ビジネス関係者の入国制限緩和措置の一時停止を要請

「国民の共感を得るためにもビジネストラックを一時停止するべきだ」

12日に開かれた自民党の外交部会で、政府の水際対策を批判する声が相次いだ。

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「一時停止」を要求されているビジネストラックとは、日本が中国や韓国などと取り決めた、ビジネス関係者の入国について例外的に制限を緩和する措置だ。主に短期出張者向けのもので、入国後14日間の自宅等での待機中も行動範囲を限定した形でのビジネス活動が可能となる。

部会では、「緊急事態宣言で国民が我慢しているのに、なぜ外国人を入れるのか」「早く感染を収束させるのであれば外国からウイルスを入れないのが大事だ」など批判が噴出、また2月中旬から中国で春節が始まることを念頭に厳しい対応を取るべきとの意見もあった。

水際対策強化も「入国後の行動確認甘い」

政府は変異ウイルスの感染拡大を受け、水際対策を強化してきた。昨年末には、全世界からの外国人の新規入国を原則拒否することを決定した。しかしこの際、ビジネストラックによる入国者は例外としている。

そして今月、緊急事態宣言に伴い水際対策をさらに強化。海外から日本に入国する人全員に出国前72時間以内の陰性証明書の提出とウイルス検査を求め、出国前と入国時の2回検査を行うこととなった。これにより、中国や韓国など一部の国と地域から入国するビジネス関係者らに対してこれまで原則求められていなかった入国時のウイルス検査も行われるようになり、他の入国者と同様の「2回検査」を行うこととなった。

しかし、入国後の対応については、ビジネストラックは他とは異なっている。日本への入国者は全員、入国時に接触確認アプリのダウンロードや位置情報の記録について誓約した上で、入国後14日間は自宅などで待機し公共交通機関は使用しないことが求められる。

一方、ビジネストラックでの入国者は接触確認アプリのダウンロードや公共交通期間の不使用は変わらないが、日本での活動計画書を提出した上で、宿泊先と会社の往復など行動範囲を限定した形でのビジネス活動が可能となっている。

「ヒゲの隊長」のニックネームで知られる自民党の佐藤正久外交部会長は8日に自身のツイッターで「春節に併せて観光兼ねたビジネスマンが来る可能性と入国後の行動確認が甘いまま。緊急事態の今は変異株阻止を重視すべき」と指摘した。

与野党から「入国一時全面停止」の声 7500超の「いいね」も

佐藤氏はその後もツイッターに、ビジネストラックを停止すべきだとの意見を以下のように連日投稿した。

「月に約5万人以上入ってくる外国人ビジネストラック等を一時停止すれば、その検査医療資源は国内対策に振り向けも可能」(1月9日)

「今は国内に変異種を入れない為にも、性悪説に立ち、ビジネストラック等外国人の入国を止めるべき時期」(1月10日)

「ビジネストラック含め入国後の14日間の行動を政府は実質的に把握出来ていない。水際対策の穴の一つ」(1月11日)

1月9日のツイートには7500を超える「いいね」がついた。

立憲民主党の蓮舫代表代行も「昨年の春節時に中国全土からの日本入国を止めなかった反省に何も学んでいません。日本入国一時全面停止を求めています」とツイートし、政府の水際対策を批判した。

14日間待機中に会食で感染…実効性に疑問 青山氏提言に岡田副長官は“検討開始”

菅首相は年頭の記者会見で「ビジネストラックについても相手国の国内で変異種が発見された際には、即時停止することにする」と述べている。しかし感染がさらに拡大し、変異ウイルスの懸念が高まる中、ビジネストラック停止論は高まっていて、自民党内からは「『君子豹変す』で菅総理にビジネストラックの停止を決断して欲しい」との声が出ている。また「緊急事態宣言を理由に停止すればいい」との意見もある。

こうした中、自民党内の保守系議員グループ「日本の国益と尊厳を護る会」を束ねる青山繁晴参院議員は12日夕方、首相官邸の岡田官房副長官を訪ね、“ビジネストラック・レジデンストラックを即時完全中止すること”を強く求めた。青山氏によると、岡田副長官は「検討を既に開始している。総理とも協議を重ねて方針を考える」と述べ、完全停止も選択肢に含めた対応の見直しを示唆したという。

入国制限緩和の見直しに関しては、入国後の14日間の健康観察の扱いも焦点の一つだ。海外在住の日本人の帰国など、外国からの入国を完全に止めることは現時点では難しい。こうした中、先日、変異ウイルスの感染が拡大しているイギリスから帰国した男性が健康観察中にも関わらず会食し、同席した2人から変異ウイルスが検出された。これを受け、自民党内からは「現在の政府のやり方では水際では防げない」との指摘も出ている。

8日に行われた政府与野党連絡協議会で、政府側が14日間の隔離、移動制限、接触確認アプリの利用に法的根拠をもたせることについて検討していることも明らかになったが、14日間の自宅等の待機の実効性をどうやって高めるのかも喫緊の課題だ。

(フジテレビ政治部)

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