緊急事態宣言をやさしい日本語、英語で発信
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、緊急事態宣言の対象地域は11の都府県に拡大している。こうした中、東京・大田区では、緊急事態宣言に関する情報をチラシやSNSで外国人区民に向けて「やさしい日本語」や英語などで1月8日に発信している。
その内容がこれだ。
1がつ8にち、緊急事態宣言(きんきゅうじたいせんげん)が でました。外(そと)に出(で)るのは 必要(ひつよう)なときだけに してください。
— 大田区 (@city_ota) January 8, 2021
A State of Emergency was declared on Jan 8. Please avoid non-essential outings. pic.twitter.com/V7jjxsmhBc
~新型コロナウイルス感染症(しんがたころなういるすかんせんしょう)についてのお知(し)らせ~
緊急事態宣言(きんきゅうじたいせんげん)が出(で)ました。
大田区(おおたく)のみなさまへ
〇外(そと)に出(で)るのは必要(ひつよう)な時(とき)だけにしてください。
特(とく)に、午後(ごご)8時(じ)からは外(そと)に出(で)ないでください。
〇買(か)い物(もの)や病院(びょういん)など必要(ひつよう)な外出(がいしゅつ)も
時間(じかん)を短(みじか)くしてください
〇東京(とうきょう)から他(ほか)の場所(ばしょ)へ行(い)かないようにしてください

チラシはわかりやすい日本語で書かれており、漢字にはルビが振ってある。
内容は、不要不急の外出や都外への移動を避けることが説明されており、この他に、国や東京都などの多言語相談窓口等が紹介されている。また、同じ内容の英語版も作られている。

大田区は、このようなタイムリーな情報発信を行うことで外国人区民との情報格差解消に努め、
「誰一人取り残さない世界の実現」という国際的な流れを踏まえた施策を推進しているという。
日本語が得意でない外国人にとっては、今の状況が理解しづらく必要な支援が受けられていないことも考えられ、いい取り組みに思える。
それでは、実際に大田区の情報発信は外国人区民にきちんと届いているのか?大田区国際都市・多文化共生推進課の担当者に話を聞いた。
日本人区民との情報格差を少しでも減らしたい
――そもそも大田区はどのくらい外国人が住んでいる?
2021年1月1日現在で24,122人、127カ国・地域出身の外国人区民の方がお住まいになっています。23区内では、2020年1月1日時点の比較でみますと、7番目に外国人区民が多い区となっています。中国出身者が約8,500人と最も多く、以下、韓国約3,500人、フィリピン約2,500人、ネパール約2,300人、ベトナム約1,500人が上位5か国です。
――今回、緊急事態宣言が出されたことを外国人に向けて発信した理由は?
コロナ禍において、不安を抱えている外国人区民に対して、日本人区民との情報格差を少しでも減らしたいという観点から、昨年4月の緊急事態宣言発令の際から連日、新型コロナ対策の情報発信を日本語、英語、中国語の3か国語で行い、タイムリー、かつわかりやすい情報提供に努めています。現在は、新型コロナに関する区や都の相談窓口の紹介や生活支援情報に加え、台風情報などの災害情報についても、「やさしい日本語」を含む多言語で配信しています。
情報発信で外国人区民からの相談増加
――前回の緊急事態宣言時に外国人に届いていないという課題はあった?
必要な情報が確実に外国人区民に届くよう、前回の緊急事態宣言時には、大田区や区の外郭団体である国際都市おおた協会のホームページやツイッターでの多言語配信にとどまらず、「やさしい日本語」を含む多言語で、3密防止や相談窓口を周知するポスター・チラシを作成し、外国人区民が立ち寄りそうな多国籍飲食店や区内国際交流団体、キーパーソンとなり得る外国人区民等にきめ細かに配布しました。
その結果、区の相談窓口である国際都市おおた協会多言語相談窓口に「特別定額給付金はいつからもらえるのか」「勤め先が休業になり収入がなくなり困っている」などの相談が大幅に増えたため、外国人区民への情報提供不足という課題はだいぶ改善されたものと認識しています。
――外国人区民は緊急事態宣言をどこまで理解していると考えている?
前回の緊急事態宣言でのノウハウがあったため、今回の緊急事態宣言時には即座にホームページ、ツイッター、ポスター・チラシ等で多言語での周知に努めるとともに、区内国際交流団体、キーパーソンとなる外国人区民への情報提供・拡散を依頼しています。また、区内を回る広報車でも、やさしい日本語でのお知らせ広報もしているため、多くの外国人区民に理解をしていただいていると考えています。

外国人区民からは感謝の声
――大田区では、過去にも外国人区民に向けた取り組みは行っている?
大田区は、羽田空港を区内に有する自治体として、2008年に区の基本構想で「国際都市おおた」の実現を謳い、2017年には、全国自治体で初めて、「国際都市おおた宣言」を行いました。この方針に基づき、都内でいち早く、多文化共生推進プランの策定、多言語相談窓口の開設を行い、日本人区民も外国人区民もともに安心・安全に暮らせる、「国際都市おおた」推進のためのさまざまな取り組みを長年行っています。
――今回の発信、外国人区民からの反応はあった?
ツイッターのリプライで、外国人区民の方から多言語でのお知らせに対し、感謝の声をいただいております。
とうきょうと がいこくじん しんがた コロナ(COVID-19) せいかつ そうだん センター
— 大田区 (@city_ota) January 11, 2021
Tokyo Coronavirus Support Center for Foreign Residents
东京都外国人新型冠状病毒生活咨询中心
がいこくごで でんわで そうだんできます。おかねは かかりません。 pic.twitter.com/XDD4U2yBec
やさしい日本語や英語で外国人住民のために情報発信する大田区の取り組み。
経験したことのない状況に不安が続く中、日本に住む外国人住民の情報格差解消に向け、ぜひ他の自治体も参考にして欲しい。