与野党で検討も…医師会発言に激怒
「本当に失礼な人だ」
自民党議員が怒りをあらわにした相手は、日本医師会の中川会長だ。
事の発端は6日午前。自民党の森山国対委員長と立憲民主党の安住国対委員長が会談し、両者は緊急事態宣言下での国会議員の夜の会食についてルール作りを検討することで合意した。
その後、森山国対委員長が記者団に対し、緊急事態宣言の対象地域では「国会議員の会食は4人以下で午後8時まで」とするルールを設ける考えを示し、議員運営委員会で協議する方針を示した。

ところが、その数時間後に事態は一変する。同日午後、日本医師会の中川会長が記者会見で、緊急事態宣言下での全国会議員の夜の会食を人数に関わらず全面自粛するように提案。「国会議員に範を示して欲しい。まず『隗より始めよ』です」と、国会議員が率先して模範を示すべきだと述べた。

国会議員の会食ルール作成の提案直後の発言だっただけに永田町には困惑が広がった。自民党の下村政調会長は会見で「私自身は自粛したいと思います」としたものの、与野党からは次のような異論が相次いだ。
「国会議員は常に色々な人から話を聞くのが仕事だ」(自民党議員)
「会食はどこまでが会食なのか。妻と二人で会食するのもダメなのか」(閣僚経験者)
「寺にこもって断食しないと」(野党幹部)
会食ルール作りの真意は?
そもそも、国会議員に会食のルールを定める必要があるのか。関係者は狙いを次のように説明する。
「菅総理大臣の“8人夜会合”が大きな批判を招いたことを念頭に、何かしらか対策ができないか。特に政治家が会食に呼ばれて、会食先に行ってみて初めて大人数がいることが分かった場合、対応に苦慮することになる。ならば、『4人以下8時まで』とルールをあらかじめ定めれて周知すれば、呼ぶ側も注意してくれるのではないか」

また政府の分科会による「5人以上だと感染リスクが高まる」との提言を受けて、「4人以下」と人数を設定したことで、中川会長が指摘するような模範を示す考えだったという。
ルール作りは一転見送りに
翌7日。衆議院の議院運営委員会理事会で「会食ルール」について議論が交わされた。この中で野党側から「自粛の申し合わせをすべき」との意見も出たが、高木委員長は「医師会の会長の発言を重く受け止め対応することに尽きる」として、ルール化を見送ることとなった。この「ルール化一転見送り」の背景には、中川会長の発言が世論に影響したことや「国会議員は自律するのが当然」との考えが強く働いたものと見られる。
結局、緊急事態宣言の対象地域での国会議員の会食は、各党で対応する形となった。自民党は8日付けで「飲食を伴う会合への参加を控える」とする二階幹事長名での通達を行った。

一方、参議院自民党は前日の7日付けで「飲食を伴う不要不急の会合は避け、やむを得ず実施する場合は『少人数・短時間で行う』『飛沫の拡散に注意する(一定の距離をとる会話の際にはマスクを着用する、フェイスシールド・アクリル板を活用する等)』」などとする通達文を出していた。また野党第一党の立憲民主党は、夜の会食を控えるよう所属議員に要請した。

一連の「会食ルール騒動」については国会議員の中からも「小学生じゃないんだから」「そもそも国会で議論することではない」と皮肉る声も上がっている。
(フジテレビ政治部)