な気象条件などにより、LNG火力発電の計画を上回る稼働が継続していることにより、燃料の在庫が減少していることが考えられます。


――首都圏や関西などの発電事業者に対して、火力発電などを最大出力で運転するよう求める指示を初めて出した。その理由は?

寒冷な気候条件が続いたことなどによって、各エリアの需給バランスを保つ調整力電源の供給力が不足したためです。

画像はイメージ(天然ガス発電所)
画像はイメージ(天然ガス発電所)

緊急事態宣言でさらにひっ迫?

12月中旬ごろから寒冷な気象条件が続いたことなどで電力の需要が増加。LNG火力発電の計画を上回る稼働が継続し燃料に制約がかかったことが、電力の需給のひっ迫につながる一つの要因となったようだ。

また現在、11都府県に緊急事態宣言が発令されている。

これにより外出自粛の要請やテレワークが推進され、自宅で過ごす時間が増える。さらに電力の需給がひっ迫する可能性はあるのか? 電力の需給が安定するのはいつ頃になるのか?

電気事業連合会(=電事連)の広報担当者にも話を聞いた。


――あらためて、電力需給のひっ迫状況を教えて

去年12月下旬以降、全国的に厳しい寒さが続いており、例年に比べ、電力需要が大幅に増加しております。1月8日には、西日本を中心に全国7エリアで最大需要が10年に1度程度と想定される規模を上回りました。

一方、供給面では、悪天候により太陽光発電などの発電量が低下する日も少なくありません。

こうした中で、電力各社においては、日ごろ稼働していない高経年化火力発電所(=機器や材料が長期間使用されている火力発電所)を含めた、あらゆる発電所をフル稼働させるなど、供給力の確保に全力を尽くすとともに、電力広域的運営推進機関と連携しながら、需給ひっ迫エリアへの広域的な電力の融通を行い、現段階では安定供給を確保しております。

電気事業連合会においても、それらの取り組みに対する支援を行うなど、安定供給の確保に最大限の対策を講じているところです。

しかしながら、天候不順や厳しい寒さは今後も続くことが予想され、太陽光発電からの発電量も、多くは見込めない状況です。

また、高経年化火力発電所の稼働に伴い、トラブルが発生するリスクや、火力発電の発電量の増加に伴い、発電用燃料の在庫が少なくなるリスクが高まっている状況です。


――緊急事態宣言の発令によって、電力の需給がさらにひっ迫する可能性は?

去年4月に全国で緊急事態宣言が発令された際、最も需要が落ち込んだ5月の実績では、全国の使用電力量が前年から8%程度、減少しております。

家庭用でマイナス0.1%、業務用でマイナス14.3%、産業用でマイナス10.6%。

今回の緊急事態宣言に伴う要請内容や取り巻く状況などが異なるため、電力需要への影響について定量的に見通すことは困難となります。


――コロナ禍で電力の使い方に変化は見られる?

去年11月の全国の使用電力量は、前年と比較して2%程度減少しております。

これは、新型コロナウイルスの感染拡大などにより、業務用・産業用の需要が減少したことが影響したものと考えられます。

また、12月以降の全国の使用電力量は、現時点で用途別の内訳などを把握できておりませんが、経済活動などの制約は完全な解消に至っていないと考えられることから、引き続き、一定の影響は出ているものと認識しております。

なお、「電力広域的運営推進機関」の統計では、去年12月の全国の電力需要の実績は、前年と比較して4%程度、増加しております。

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電力の需給が安定する見通しは?

――今冬は電力の厳しい状況が続きそう?

寒波による影響や、追加の燃料調達が困難な状況がいつ改善されるのかを見通すことは難しいです。

ただ、皆さまからの電気の効率的な使用のご協力に加えて、引き続き、供給力確保に努めることにより、可能な限り、早期に安定供給を確保できるよう、全力を尽くしてまいります。


――電力の需給が安定する見通しは?

全国でLNGなどの燃料の在庫の積み増しが進み、一定の予備力が確保され、安定供給できる見込みが立てば、電気の効率的な使用のお願いを解除させていただきたいと考えております。


現在も電力の安定供給が見通せない、今年の冬。暖房をやめる必要はないが、使っていない部屋の電気を消すなど、できる限りの節電に皆が取り組んでほしい。

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プライムオンライン編集部
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