冷泉さんと言えば、アメリカ大統領選のスペシャリストだが、「アイビーリーグの入り方」という著書もあり、教育事情にも大変詳しい。

<アメリカの大学は秋入学だが、受験シーズンはいつ開始?>

冷泉さんーー「9月入学なので、受験シーズンは入試要項が発表になる1年前の9月から始まります。募集は2回あり、1次募集は11月までに願書を出して年末に合否発表、2次募集は年末に願書を出して翌年3月末に合否発表されます。入学先を決めるのは5月1日が締切です。」

1次募集は専願制度で、受かったら必ず行きますと誓約書に書かされる。
一方、2次募集は何校でも出願できる。1校しか出願できない1次募集は、その分倍率が低いので合格しやすいと言われている。

アメリカは、ペーパーテストの一発勝負ではなく、履歴書や内申書、統一テストなど総合的に書類審査

<アメリカの入試はどのように行われる?>

冷泉さんーー「日本のように特定の試験日があって、学校に行って試験を受けるようなことはありません。ほとんどが書類審査のみです。日本の大学入試のようにペーパーテストの一発勝負ではなく、大学側は履歴書や内申書、統一テストなど様々な要素を総合的に判断します。歴史あるアイビーリーグのような学校では面接もあります。アメリカの大学受験は、日本の就活に近いかもしれませんね。」 

入試で特に大事なのが高校時代の内申書

冷泉さんーー「高校の成績が重要です。良い成績を取っても、やさしい科目ばかりでは大学は評価しません。また、高校4年間(3年の場合もある)の成績すべてを大学側はチェックしますので、たとえば高学年になるにつれ成績が悪くなった学生は、『大学のレベルについていけなくなる』と判断されて落とされます。逆に成績が上がった学生は評価されますね。」

入学後に燃え尽きそうな学生は、入試の時点でふるいにかけられるシステムなのだ。 

スポーツ、ボランティア、アート、音楽活動も評価対象

さらに、スポーツ活動も評価対象だ。部活でのリーダーシップはもちろん、競技の実績や記録まで大学側はチェックする。

冷泉さんーー「日本だと高校3年で部活を引退しますが、アメリカでは受験シーズンでもバリバリとスポーツをやっているほうが評価されます。」

もちろんボランティア活動も評価対象とされているほか、アイビーリーグの名門、コロンビア大学やプリンストン大学では、アートや音楽活動も評価基準だ。

<なぜスポーツやアート、ボランティア活動を大学側は重視するの?>

冷泉さんーー「大学側は入学した学生にスポーツをさせようというのではありません。大学は宿題が多く、一日当たりの自習時間は8時間と言われています。なので、自己管理が出来ないと大学の勉強についていけません。高校時代に、勉強はもちろんスポーツ、アート、ボランティアなどをうまくやってきた学生でないと落ちこぼれるのです。」 

13歳くらいで自分の将来設計を意識

<アメリカはいつ頃から大学受験の準備を始めるの?>

 冷泉さんーー「だいたい中学2年生くらいで、自分がどこの大学で何をやりたいのか、モチベーションを確立します。日本のように高校2年生の秋くらいからバタバタ始めては、大学受験は無理ですね。」

つまり13歳くらいになると、アメリカの学生は自分の将来設計を意識するのだ。
日本に比べてアメリカの学生が大人びて見えるのは、こうしたことも背景にありそうだ

アイビーリーグの授業料は年間約500万円

アメリカの名門大学と言えば、ハーバードなどアイビーリーグ。
アイビーリーグの定員は、各校とも1500人程度、全部合わせても1万3000人程度。
アメリカは学生数が日本の3倍なので、アイビーリーグに入学するのは至難の業だ。

冷泉さんーー「成績が上位数パーセントで、かつスポーツではリーダーシップがあったとか、大学で行う研究の意識をすでに持っているとか、そうしたものがないと入学は難しいです。」

さらに入学を難しくしているのが、高額の授業料だと言われている。

冷泉さんーー「アイビーリーグだと授業料は1年で5万ドル(約500万円)、プラス寮費や生活費で、1年700万円コースとなります。ただし、リーマンショック後、経済的な理由で入学できない優秀な学生が増えたため、各大学は奨学金を充実させ、いまでは所得が1000万円以下の家庭は授業料を免除されています。」

大学の評価は、学生の卒業後の平均年収

一方、州立や市立の公立大学は、予算が限られているので、貧困層は授業料が免除されるものの、中間層は年間1万5000ドル(150万円)と負担が大きい。

去年の大統領選挙で、民主党のサンダース候補が公立大学の無償化を訴え、学生から支持を集めたのはこうした背景もあったのだ。 

アメリカでは大学の評価は、学生の卒業後の平均年収で決まる。授業料に対する年収比較、いわゆる「コスパ」の全米ランキングが公開される。そのため、奨学金制度には、授業料を免除してでも優秀な学生を取り込もうとする大学側の狙いが見え隠れする。 

<アメリカ留学を希望する日本の学生へのアドバイスは?>

冷泉さんーー「アメリカでは受験の際に内申書を重視しますが、日本の高校では英語で内申書を書く準備ができていません。文科省には学生のために、その仕組みをぜひ造ってほしいですね。また、入学した学生には英語にどっぷりつかってほしいです。いまはネットで日本とつながれますが、そこは我慢が必要です。また、アメリカで生活を始めた当初、日本人の誰もが経験しますが、アメリカは良くて日本はダメだとか、日本が最高でアメリカはダメだとか、日本とアメリカの間を気持ちが揺れ動くことがあります。日米両方ともいいところがあるというステージに、早くたどりついてくださいね。」 


冷泉さんの著書「アイビーリーグの入り方」(阪急コミュニケーションズ) 定価:本体2500円+税 絶賛発売中